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30話 保存は涼しく日光の当たらない場所で

 ガタン、ガタン! そんな音を建てながらンザカは3人を乗せて山を登っていく。まるでどれかのタイヤがパンクしているようなその動きにアツトは乗り物酔いしてしまった。


「うぅ……早速ダウンしそうかも」


「えぇーっ! アツトくんもうダメなの!?」


 ルクスはわざとらしくリアクションを取る。キミ、オレが乗り物酔いしやすいの知ってるでしょ、という顔でアツトはルクスを見つめる。

 外の風を浴びるようにぐったりと壁にもたれかかるアツトを心配して、ルワはポーチから飴玉を取り出す。


「アツトさん、もし良ければこれ。どうですか?」


「ん? これは飴か?」


「はい! 長老様が持たせてくれたんです。これを食べるととっても元気になる! 私達エルフに伝わる飴玉なんですよ〜」


「へぇ、すっごいな。いただきます」


 アツトは飴玉の封を開けて糖分を摂ろうと試みる。しかし、かなり袋の中身がベタベタとしているのか、なかなか開けられない。ならば反対側から開けてみようと試みるが、やっぱりベタベタして開けることができない。まるで、朝布団から出ることを拒む子供のようだ。


「くそっ、なんで開かないんだこれ、くそっ」


「えぇー、アツトくん……もしかして不器用? も、し、か、し、て、不器用〜?」


「うるっせぇ! 今頑張ってるよい!」


 アツトは高ぶる恥ずかしさを抑え、頑張って飴玉を取り出そうと頑張るが、何回やってもその攻撃は《《避けられて》》しまう。


「……いるよなぁ、こういうモンスター……」



〜※アツトの妄想シーンにお付き合いください〜

『いたぞー! こいつがレアモンスター、魔力キャンディーだ!』


『やっと見つけたわね! よし、アツトくん、ルワちゃん! 気を引き締めて!』


『おうっ!』

『はいっ!』


『ベッ、タベタアァァ!』


『うおおおおおお! 必殺、オープン・ザ・パッケージィィィ!』


『ベ、ベベベタァ!』


『何っ!? 避けられるぞ、何回攻撃しても!』


『それなら私の出番ね! ラブラブ・デスサイズゥゥ!』


『べ、ベベベベベベァァ!』


『す、素早い! これではまるで部屋に出るゴキブリ……いや、ドッチボールでクラスに1人はいる回避専門のヤツ!』


『え、え、ええ、ちょ、ちょっとルクスさん何で今こっちチラチラ見――』


『戦いに集中しなさい!』


『えっ……すみません……』


『タタッ、べべべべべべべべ……』


『あーっ! 逃げちゃいましたぁ……』


『もーアツトくんのせいじゃーん! 飴に苦労してどうするのー!』


〜〜〜〜〜

「……どうするのー!」


「ハハハ、ゴメンナサイゴメンナサイ、ツギハカツゴキブリィ〜……」


「ねぇ聞いてる? 飴に苦労してこの先どうするの!」


「んっ!? あっ、えぇっ、聞こえてた!?」


 妄想ワールドから抜け出したアツトの目の前には、何を一人で喋ってるのと言わんばかりのルクスとルワがいた。どうやら妄想を実況してしまっていたらしい。恥ずかしさのあまりアツトは尋常じゃないくらい手汗をかいている。

 そのせいで飴の袋はさらに開きにくくなってしまった。あいにくハサミなどの道具は持ち合わせていない。だが、今更諦めてもよけいに恥ずかしくなるだけだろう。アツトは発想を変え、袋を《《開ける》》のではなく《《破る》》ことにした。袋の中に詰まっている空気を一箇所に集めて封を破き、飴を取り出す作戦だ。


「うおおおおお! 出てこい、飴えええええ!」


 パアンッ! 袋に穴が開く。そして中からは紫色の飴が姿を表した。だが、ここで試合が終わったワケではない、飴が、まるで食べられたくないという意志でも持っているかのように、強く袋にへばりついているのだ。

 アツトは袋を少しずつ開いていき、それでも強くへばりつく飴に犬のようにガブリと噛み付いた。飴は表面が溶けており、かなり舌にもベトベトとへばりつく。


「うえぇ、何ヶ月か放置した飴みたいになってる……」


 気持ちがすっかり萎えてしまったアツトは、酔いのことなどすでに忘れていた。

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