怪物
『やあ!兄弟!今日は随分と何かを決意してここに来たって顔だなぁ?
それはそうと、死は誰にでも訪れる人生のエンディング。そうは思わないか?
すれ違った知らない人、上司、家族、恋人。
みな平等に、いずれは死ぬのだ。
ゆえに、近い未来、100年後には今生きてる全員に死因がある。当たり前だ。
さて、ここから見渡せる人たちはどんな風に死ぬと思う?
駅前、公園。歩く人々はまるで死のパレードだ。
あの疲れた顔のサラリーマンは自殺だろうか。
あの家族は、子供がお父さんを巻き添いにして川で溺死するかもしれない。
あの可愛いお嬢ちゃんは悪い人に連れ去られて……。
ああ!今まさに犬に引っ張られた女性が轢死するかも!
そうとも。死は何者にも平等に、突然やって来る。
それなのに、目の前の人がどんな風に死ぬか。
もとい、どんなエンディングを迎えるかなんて考えたこと無かっただろう?
では、本題に移ろう。
ほら、鏡だ。映っているのはもちろん君自身さ。
さあ!君は!鏡に映る自分を見てどう死ぬと思う!
君が死ぬ時、隣にいるのは誰だ!
その人は泣いているか!それとも死にゆく君を嗤うか!
君の目に!君自身はどう映る!
安らかに!穏やかに!死ねると胸を張って言えるか!
考えたことがあったか!今まさに死ぬかもしれないのに!
おっとすまない。少しばかり熱くなりすぎてしまった。
まあともかく、先輩の僕から言わせてもらうと、君の考えは極めて幼稚だね。
想像してみろ。強い衝撃。痛い。苦しい。歪んだ身体。
這いつくばる僕の顔を蹴り上げて「次は失敗するなよ」と囁く怪物の声。
さあ、僕と一緒に考えようじゃないか。怪物にはどんなエンディングがお似合いか』
「ああ、そうだね。そうすることにしよう」
その方が面白そうだ。
俺は手に持っていた遺書を破り捨てた。




