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11話 猪突猛進

「うぅ、眩しかった……って! 2人もそれをやって大丈夫なんですか!?」


 ルワはアツトにルクスが憑依したことに驚いた。まさに今目の前に立っているオーク男もそうだが、人間に怪異が憑依すると闘争本能が活発化、また飛躍的に強化された身体能力を制御できず暴れ回るだけになることが多いからだ。

 しかしアツトとルクスのペアは例外で、服装や体の動きを確かめると得意げな顔でたたずんでいる。「目の前でレアケースが起こっていること」「これなら相手を倒せる」という興味と自信が重なり、ルワは硬くなっていた表情を元通りにし、オーク男に高々に宣言した。


「……さて、アツトさんとルクスさん! 早いこと、やっちゃいましょう!」


「ああ、当然すぐに片付ける!」


《アツトくん、今回もちゃんと戦うのよ!》


「あったりめぇよ、あの力をもう一度使えるなんてウズウズする」


 取り憑いたルクスと話しながら軽くストレッチをしているアツトを見てオーク男は笑い始めた。


「オイ、オマエ! マサカ、サキュバスヲパートナーニシタノカ?」


《……アツトくん、無視よ、無視!》


「ワザワザ早死ニスル決断ヲスルナンテ、ヨッポド死ニテェラシイナ。ナラ楽ニシテヤロウ」


「うるせぇこのブタ野郎! お前みたいに理性を失った野郎にオレのことをぐちゃぐちゃ言われる筋合いはない!」


「ブタ? 今ブタト言ッタナ?」


 オーク男はわなわなと震え始めた。次第にその鼻息も荒くなり、固く握った拳を持ち上げ、大きく息を吸ってアツトに叫び始めた。


「ソコニイルエルフトノ因縁ト共ニ! オマエヲブチノメシテヤラアアアア!」


 オーク男は勢いをつけて突進してくる。歪に曲がった牙をこちらに向けて、ただ真っ直ぐ向かってくる。

 速い。まるで道路の横断中に猛スピードで大型トラックが向かってくるかのような恐怖を感じる。その突進により洞窟内に突風が巻き起こり、ルワはその風圧を腕を組んで身を守ることしかできない。

 アツトも一瞬怖気づいてしまったが、すぐに正気に戻り膝を曲げて高く跳躍し、突進を間一髪回避した。オーク男もあわてて減速しようとするが、勢い余って壁に牙ごと突き刺さってしまった。それを壁に手をついて引っこ抜いたオーク男はすぐさま振り返ると、再びアツトに向かって叫びながら突進してきた。


「潰ス、潰ス潰スウウウウ! ミンチミタイニ、グチャグチャニ!」


 オーク男を再びジャンプして避けたアツトは一旦距離を取ると、間も置かず再びオーク男は突進してくる。何度も何度も突進してくる敵にイライラしつつも、アツトはその攻撃を避けながら倒し方を考え始めた。


(動きは単調だが、一回でも攻撃を喰らえばマズいことになる! とうするべきか……)


 なかなか答えが出ないアツトを見かねてか、ルクスはテレパシーで指示を送ってきた。


《アツトくん、まずは避けて避けて、アイツのスタミナが切れたところでヒガンバを繰り出すのよ!》


「避けるて言っても……こいつ、なかなか止まらねぇ! っておっと危ない! スタミナが無限にあるのかこいつは、ってうわぁ!」


《ちょっと何転んでるの、ほらまた来てるから避けて!》


「分かってるって、いい加減止まれよこのブタ野郎!」


 アツトは転がりながら一旦突進攻撃を避けたが、またまたオーク男は突進を始める。しかしアツトもただ避けるだけでは気がすまず、ついに右手をオーク男に向かって突き出し、大声で叫んだ。


「一気に決めるぞ、ヒガンバだあああああ!」


 至極色のボールが浮かび上がったかと思いきや、すぐさまオーク男に迎え撃とうと飛び出した。オーク男の表情が一瞬固まる。


「ン? ソノ技ハマサカ……マサカ、コイツ!」


 オーク男は慌てて急ブレーキをかけてそのまま転倒し、ボールを避けた。そのままふわふわとオーク男の体を通り過ぎて浮遊するボールはやがて地面の岩に命中し、それをどこかへと消滅させてしまった。


「ほええ、我ながら恐ろしい技だ」


 アツトは自分の技に驚いた。戦闘をただ見守るだけのルワも恐ろしいものを見る目でその状況を見ている。実際恐ろしい技なのだが……

 オーク男も膝をかばいながらゆっくりと立ち上がると、不敵に笑いながら話し始めた。


「ソノ技ハ……限ラレシ種族ガ使エル闇ノ魔法。当タッタモノヲドコカヘト転送スル恐怖ノナ」


「そ、それが何だよ」


「ダガ、ソノ代償ハドコカデ払ウコトニナル、サキュバスト契約シタオ前ハ尚更ナ」


「だ、代償?」


《気にしないでアツトくん! デタラメだし、ただの都市伝説だから!》


「マア、サキュバスナンカト契約スル馬鹿ナラ理解デキマイ」


「……何だてめぇ」


 アツトの中で、怒りがふつふつと湧き始めた。自分を馬鹿だと言われたからではなく、自分の存在意義を認めてくれた、自分と別け隔てなく関わってくれるルクスを、“サキュバスなんかと”と馬鹿にされたのが何より許せなかったのだ。


「ルクスさんは……確かにワガママかもしれないけど、逆に言えば正直に接してくれて、オレのことを思ってちゃんと叱ってくれて! そんな仲間を馬鹿にするなら、オレは絶対に許さねぇ」


 アツトは息を荒ぶらせつつも、再び右手をオーク男に突き出した。


「ホウ、マサカ自ラ破滅シヨウトスルナンテナ」


 なぜかオーク男は避けたり逃げたりする素振りを見せず、ただ仁王立ちするだけだ。


「くたばれ、消えろ」


 至極色の大きなボールがゆっくりとオーク男に発射された。


 


 


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