9話 洞窟
「それじゃあルクスちゃん、アツトくん、ルワ。気をつけて行ってくるのじゃぞ」
「は〜い! 長老様、行ってきまぁーす」
「そ、それでは! 石ぶんどって来ます!」
「あっ、それでは行ってきます……」
3人は森を出て、エギライトを取るために洞窟へと向かった。相変わらずの天気と心地よい風が当たりを包む中、ルワは洞窟について説明し始めた。
「目的の洞窟の名前はエギ洞窟。それは魔力を秘めた石で、大昔の話ですがエルフ達はその石をオーク達に取ってきてもらうことで清い泉を保ってきました」
「今は違うんですか?」
「はい。今はオーク属とあまり仲がよろしくないんです。なぜなら……」
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『エルフの皆さ〜ん! エギライト、またまた取ってきましたよ〜!』
『お〜、いつもありがとね〜! はいこれ、お礼の木の実』
『へへへ、まいどあり〜!』
古来。およそ1500年前のことだ。エルフ族とオーク族という2つの種族は共存関係にあった。非力なエルフ達はその森の維持のためにエギライトを、魔力や知能があまり高くないオーク達は栽培技術など持ち合わせておらず、食料として木の実をお互いに提供しあっていた。
お互いの文明はどんどん発展していき、正式に同盟を結んだ両者の間には深い信頼関係が作られていた。
しかしある日、その信頼は崩れることとなった。オーク族の見た目をみすぼらしい、汚らわしいと考える1人のエルフがいた。また逆に、非力なエルフ族を情けないと考える1人のオークがいた。2人はこなりの実力者で、それぞれ相手の村、街、集落を次々と攻撃し始めた。公共施設も、民間人もお構いなしに。
その2人に賛同する者も増え始めた。やがてお互いの破壊活動は過激になり、進みゆく文明の破壊から同盟関係を切れという世論も強くなった。
そしてそれから3年後。破壊活動は戦争へと発展した。1人でも多く敵を倒す、そんな意識が両者の中にあった。昨日は敵と戦い、今日はその首を持ち帰り、そして明日は自分が死ぬ……そんなことは日常茶飯事となった。
その戦争は10年続いた。お互いの文明はもはやその面影をところどころに残すだけとなり、その生き残りの中の有志が戦争終了を宣言することで戦いは終わった。
あの森の中に住まうエルフはその末裔だという。今でもエルフ族とオーク族の関係は修復されておらず、自力で何とか生活を続けているという。
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「……ということがあったと、長老様はおっしゃっておりました」
「それで洞窟にわざわざ行くことになったのね……」
「きれいな泉の維持のために、そんなに大変なことをしてるのか……」
「はい。力がないので正直しんどいです、なので大塚さんお願いしますね」
「お、大塚じゃなくて陽川じゃい!」
「ハハハハ、やっぱりアツトくん面白い! きっと相性いいよ、その2人」
「ル、ルクスさん……」
「……じゃあルワちゃん。道、分かんないから先頭に立って案内してよ」
「りょ、了解です!」
ルワは先頭に立って歩き、ルクスとアツトはその後ろから追いかける形の陣形を取った。ルワがスムーズに洞窟に向かって歩く中、ルクスはアツトの横にピチッとくっついている。そして、ルクスはボソッとアツトの耳元で囁いた。
「……私より相性良かったら、絶対許さないからね」
「あぁ、絶対ルクスさんがベストだよ、オレにとって」
少し頬を膨らませて俯いているルクスの肩を持ちながら、アツトはそう返した。ルクスの顔が、どこか柔らいだ気がした。
10分ほど経っただろうか、ようやく洞窟に到着した。中からはコウモリらしき鳴き声が響いており、とても不気味な入口が3人を待ち構えている。
「この洞窟です。中には魔物も住んでますが、こちらから敵対意識を見えなければ特に問題はないです」
「魔物ってどんなやつなの?」
「まぁ……スライ厶とか生まれたてのドラゴンとかですね」
「ド、ドラゴン!? 勝てる気しないや……」
「アツトくんしっかりして! 私とのコンビなら絶対勝てるから、ほら行こ!」
「オレこういう暗くて狭いとこ苦手なんだよ……」
3人は洞窟へと足を踏み入れ、中を進みだした。




