10話 因縁との邂逅
「うわぁ、ジメジメしてて気持ち悪い……オレ、こういうところ苦手なんだよなぁ」
「暗いとかジメジメしてるとか文句言わないの! ほら早く石見つけないと、敵だって勘違いされてドラゴンに襲われちゃうよ」
「ひぇえ、あのゴブリンとかより絶対強いよ……」
「ウフフ、2人とも仲いいんですね」
3人は話をしながら洞窟の奥へと足を運ぶ。中は魔力を宿したランプのお陰で意外と明るい。また古来よりオーク達が頻繁に出入りをしていたからか、簡易的ではあるが階段などもしっかりと整備されており、街で買った簡易的な装備でも難なく奥へと進められている。
ある程度進んだところには小さな広場があった。学校にある階段の踊り場3つ分ほどの大きさだろうか、一旦3人はそこで休憩を取ることにした。
「よいしょっと……疲れちゃったよオレ、小腹も空いたし」
「それなら私のご飯、食べますか? 人間さんの口に合うかは分かりませんが、私達エルフ族の伝統的な料理です」
「へぇ、結構自炊とかするんだ……って何だこれ!?」
アツトの目の前に現れたのは干し肉……のようなビジュアルをした葉っぱだ。よく見ると網目状に葉脈が広がっており、どこか緑っぽい色をしている。
見たこともない食べ物に思わず驚いたアツトは思わずルワに聞き返してしまった。
「あの、何ですかこれ? 肉なのか、野菜なのか……」
「あぁ、それは私達の森に生えてる木の葉っぱ、ホシニグサです。肉を乾燥させたもののような味がして、ビタミンやタンパク質、あと食物繊維が豊富なんです。味も様々ですよ」
「へぇ、面白いじゃん。いただきま……っず! なにこれまずい、オエエエ!」
「アツトくん汚いよ! オッサンみたいに嗚咽しないで!」
「あ、この葉っぱ! よく見たら大ハズレのビーサン味ですよ! ビーチサンダルみたいな味がするって私達の間でも罰ゲームに使われるヤバいやつです!」
「そ、そんなもの持ってこないでよ……グハッ」
「ア、アツトくん気絶しないで!」
「アツトさん大丈夫ですか!? ごめんなさい、私がしっかりしてたら……」
あまりのまずさにアツトは気絶してしまった。それを見たルクスとルワは慌ててアツトを介抱し、それから10分が経過するとようやくアツトは目覚めた。
「ん、うぅ……ここはどこ……?」
「お、アツトくん目覚めた! 良かったぁ……」
「ぶ、無事で良かったです……」
アツトはリュックの枕と服のブランケットを取り除いて起き上がると、大きなあくびをして軽くストレッチを行なった。
「2人ともごめんね、倒れちゃった……それじゃ、また進み出しますかぁ」
「びっくりしたよ、急に気絶しちゃうんだから……無事で良かった」
「すみません、私こそ……それじゃ行きましょう、私についてきてください」
3人はまた歩き出した。トコ、トコと言う音が反響して聞こえる。淡々と足を進めていると、洞窟を照らす青色の炎が一斉に赤色に変わった。アツトとルクスが動揺する中、ルワが深刻そうな顔で警戒している。
「ランプの炎が変わった時。それは敵意を向けている者が近くにいる合図です」
「て、敵意!? それって魔物がいるってことか?」
「魔物とは限りません、もしかした――」
その瞬間だった。遠くから、ズシン、ズシンと一歩一歩何者かが確実にこちらに向かってくる足音が響き渡った。どんどんその足音は大きくなり、やがてランプのお陰で明るい洞窟に大きな人影が浮かび上がった。
「こ、これがオーク族です……! しかもその中でもかなりのやつです!」
「ホウ……マサカ、本当二来ルナンテナ。エルフヨ」
「ル、ルクスさん! この喋り方、あのゴブリンと同じ!」
「えぇ。人間にオーク族が憑依しているんだわ。きっと相性が良くない組み合わせだったんでしょうね、知能が低下しているように見える」
見たところ、確かにこのオークは鼻息を荒立たせて周りを意味もなくチラチラと見回しており、全然落ち着かない様子だ。ゴブリン男が街で暴れていたのも同じ現象だったのだろう。
「憑依って……それじゃ私達には敵いっこありません! 逃げましょう、今すぐ!」
「いいえルワちゃん。私達も同じこと、できるんだよ。そうだよね、アツトくん」
「あ、ああ。またまた、やっちゃいますか!」
洞窟内は、眩い光で慎まれた。ランプの明かりをかき消して……




