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強く狭る  作者: 秋川 楓
4/8

Day4、5、6 別世界の住民②

あああああ


 6月15日。

 僕は早く学校を出たくてしょうがなかった。

 今日は昆虫採集に行く日であるからだ。

 もう4時間目の授業は終わり、帰りのホームルームが始まっている。この胸の鼓動はどの感情を反映したものなのか。【疑問】が渦巻いている。

 小さい頃の遊園地に行く前の気持ちと似た物なのか、それとも見えない恐怖からくる不安なのか、、、それとも野球部に対する要らない罪悪感なのか。


ブーンブーン


「?」

帰りのホームルームの終盤、ポケットに入っているスマートフォンからバイブ音が鳴る。


キーンコーンカーンコーン♪ キーンコーンカーンコーン♪ キーンコー、、、、

「じゃあ、これで終わり!」

 担任の先生が終わりを宣言する。

「起立。」


ガチャッ


僕は椅子からよろめきながら立つ。

「気を付け、礼。」

号令係が号令をかける。

 僕は頭を下げる。バイブ音に少し【疑問】を抱えながら。

 皆、バラバラと席を立ち始める。

「じゃあ、一緒に行こうぜ!」

 僕が教科書をしまう中、鷹取が声を掛けてきた。

「ちょっと待ってね。」

 僕はバイブ音の元を確認するため、スマホを開いた。


 トークアプリに連絡が来ていた。正直これはまだ想定の範囲内であった。勿論、来て欲しく無かったが。

「ごめん!野球部から『グラウンドに来い』って連絡来てるから、ちょっと行ってくる。すぐ戻って来る!」

「おう!おけ。校門の前で待ってるよ。」

「おけ!」

 まだ他のクラスでは、先生の話が終わっていないところもある。恐らくグラウンドに全員集まるのにはもう少し時間がかかるだろう。

 僕は鷹取に罪悪感を抱きながら、早歩きでグラウンドへと向かった。


 階段を降り、靴を履き替え、今日もいつもの道路を通って、グラウンドへ。グラウンドが見えてくる。予想通りまだ人は少なかった。部室に入り、全員が集まるのを待つ。

 待っている間、様々な緊張と様々な【疑問】が頭の中でごっちゃごちゃになっている。でも、『早く終わってくれ』という思いだけは忘れずに留まっている。

 全員が集まり、監督も到着し、話が始まった。早く終わってくれと切に願う。

「今日は時間あるし、ボール磨きとかチームの道具清掃をするように。以上。」

「はい!」

 一同返事をする。

 監督は職員室へと帰っていった。

[こんなことでか。]


チームメイトは話しながらダラダラと野球道具のある倉庫へと向かう。

何でこんな日にこんな事をやらなくちゃいけないんだ!

周りがスローモーションに見える。

倉庫の整理なんてこの前もやっただろうが!

みんな遅い。

早く終わらせたい。


「ボール磨きは一人一箱やれば多分すぐ終わるから、それ目安にやって。」

 三年生キャプテンの黒川さんがそう声をかけた。

 みんなバラバラと返事をして、取り掛かり始めた。胡坐をかいたり、ベンチに座って談笑をしながら、ゆっくりとボールを磨いていく。まるで1分が1秒に換算されている世界のようだ。


僕は早く逃げたかった。

この世界の住民と僕は違うんだ!

僕は駆け足でボールを磨いていき、早くかつ正確にボールを一箱分磨き終えた。

これで僕はやるべきことをやった。誰にも文句は言われない。僕が何もやっていないのではない。周りの世界が遅いだけだ。

「一箱終わったので先に帰らせて頂きます。」

「お、おう。」

 キャプテンにそう告げた。別に止められはしなかった。文句なんてないだろう?


僕は部室にある荷物を取り、さっさとグラウンドを立ち去った。

駆け足でさっきの道を逆行して、校門へ向かう。

他の部活が練習の準備をしているのを横目に、

グラウンドを抜け、道路を通り、校門へ。

彼が待っているのが見えた。

「ごめん、待たせちゃって。」

「全然大丈夫よ。じゃ、着替えて行こーぜ。」


もう、帰宅生徒のピークは過ぎていた。だから人が少ない。

僕たちは校門で先生にバレないように登山ができる服に着替えて、駅へと歩み始めた。




あああああああああ

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