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神殺しの魔法使い  作者: アルテミシア・プリンセプス
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現代魔法の英雄譚

天使に祝福あらば罪を払い、悪魔に願い事あらば、これを滅ぼさん。                                天使と悪魔を作りし神を断罪すべく、魔術は神に抗う剣なり。

                           ー魔術祖・アルテミシア=プリンセプス

プロローグ

むかし誰かが言った。ー天使は善を成し、悪魔は悪を成す、と。

彼がそんなことを思い出したのは、まず、彼は目の前の光景を見て、天使と悪魔の境界線など到底捕捉できようはずもなかったから。彼は旧約聖天書を紐解き、聖天書の使徒としての彼らを心得ている。されど、少年は、そんなものは紙の上の絵空事でしかないことを此の頃、極々痛感させられていた。

「ーくッー!」

殺意に身を焼かれて木立を逃げ惑う少年を、暗闇から生じた巨爪が薙ぎ払う。とっさに身をひるがえして両腕を固めて受けるが、流しきれない衝撃に体が浮きあがった。地面と足が離れた無防備な一瞬、追い打ちの爪撃が風を切って走り少年を八つ裂きにして手足が散り散りになる。

「ーぐはッー」

彼の鮮血は樹林を黒い炎に染めた。彼の地は赤い煉獄のカルマに焼かれるような深淵なる血の湖に沈む。この深い夜に明星の月明かりが、彼の闇をも喰らう瞳を照らし出した。

「ー手間かけさせんなよ。くひひひー」

「ーわれら、天使と悪魔は偉大なる王に創造された身、貴様のような偽りの亡者には死をー神に祝福あらんことをーエンゼルデビル」

二人の天使と悪魔は彼の亡骸を腐った蛆虫でも見るかのように一瞥して、暗黒の深部に去っていた。

薄れゆく意識の中、彼は自分の魂がこの暗い夜でももっとも底知れない闇を湛えた深淵に吞まれていくのを感じた。

 


第1章


入学式セレモニー

ー春の出会いは永遠の誓いの約束となる。ミストルテイン選抜学校では名の知れた、プリンシアの花言葉である。即今、ミストルテイン地区は、「咲かずの花」も見事なスペクトルを映し出す。湖の上に悠々と浮かぶこの城には、春になると咲かない花はない、と聞く。

カナン市街を出て西進し、さらに山をふたつ超えた場所ーそこから始まり校舎へと続く街道沿いはこの時期、日本が愛し春を愛する純潔の桜をはじめとして、赤い花と緑の花のコントラストが特徴の冬の花ポインセチアが生徒の心に火をつけるように満開に咲き、さらには秋に咲く金木犀から濃厚な甘美な香りが漂っている。1年に1度、満月の夜に咲く夜の嬢王「月下美人」もその優雅で上品な危険な快楽の香りを纏う

「あら、あなたー美麗で聡明そうな美男子ね、その美貌にはわたくしも心を奪われそうだわ、とはいえ、ごめんあそばせ、私の一族は百合の華ですわ、私の愛は百合花を紋章としたルイ王家に誓っているのよ」純粋無垢なホワイトフレグランスの白百合は純潔で高貴な花嫁衣裳のように可憐にその花を羽ばたかせている。さらに、冬の清廉潔白を詠うクリスマスローズも大気を凍らせる美しさである。

古代エスタティオンの時代、悪天大戦の中、怪我人を癒し狂人を正気に戻したされる奇跡の一凛。

クリスマスローズは、少女が悪魔に囲まれ命の祝福を摘もうとしたときに、その姿を見た天使が地面に触れると、その姿を現して彼女を救済し明日を守った、と旧約聖天書にはそう刻まれている。メサイアの加護に偽りの炎の刻印はない。

これから校門をくぐる新入生たちに未来への希望を抱かせるには、なるほどうってつけの光景にちがいない。しかし冷静に考えれば奇妙な光景でもある。華が花開く時には季節の鎖が付き纏う。温度、湿度、風向き、分子レベルの条件軌道が成立し、エネルギー安定性を核とした時が満ち、神の祝福を享受する行程が必須である。されど、この街道には季節の鎖など台風のごとく乱舞して、自由に開花している。

ミストルテイン地区には最先端遺伝子組み換え技術を統率したクリスパーキャス9の加護の元、生命の進化を人類の手で書き換えるステージング環境への試みがなされている。植物に生命が宿るという酔狂な噂も風になびき花の粉のように大空に羽ばたいている。

そんな星々のように輝きを放つ花々とは対照的に漆黒の髪をなびかせながら、目を閉じて歩く少年がいた。

そんな異様な光景に誰もが見て見ぬ振りを突き通す中、

「あの!どうして目を閉じて歩いていらっしゃるのですか、危険ですのでどうか瞳の光を魅せて下さい!」

少年はきずくそぶりもなく変化を知らないカラスのように足を運んでいる。少女は慌てて声をかけ直す。

「聞こえておりますよね、オープンザアイですよ、ハルさん!」少年はようやくは重い瞼をあげて青く美しい少女に視線を寄せる。

絹糸のような艶を持つ水を連想させる青い髪。整った顔立ちは幼いけれど、サファイアより美しく、世界のありとあらゆるものを見透かすような透明でライトブルーな瞳は純粋な意思を感じさせる。陶器のような白い肌の下には静脈が青く透けていた。服の上からでもわかる桃の果実を思わせる胸は女性らしい優美な曲線を描いていた。並外れた美貌と相乗して、新入生、異性問わず彼女の虜となっているのだろうと少年は考えていた。自分の名を呼ばれ怪訝に思い尋ねることにした。

「失礼ですが、どうして私の名前を知っているのですか?」

「ようやくお話ししてくださいましたね! 私貴女の大ファンなんですよ!素粒子力学部門では幾千もの賞を受賞しており世界初のニュートリノ研究の第1人者ですもんね」海をも照らす瞳を輝かせながら自分のことように嬉しそうだ。

「どうもありがとうございます、おほめにあずかり恐悦至極にございます、姫様。」

「姫様だなんて、春様に恐れ多いですよ、春様はわたくしのことを御存じなのですか?」初めての春との会話で恥ずかしさを憶えその頬を桜に染め、嬉しさを隠し切れない様子で返答の意を表した。

「勿論知っていますよ、あなたさまは、太古から自然を守り世界樹に愛された一族、俗に精霊大国と名高いフェアリーズローザの第13プリンセスですから。」と深ふかとお辞儀をした。

「えへへ、なんだかくすぐったいですね」

「はっ!ー私ったら春様に逢えた嬉しさで自己紹介を忘れていましたわーこほんっ」

「わたくしはフェアリーズローザ王国第13プリンセス アルテミシア・プリンセプスと申します。

以後お見知りおきを、えへへ」高貴な姫の立ち振る舞いは、大人な美しい女性と可憐で幼さの残る可愛らしさのハーモニーを奏でている。

「お初にお目かかります、皇女殿下、わたくしは千葉 春と申します。」「なんなりと春とお呼びください」膝をつき頭を下げ紳士的で、さながら姫に仕える漆黒の騎士を思わせる所作動作。まさに王国に転生した勇者と皇女殿下の謁見の間である。現代においてはその光景は物珍しく、春は周囲の視線に興味、期待、偏見、誤解、思惑などを感じ取った。

「ありがとう、春、わたくしのことはアルテミシアと呼びすてで構いません」

「それから敬語は禁止です。同年代なのですからため口でおねがいしますわ」貴族に対しての礼儀と忠義は現代国家において命とも直結するため、一つ言葉を間違えれば容易に首が飛ぶ。しかし命とあらば無下にはできまいと春は主君への礼儀を改める決心を固めた。

「承ったよ、アルテミシア、これからよろしくね」最初の発言とは一変して、その言葉使いは幼さの残る可愛さを連想させ、整った目腹立ちと女性のように美しい容姿は多くの女性を魅了ことであろう。

「まあ、春様はこちらの話し方のほうがとっても可愛いですね」

「ずいぶん余裕そうだが、これから行われるミストルテイン選抜試験は平気なのかい?」

ー神を殺すものーその者の名をミストルテインと呼称する。日本政府は、この現代世界では優秀な人材確保に欠け、才能の原石を磨くための機関が存在しない事実に打開策を講じ、この学校の開発に搾取した。全世界の才覚溢れるものに入学の招待状を送り、この選抜試験を通してさらに貴重なレアヒューマンを探索するのである。何人が選ばれ、どんな試験なのか、その概要は誰も知らない。学校にはおよそ教師は存在せず機関の素性、詳細な情報は国家国務機関の機密情報に当たり詮索する者、探索を思惑する者すべてこの世に生を謳歌することはないと断言できるであろう。ミストルテインは神を殺すことのできる力を与える神聖な牢獄.

「わたくしは自信はないですが、我が国フェアリーズローザの王女として恥じない殊勲を上げてみせますわ」






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