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28話 気候のバイオリズム

「火山、と言っても別に対してあつ〜〜いワケではないんですね。上着持ってきすぎちゃいました」


 ルワが葉や毛皮のベストをバッグにしまい直していると、ようやく馬車は火山麓の駅へと到着した。

 3人も荷物をまとめて馬車を降りたところで運賃を支払うと、その目の前には巨大な山脈が待ち受けていた。

 《《ファンタジー世界》》の火山といっても、溶岩がそこらを流れていたり、ゴツゴツとした岩肌が広がっているということもなく、ある程度整備された道を木々が覆い茂っている。


「ここがパーカー山……まるで富士山みたいだ」


 アツトが《《現世》》での山のことを思い出していると、ルクスは興味ありげにその山のことを聞いてくる。


「ねぇねぇ、富士山ってもしかしてこっちに来る途中にあったとても大きな山?」


「うーん、あれは多分また違うやつかな? 富士山はもっともっと大きな山なんだ」


「へぇ〜! アツトくんの世界もファンタジーに溢れてるんだね!」


「えへへ、まぁね」


 仲良さげに3人は足を進める。小石を蹴り、枝を踏み、落ち葉を鳴らす。途中、斜面が急なところもあるが、3人は手を貸し合いながら少しずつ上へと登っていく。

 2合目に着いたところで休憩を入れることにした。城下町を出るときに買っておいたおにぎりを2つずつ食べると、アツトはその澄んだ空気で体の疲れをリフレッシュさせようとする。


「ふぁー、何だか大自然の中って感じだ。大昔の人達はこんな中で自由に暮らしていたのかねぇ」


「本当にそうですよね〜! まるで冬って感じですよね!」


「うんうん、この肌寒くて乾燥している感じも……ん? 冬?」


 アツトはルワの言葉でようやく気がついた。ルクスの住む街などとは明らかに気候が違うのだ。少し山を登っただけでこうも変わるのだろうか、アツトが疑問に思っているとそれに追い打ちをかけるように雪がパラパラとちらつき始めた。


「ヘックション! まだまだ下の方のはずなのに、何で雪が降ってるんだ……?」


「そ、それに! アツトくんとルワちゃん、あの木見て!」


「え……? 明らかにおかしいですよこれ! 葉がどんどんと枯れて落ちています!」


 夏緑樹林。木の中には、夏に青々とした葉を生やし、冬になるとそれを落とし裸になる木が存在する。アツト達の周りの木々は、まるで時を早回しにしたかのように葉が枯れ果てていったのだ。

 アツトは城下町でのことを思い出した。パキパキと凍りついていく運河。「火山のお陰で、運河の水は年中温かいはず」にも関わらずだ。そして、その火山は麓とは真逆の極寒の冬である。


「そういえば、あの宿の人。魔物のせいだとか言ってたよな」


「でも、それだと馬車が普通に運行しているのはなぜなんでしょうか? 兵隊さんも笑顔で送り出していましたし」


「それはボクのせいなんだよぉ……うぅ……」


「だ、誰だ!?」


 アツトが振り返ると、そこには火山のミニチュアのような小さな魔物が申し訳なさそうに立っていた。


「ボクの名はンザカ。ボク達は、この山とその周りの気候を管理しているんだ」


「それで、なんで運河が凍ったりこんなに寒くなってるの?」


「うん。ボク達はゴーレムの一種なんだけど、最近山の頂上で悪さをするヤツがいてうまく管理できてないんだ。最近の異変もそのせいさ」


「へぇ、悪さをするヤツ、ねぇ……」


 ンカザはアツトに近寄って懇願する。どうやらその悪いヤツを倒してほしいとのことだ。アツト達は少し考え、その首を縦に振った。


「いいですよ! 困ったときは、お互い様ですからね!」


「うん! 私達、とーっても強いんだから! その悪いヤツなんてイチコロよ、ねぇアツトくん!」


「あ、あぁ! 任せなさいっての!」




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