17話 這い寄る陰謀
「それじゃあ長老さん、オレ達はもう行きま――」
「アツトくん! エルフを紹介してもらうためにここに来たんでしょ!」
ルクスはアツトの腕を鷲掴みにしながら引き止めた。痛い痛いと眉間にしわを寄せるアツトを横目に、ルクスはルワに頭を下げた。一緒に旅をして、この荒れた世界を共に直したい、と。
長老はルワに微笑み、ルクスのお願いを後押しする。ルワは5秒ほど考える素振りを見せたが、それが終わるとニコッと微笑んでルクスの肩に手を乗せた。
「はいっ、ぜひお願いします!」
長老も認めた実力者のルワ。心強い仲間の正式加入にルクスの心が踊った。
「やった! これでこのチームも強くなったね、アツトくん!」
「そ、そうだね……痛てて」
「もぉ、いつまで痛い痛いって言ってるの! ルワちゃん、早速回復してあげて」
「えぇ、雑用みたいじゃないですかぁ」
森の中に、晴れやかな笑い声が響き渡った。それからしばらく談笑した後、3人は長老とエルフ達に挨拶を済ませると、なぜか木の茂る森の奥に向かって歩き出した。ルクス曰く、一度作戦会議をするのだという。ルクスの家ではダメなのかとアツトが尋ねると、ルクスは首を横に振って小さな声で話し始めた。
「……あのね、遠くからだけど。私達さっきから追われてる」
えぇっ、と驚くアツトとルワ。楽しかった雰囲気は何処へかと消え去り、一気に重苦しい緊張感が3人を襲う。
「でも、長老様にも何かを警戒する様子は見られませんでしたし……それに誰もいませんよ、ほら!」
ルワは後ろを振り返って指差す。その通り、誰かが迫ってきている様子は見られない。
「……とにかく、今は隠れるよ。ステルス魔法を今から使うから、そしたら飛んで移動するから私に捕まってね、ヒガンバ、からのサンカウ!」
ルクスが宣言した瞬間から、みるみる3人の体は透明になり、まるで空気のように見えなくなってしまった。それを確認するとルクスは急いで2人を抱っこすると、飛び上がって街の方へと飛んでいった。
空には人間を1人、エルフを1人抱きながら飛ぶサキュバスという構図がある。しかし、未だ透明なので誰にも気付かれていない。だんだんと市街地が目に入ってきた中、アツトはルクスに再び尋ねた。
「……ねぇ、ルクスさん」
「何? どうしたの」
「追われてるって、何のこと?」
「……誰が追ってきてる、までは分からない。だけど、確実にヤバいって本能が教えてくれた」
ルクスは淡々と返答する。それはいつもの元気な口調からは想像もできないほど単調なもので、悪気はないもののその切羽詰まった深刻な顔にアツトは何も返事ができなかった。ただただ、これからは常に覚悟を忘れずに旅をしなければならない、そうアツトも瞬時に悟った。
ようやくルクス達は家に着いた。少しの物音も立てたくないのか、ルクスはまるで忍者のようにふわっと地面に降り立った。
そしてゆっくり、ゆっくりと鍵を開けてドアを開け、早く入ってと2人に催促した。アツトとルワも急いで家に入るのを確認すると、さっとドアを閉めて鍵をかけた。
3人は手洗いを済ますと、居間に腰掛けた途端ルクスは深刻そうな顔をして話し始める。
「……既にバレてる、私達の作戦が!」
「さ、作戦!? どういうこと!?」
アツトが思わず聞き返すと、ルクスは必死に声を絞り出した。
「……この世界は、私が思っていた以上に魔の手が忍び寄ってた。あのゴブリンも、オークも、派手に倒したことがバレてる、あいつらに!」
不穏。最悪の空気が部屋中に流れる。そんな時だった。激しくドアから爆音がドンドンドン! と響いたのは……




