夕焼けの国
オレンジ色の光が斜めに差して、まどろんでいた春子を照らした。
「朝?じゃなくて夕方!」
今日一日忙しくて、帰るなりソファで横になって眠ってしまったのだ。ソファは北側の部屋の窓際にあって、光は左から差している。
「お願い、太陽よ、もうしばらく時間をください。私は今日は雑事に追われて、自分の時間が持てなかった」
こんな毎日がこの先一生続くのならば、どうすればいいのだろう?
途方に暮れて夕日の光の中にとっぷり浸かりこむ。
はちみつのようにねっとりとまとわりつく光の粒子。
「みんな、他の人もそうなのかしら?それじゃあんまりな人生だよう」
春子は涙を流した。
思い切って、生活を変えてみようか?
いくつか無理をしてかけもちしていることを辞めてしまおうか?
またやりたくなったら戻ればいいんだし。
いっぱいいっぱいになってるよりはきっと精神的にも余裕が出るだろう。
日が沈む。
少しずつ暗闇の国がやってくる。
ありがとう、太陽。明日も変わらず続く日々を保証して、地球の裏側へと移動してゆく。
明日は、今日より良い日にしよう。