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37話:ギルド【銀の月】

第三者視点での間話です!


 ダンジョン4F――【始まりの洞窟】


 その強さは圧倒的だった。


 階段に座り込んでしまったレントは、目の前で繰り広げられる一方的な戦闘に見惚れていた。


 その女剣士はまるで演舞のように刀を振り回している。それだけで、彼女に近付く【冥兵】が十体まとめて斬り払われた。


 彼らは近付く事さえ出来ない。


「……ん? ほお……中々に強そうな奴がいるな」


 そんな中、一人の剣士らしき姿のアンデッドが歩み出てきた。片腕が無く、刀を二振り腰に差している。


「……名乗れ。私は【七曜流】のアスカだ」

「同郷か。珍しいこともあるものだ。ワシは……【双天流】のユキナガだ」

「……っ!! あの、ユキナガか!?」

「もう老いぼれだよ。さあ、死合を始めよう。剣士に……言葉は不要」


 レントの前で、激戦が始まった。二人の剣士の剣戟はもはや芸術と呼ぶに相応しい美しさだった。


 しかし、見れば、女剣士が押しているように見えた。


「強い。強いが……」


 女剣士がそう呟くと、剣をなぜか鞘に納めた。


「……片腕というのはやりづらいのお」

「双天流は……二刀流でこそ真価を発揮する流派。全力の貴方と戦いたかったよ」

「手間を掛けるな」

「構わん。ゆっくり眠れ――【天日】」


 ユキナガへと女剣士が走ると、抜刀。眩しいほどの光を纏った刀を一閃。


 それは光の斬撃となり、ユキナガを切り裂き、更にその背後の通路を直進。残りの【冥兵】達を切り裂き、進む。


 そして、静寂が戻った。


「こんなもんか。あとはギルド庁に任せよう」

「……あんた……何者だ……」


 レントは思わずそう聞いてしまった。ここで聞かなかったら後悔しそうだからだ。


「私か? 私はアスカ。最強のギルド、【銀の月】の剣士だ」


 狐面を外し、笑うその女剣士の姿を、レントは一生忘れる事はなかった。



☆☆☆



  王都、【棺桶街】近くの公園。


 ギルド庁の要請で、駆けつけた高ランクギルドの冒険者達は、その光景にあっけを取られたという。


「――【死王乱舞】」


 少女が大剣を地面に突き刺すと同時に、彼女の周囲に巨大な骨が地面から隆起。【冥兵】達を串刺しにする。


 しかし、軽鎧を纏った女の【冥兵】がそれを避け、両手のダガーを使って少女へと斬撃を放つ。高階梯の冒険者ですら見切れないその斬撃を、少女はスケルトンナイトを盾にした躱す。


「……速いなあ」


 風の如き速度で動き回るその女に少女は苛立っていた。


「もういいや……多分レガートなら避けられる」

「ふん! あたしには当たらないよ!」


 女がそう言って、ダガーを構えた。周囲にはスケルトンナイトや【冥兵】の残骸が散らばっているが問題ない。生前は【風渡り】と呼ばれるほどに回避に長けたその女はどんな攻撃も避けるつもりでいた。


「お姉ちゃん……【死操士(ネクロマンサー)】がいるのに、死体に近付いちゃダメだよ?」


 そう少女が呟いた瞬間に、周囲に散らばっていたスケルトンナイトや【冥兵】の残骸が爆発する。


「っ!!」


 しかし反射的に地面を蹴って宙へと逃げた女。しかし、少女はとある二人組と行った戦闘のおかげで、そうされた時の対処法をすでに考えていた。


「――【サモン・ボーンドラゴン】」


 爆発し、散らばったアンデッド達の破片が一瞬で空中で集まると、巨大な骨のドラゴンへと変化していく。


「……嘘」


 空中にいた女を顎を開いたボーンドラゴンが噛み砕いた。


「……おしまい」


 少女が、そう呟いて、目線を公園の向こう側へと向けた。


「ぐぬぬ……早く殺せレガート」


 そこには、巨大な獣人が銀色の刃を仕込んだワイヤーによって拘束されている姿があった。


 その屈強な身体にワイヤーがくい込んでいく。


「……残念です。貴方を手に掛けたくなかったですよ、ラルク」

「仕方ないさ」

「……シエラは元気ですよ。貴方似ではないのが救いです」

「がはは! あいつは母親似だったな!」

「ええ。それでは今度こそ、ゆっくり眠りなさい」


 執事がそう言った瞬間に、銀閃がきらめき、獣人がバラバラになった。


 そしてそのワイヤーは執事の手元に戻り、金属音と共にステッキへと変形する。


「終わりですね。さきほどの爆発は危なかったですよ、テトさん」

「むー。でも、レガート、さっきテトのスケルトンナイトまで斬った」

「私も攻撃に巻き込まれかけましたが?」


 そんな一部始終を見ていた冒険者達が思わず呟いた。


「なんだよこいつら……」

「俺らの出番なくね?」


 そんな冒険者達に気付いたのか、執事と少女が振り向いた。


「あ、俺らは敵じゃねえ!」


 思わず構えてしまった冒険者がそう言うが、執事と少女はニコリと笑うだけだった。


「終わりましたな。戻りましょうか」

「……うん。お兄ちゃん、無事かな?」

「いらぬ心配でしょうな」


 去ろうとする二人を見て、冒険者が声を上げた。


「ま、待ってくれ! あんたらどこのギルドのやつだ!?」


 待ってましたとばかりにその二人が目を細めると、口を揃えてこう言った。


「「最強のギルド――【銀の月】」」


全然、素性を隠す気がない面々です。仮面はノリですね


次話で、決着がつきます。最後までお付き合いいただければと

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ハイファン新作です! 冒険者のパーティに潜入してランクを決める潜入調査官のお話です!たっぷりざまあがあるので、お楽しみください!

冒険者嫌いのS級潜入調査官 ~冴えないおっさんなんて要らねえんだよ、と追放されたので査定は終了だ。ん? 元Sランク冒険者でギルド側の人間だって知らなかった? 今さら遅え、Eランクからやり直しな~



興味ある方は是非読んでみてください
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