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強く狭る  作者: 秋川 楓
8/8

Day9、10 苦しみと忘却

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 11月10日。


 僕の思いなんて一時的だって分かっていた。

 分かっているけど辞めれない。

 様々な思いが渦巻き、様々な【疑問】が渦巻き、苦しい。

 最近、常に頭の中に【疑問】が浮かんでくるようになった。

 嫌いな歌手が歌っている部屋で、他の作業をしているような感覚。授業中も、野球の練習中も、音楽は流されたままだ。


 秋の大会もベンチ入りできず、チームも三回戦で敗退。

新チームになってから、練習時間も長くなった。これまで午後八時に帰れていたのに、最近は9時が当たり前。


毎日5~6時間睡眠だ。

頭が痛い。

肺が痛い。

カラダが痛い。

寝足りない。

常に心臓が締め付けられる。

真面に息を吸えない。


殆どのチームメイトとそりはあわない。

監督にはトラウマさえ抱いているのかもしれない。

そのことに気づけているかどうかも怪しい。

僕は体も心も腐りかけていた。

僕は怪我をしたかった。

僕はその場から逃げたかった。

現実を忘れたかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

11月12日。


「お前レアキャラ手に入れた?」

「いや、まだだけど。」

「あのイベント明日までだぞ!」

「まじ!?まだ一週間あると思ってたわ!」


 部室では相変わらずどうでもいい話ばかりだ。

 でも、森崎も、キャプテン候補の松田も、仲の良くない他のチームメイトも、皆スマホゲームをやっていた。

だから僕も同じゲームをやった。


 ゲームの時は少しだけ話ができた。だけど相手にとっては、流れるようなものなんだろうな。


 そして、最近僕はあることに気づいてしまったのかもしれない。

 僕は【疑問】という苦しみから逃げるためにゲームをしていると。

 辞められない野球部という世界と、細い線一本だけかもしれないが、繋がれる。それでいて、現実を忘れられる。矛盾しているのかもしれない。

 仲良いチームメイト、クラスの友人だけではこの『苦しみ』をを中和することが出来ない。

 森崎とも楽しく会話するし、鷹取をはじめとしたクラスメイトとも楽しく会話をする。

 でもそんなの一瞬で、『野球部』という大きな波に飲み込まれ、【疑問】という激しい雨に流され、跡形もなく僕の目の前から消える。

 僕には僕にとっての『麻薬』が必要なんだ。



僕はそこからゲームをやめられなくなった。

行きの電車内、昼食休み、帰りの電車内、家の中、、、

学校の課題は授業中に終わらせる。

成績は何故か野球部の連中よりは良かった。

正直そんなのどうでもいい。

ただ、逃げられない『苦しみ』から逃げたかったのだろう。

一時的でもいいから、忘却したかった。


いや、

僕は世の中という水槽の中で

『外の世界を覗ける隠れ家』を追い求めていたのかな。


どうであれ、僕は新たな『麻薬』を探し求めてしまうだろう。


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