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 レーヴェン王国第三王女レティツィアは、七歳の時突然雷に打たれ、背中に傷を受けた。

 それは自然界の雷ではなく、呪いによるものだった。

 高熱で生死をさまようこと一週間、何とか命を取り留めることはできたが、背中の傷は消えることはなかった。

 その傷跡から、「呪い」が発せられたのは一年後。

 傷に沿うように黒い鱗が生え、それは少しづつ広がっていった。


 父王は、レティツィアが十歳の時に国の有力なアドラー公爵の次男アルベルトとの婚約を結んだ。

 しかし、呪いを気にしないレティツィアは、いつものように髪をアップにしていた。

 レティツィアの首に鱗を見たとたん、アルベルトは

「うわあああっ!」

と悲鳴を上げ、父の背後に逃げ出した。

 黒色に光る鱗は黒蛇を連想させた。この国では、黒蛇は不吉なものとされており、それが自分の妻になるかも知れない者の背中にあることは、まるで黒蛇が自分の元へと近寄ってくるような錯覚を覚えさせたのだった。

 もちろん、婚約は取り消され、公爵は王女の秘密を守る約束をしたが、小心者のアルベルトが侍従やメイドに漏らした弱音から瞬く間に噂は広まった。

 黒蛇王女。それがレティツィアの密かなあだ名になった。


 王の命により、レティツィアは部屋を出る際は常にハイネックで、長袖、手袋の着用を義務づけられた。ゆったりとした服を好んでいたレティツィアにとって、風でもめくれることのない、ゆとりのない袖の服は窮屈で、やがて外に出ることを嫌がるようになった。


 レティツィアには二人の母がいたが、共に自分の実の母ではなく、どちらも特に世話を焼くことはなかった。子供達も母が違うからと言って特に仲も良くなく、悪くなく、それなりの関係を築いていた。

 と言うのも、王家を継ぐ男子は第一王妃の生んだ王子三人のみだったので、王子間で競おうとも、家による争いにはならなかったからだ。

 王女をどこに嫁がせ、国益とするかは、王の采配によるところが大きかった。

 第一王妃の娘である第一王女、第三王妃の娘である第二王女は既に降嫁していた。

 母のいない第三王女レティツィアと、第三王妃の娘で三ヶ月違いで同い年の妹ルチルダ、三歳年下のフィリーネの三名のうち、レティツィアだけが黒い噂の元、国内でのもらい手が見つからず、かといって背中に鱗を持つ娘を他国が引き受けてくれるとも思えず、王は苦慮していた。

 せめて第二王妃が生きていれば、何らかの手を打ったかも知れないが、第二王妃の実家も黒蛇王女と呼ばれるレティツィアと親戚であることを積極的に広めようとはせず、レティツィアの結婚問題は棚上げにされていた。


 幼い頃からレティツィアの護衛をしていたラースは、明るく活発だったレティツィアが、周りからの中傷により少しづつ笑顔を失っていくのが見るに忍びなかった

 時々こっそりと王領の森に出かけたり、王の許しを得て離宮で避暑と称して人目につかない自由な時間をもつことで、レティツィアは自分らしさを取り戻していった。

 このまま、結婚しないで済むなら、それでもいいのではないか。ふとそんなことを思った。

 レティツィアは、背中の黒い鱗が、自分を自由へと導いてくれるような、そんな夢を抱いた。


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