15話 元気いっぱい
(アツトさん、このままでは自ら致命傷を負ってしまいます……でもこの状況、私がのこのこと出てきてロツメクを詠唱するのも違う気がします)
「ねぇアツトくん……優しい人なのはすごく分かるけどさ、何というか……無理しないでよ、ね!」
「こ、こっちも悪かった! ちょっと傷入っただけで怒ったのが悪かったんや! やからもう止めや、かなりしんどそうやで!」
「いや、これはオレが……グフッ」
アツトは2人の制止を振り切り、さらにロツメクで植物の治癒を続けようとしている。誰がどう見てももはやアツトはかなりダメージを負っており、真っ直ぐに立つことすらままならず、小鹿のように膝がプルプルと震えている。
(も、もう私がやるしかありません! でも、バレないようにしなきゃ……体力回復魔法のモギと一緒にロツメクをタイミングを合わせて……)
「こ、これでマジで決める! ロツメ、ク……」
(今です! モギ、そしてロツメク!)
柔らかな光が植物、そしてアツトを包み込んだ。アツトはまるでハーブティーの香りのように心の奥からリラックスしていくような感覚になり、鼻血も止まり元気が溢れ出した。
「ん、なぜオレまで光ってるんだ? まさか成功?」
「んん? おお、根と花々が治っていくで!」
ルクスが意図せず傷つけてしまった周りの植物があっという間に元気を取り戻した。それを確認すると木はアツト達にお礼を言った。
「旅人さん達、ありがとうな! おかげで皆元気になったみたいや」
「いえいえ……すみませんでした、踏んづけたりしてしまって」
「いやいや、ワシこそすまんかったわ……これはお詫びの粗品や」
木は腰をふるようにゆさゆさと自らの幹を揺らすと上から1つ、ルクスの手元にキラキラと輝く木の実を落としてきた。
「これはワシらの仲間の果実や! 食べるとたちまち、あらゆる病気が治るって評判や! もちろん普段に食べても栄養満点かつ美味しいデザートにもなるわ」
「わ、わざわざありがとうございます……お土産まで頂いてしまって」
「ええんや、ええんや。ほな気をつけてな~」
木は目を閉じたかと思うと、周りの普通の木々に紛れるように少しも動かなくなってしまった。
それを見届けるとアツト、ルクス、ルワの3人はゆっくりと足を進め始めた。ルワのお陰で完全に傷が治ったアツトはかなり張り切っている。それを見てルクスとルワはコソコソ話を始めた。
「よしよし、エギライトお披露目までもう少しだぁ〜」
「……ねぇ、さっきの回復魔法ってもしかしてアツトくんがやったの?」
「……まぁ、そうですね」
「本当? 何かルワさんの方から光が出ていたような」
「ええぇっとあれは! たまたまですよたまたま、本当にアツトさんのおかげで花も元気になったんです」
「フフフ、そっか」
ルクスはアツトの背中を見て微笑んだ。




