22話 電車も馬車も遅延アリ
ルクスが住む街、チェックシャツ市。
チェック模様のように色々な色が、様々なところで交差する。この街でも、多種多様な種族が暮らしており、互いの文化などを楽しんでいる。
この街の住人は皆寛容だ。美しい種族、かっこいい種族、醜い種族……大人しい種族から気性の荒めな種族まで、互いのことを認めて助け合って生活している。
しかも、それでいて活気づいており、毎日何らかの祭りや集会などが開かれている。まぁ、そのせいで不良などが現れたりすることもあるのだが。しかし、何よりアツトが不満に感じていることがある。それは……
「この道! 足痛くなるんだけど! 何これ、コンクリート打ちっぱなしの床みたい!」
「もー、だから飛べばいいじゃん。スーツ結構お手頃価格なんだよ」
「使い方分かんないって! オレ、小4まで自転車コマありだったんだよ! 修学旅行で行った遊園地のカートレーシングだって壁にぶつかりまくったせいでその日からのあだ名ビリヤード!」
「ハハハハッ! 何それ面白いんだけど!」
「面白くねぇ! 足痛てぇ! だからおんぶして!」
アツトはダダをこねる子どものようだ。顔を見合わせたルクスとルワは同時にうなずき、それぞれアツトの片腕を持ち上げた。
「しょうがないなぁ、落ちたらダメだからね」
「仕方ないですね、しっかり掴まれていてください」
ルクスとルワはふわっと浮き上がる。そして空中でうつ伏せのような姿勢を取ると、少しずつ前へ飛び始めた。
「おおっ、いいねこれ。涼しいしアトラクションみたい」
「アツトくん、ここからが本番だよ」
「えっ?」
ルクスとルワは再び顔を見合わせ、ニヤリと笑うと息を吸って叫んだ。
「ハアアアッ!」
「ヤアアアア!」
「う、うおおおおおおおおおお!」
猛スピードで、目的地へとぶっ飛ばしていった。3kmの道のりをアクセル全開、ひとっ飛びだ。
「「せーの、到着〜!」」
「ぐああ、ありがとう……」
目的地へはほんの3分程で到着した。地に降り立ったアツトがその景色を見渡すと、西洋風の街並みをあちらこちら歩く住人、そしてなんと言っても一番はあの大きな城。
「ほ、本当にこんなところがあったんだ……」
「アツトくん、驚いてるみたいだね! ここのマップはもう貰ってるからさ、馬車を探しに行くよ!」
「ここは広いですからねー。迷子になっちゃいこませんよ! 私もここ初めてですけど!」
「え、あ、うん!」
アツト、ルクス、ルワの3人は元気に馬車を探し歩き始めた。
この世界では、馬車が電車や新幹線の代わりを担っている。と言うより、電車などはまだ発明されていないのだ。
異世界に来たならば、転生者が元の世界の技術を持ってきて無双する! がよくある展開ではあるが、あいにくアツトは一般敵な大人しめ高校生、しかも勉強得意な方でもないので、そんなことは夢物語だ。
だから、地道に頑張るしかない。しかし……
「うーん、このマップによるとこのあたりに馬車が止まっているはずなんだけど……」
「見えない、ですね……何かあったんでしょうか」
「うーん、天気も良さそうだし、事故ってるところも道中で見てないしなぁ……近くの人に聞いてみよう」
アツトとルクスが近くに立っていた人に話を聞こうとすると、「わかりません」とジェスチャーを取られた。他の人に聞こうとしたが同じ、そして最後に他の人に聞いたが全く同じだ。
「うーん、皆困ってる様子だなぁこれ。今日は諦めた方がい――」
「待って! アツトくんにルワちゃん! アレ見て、アレ!」
突然ルクスが指差した先には、5人ほどの兵隊が急いで駆けていく様子が伺える。
「ん? まさか何かあったのか?」
「そうかも! ちょっと後をつけてみよ!」
「ええ、それはまずいよ……って、わあああ!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいー!」
ルクスはアツトの手を引っ張って行ってしまった




