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天空の光

作者: 石田 幸

未だ色褪せない貴女へ。

 年が明けて小寒い曇り空の日が続いていた。

 

 ベランダのシャッターを勢いよく押し上げて、窓の外に出、思い切り深呼吸するのが私のいつもの朝だ。

 その日によって様相が変わるのは当たり前とは言うものの、不思議な心持ちがする。

 鼻の奥がツンとするほど澄み切った青空の朝もあれば、湿った雨の匂いを含んだ曇り空の日もある。

 ここ数日は生憎あいにくの曇天続き。頭を抑えつけられるような重い空に気が滅入っていた。


 がらがらがら。

 大きな音を立ててシャッターを上げると、今朝はふいに、眩しい光が飛び込んできて、思わず目をすがめた。

 窓を開けてベランダに出ると抜けるような青空。

「あ。」

 声が洩れたのはそのせいだけではなかった。

 澄み渡った天空にうっすらとたなびく白い雲の隙間から、まるで後光のように放射状に地上に向かって光が射している。

 その光景はまるで天空へと続く階段のように見える。


 その刹那、私の胸に去来したのは、懐かしいあの女性ひとの笑顔だった。

 私は静かに目を閉じた。

 現在いまも色褪せない優しい笑みが眼裏まなうらに浮かぶ。


 あの日散った幾多の生命。


 熱い目頭を押さえて振り返ると、壁にかかった日めくりの「17」という日にちが開いた目に滲んで映った。


 窓からはせんに見た光が溢れてきらきらと射し込んでいる。


 光に満ちた静謐な朝の中で、私は静かにこうべを垂れた。

長らく休筆していました。

けれど、毎年この日だけは貴女への気もちが溢れて書かずにいられませんでした。

未だ色褪せない貴女の優しい笑みを想いながら、この日散った幾多の生命の安らかであらんことを祈って。合掌。石田 幸

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― 新着の感想 ―
[一言] そうか、あの日のことのお話なのですね。合掌。
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