27話 人間、赤星レオヤ その2
「てやああああああああっ! アンタレス・ピアシング!」
「ぐおっ! 突然突き刺そうとしやがって!」
「今のは《《おとり》》さ! これで成敗! 覚悟しろおおおおおおおおお!」
「な、何いいいいいいいい!?」
レオヤは猛攻をスライムに浴びせる。その剣さばきはまさに達人。その残像を目で追うのがやっとであり、アツト達もそれに見惚れるばかりだ。
「すげぇ、こんな人が国を守ってるんだ」
「本当ですよね、絶対強いです」
「……できないかな」
「「え?」」
「仲間にできないかな、この兵隊さん」
「いや無理でしょ! だって兵隊だよ? 国を守る役目があるだろうし……」
ルクスはレオヤをパーティに入れられないか本気で悩みだした。確かに、この戦闘スキルにアツトと同じく怪異を憑依させて戦うことができるなど、かなりの戦力アップが期待できる。
だが、いくらなんでも国を守る兵隊。急にスカウトしてもついてきてくれる可能性は低いだろう。
こそこそと3人が話していることを気にも留めず、レオヤはスライムに猛攻を浴びせ続けている。そしてスライムの動きがかなり鈍くなったところでとどめに思いっきり剣で切りつけると、スライムは黒い煙と共に消滅していった。
それを見届けると、駅の利用客に向かって笑顔で、
「さぁ、これで安心! 馬車の旅をぜひお楽しみください!」
と語りかけ、兜をかぶってまたどこかへと走り去って行ってしまった。
「よし、やっと火山に行けるね!」
「ああ、やっとだな」
この2日間、馬車に乗ろうとするだけでも様々なハプニングがあった。ゴブリンが馬車をハイジャックしようとするし、今日も駅でスライムが暴れていた。
でも、これでようやく火山に向かうことができる。新たな仲間を求めて、物語が再スタートした。
「それでは快速・パーカー山行き、ただいま出発致します」
「おおっ、結構快適ですね! 景色もいい感じ!」
「ホントだ! すごい!」
窓に映る景色はまさにファンタジーの世界でよくある王国そのものだ。商人達がそれぞれの店でいろんな商品を売っているし、所々に木や花がきれいに植えられている。子ども達が遊び、老人達が街の景色を眺めながらくつろいでいる。そして、窓の隙間からは涼しい風がアツト達の髪をなびかせる。
「……ここ、いい街だな」
アツトがなんとなく呟くと、ルクスは肩を寄せて食い気味にアツトに近寄って話しかける。
「それじゃあさ、魔王とか倒しちゃった日には一緒に暮らしちゃう? 私、一人暮らし結構心細くてさ〜」
「えぇっ!?」
「私の結婚」
「えぇ〜つれないなぁアツトくん」
「ウフフ、ホントに仲良しなんですね、2人とも! カップルみたいです」
「いやっ、今のは別に冗談だし!」
「そっ、そうだよね、そう!」
ルワの言葉に焦るルクスと、恥ずかしさで赤くなった顔をごまかすように服で体を扇いで水を飲むアツト。お互いに友情と信頼関係は作られているが、恋愛対象としてお互いのことを見ているワケではなかったので、実際に意識してみると少し恥ずかしい。
そんな3人を乗せて馬車は街の門を超え、野原へと駆け出す。草原の香りが優しく鼻を包むと、アツトはどこか懐かしい気持ちになった。
「……似てるなぁ、この匂い。あの公園と……」
「ん? 幼馴染の話?」
「うん。本当に昔の話のはずなのに、なぜか鮮明に心に残ってるんだ」
「へー、それでその子なんて名前なの?」
ルクスは興味津々だ。
「...…チナツ。月本チナツちゃん。ちょっと強引なところがあるけど、人懐っこくて、正直今も同じ学校だったら告白してたかも」
「えー! 絶対可愛いですよそれ!」
「私もそんな風になれるように頑張るね、アツトくん!」
「ル、ルクスさんは今のままでいいよ! ルクスさんはルクスさんらしく、ね!」
「そんなこと言っちゃってー! ホントは私とチナツちゃんのこと、心のどこかで重ねちゃってるんじゃない?」
「や、やめてよ! 恥ずかしいじゃん……」
アツトの顔がまたまた赤く染まり、まるで絵に書いた太陽のように
ぽおおおっと火照っている。草原を彩る緑とは、対照的だ。
馬車はどんどん火山へと向かっていく。色々な思いを乗せながら。




