35話:冒険者は語る
第三者視点での間話です~
ダンジョン4F――【始まりの洞窟】
「早く、逃げろ!! お前らでは敵わん!!」
【金の太陽】の元メンバー、重戦士レントが叫びながら、目の前の【冥兵】を斧で叩き潰す。
彼は【金の太陽】を抜けたあと、ソロ冒険者として時々新人冒険者達のパーティに助っ人として呼ばれ、活躍していた。今日も、5Fで薬草を採取するという簡単な依頼だったはずだが、どこからかやってきた、謎のアンデッド兵に襲われ、ここまで逃げてきたのだ。
「しかしなんだこいつらは!!」
レントは、長いこと冒険者をやっているがこんなアンデッドは見た事がない。そもそもアンデッド系の魔物は、中層から深層にしか現れない。こんな上層で出てくる事自体が異常なのだ。
しかも見れば、そのアンデッド達は皆、元冒険者に見える。
「ふん!!」
レントは、同じように【冥兵】に襲われている冒険者を尻目に殿で奮戦していた。
しかし数が異常だ。何よりも……
「ルーナ!?」
レントは自分へと剣を向けてくる一人の【冥兵】に見覚えがあった。それもそのはず、それは【金の太陽】の元メンバーである軽剣士のルーナだった。
なぜ彼女がアンデッドになっているかは分からない。
分からないが、それはレントを動きを悪くするのには十分だった。
「る、ルーナ! 目を覚ませ!!」
分かっている。どう見ても首があらぬ方向に曲がっており、ルーナはとっくに死んでる事を。だが、レントは信じたくなかった。
「なんでだ……なんでこんな事に!!」
洞窟中にアンデッドが溢れている。もう少しで、上の階へと続く階段がある。レントは戦うのを止め、何とかそこまで撤退する。
レントは前を行く新人冒険者達を見て、決意をする。
「俺が時間を稼がないと。お前らは急いで管理局に連絡しろ!! こいつらが王都に溢れたら大変だぞ!」
レントはそう叫ぶと、くるりと階段へと背を向けた。
「レントさんは!?」
「俺は……ここで踏ん張る」
「無理ですって! あの数は……」
「いいから行け!!」
新人冒険者達が去っていく音を背中で聞いてレントは死を覚悟した。
迫る【冥兵】達を斧で叩き潰し、何とか階段を死守するが、数が数なので、もはやあとどれぐらい持つか分からない。斧を握る手の力が徐々に抜けていく感触。
目の前には短剣を嬉しそうにこちらへとふり下ろそうとするルーナの姿が見えた。
「もう……ダメか……」
諦めかけたレントの横は、何かが通り過ぎた。
「良くやったな――後は任せろ」
それは着流しを着た、一人の女剣士だった。狐の面を被っており、着流しの背中には銀の三日月と狼の紋章が入れてある。
「【銀の月】筆頭剣士のアスカ――いざ、参る」
☆☆☆
王都、【棺桶街】近くの公園。
「ひええええ!! 逃げろ!!」
「なんでこんなとこに魔物が!?」
広い公園の一角にあった林の中になぜかぽっかりと穴が開いており、そこから【冥兵】達が湧き出ていた。
それは、周囲にいた市民を無差別に襲っていく。
あっという間に公園が【冥兵】によって占領された。
「くそ、なんだこいつら!!」
たまたま近くにいた冒険者のパーティが応戦するが、数で圧倒されてしまい、劣勢だった。
「ダメだ……誰か応援を呼――ぎゃああ!!」
パーティの要である戦士の首が千切れた時に、冒険者達はもう無理だと悟った。
しかし、迫る【冥兵】に絶望した冒険者達の目の前で、銀閃がきらめく。
「――やれやれ、ギルドの応援は間に合いそうにないですね。これだから国の組織というのはいけませんね」
「へ?」
一瞬で目の前にいた【冥兵】達がバラバラになったのを見て、あっけにとられる冒険者。彼らの目の前には、一人の執事のような初老の男性が立っていた。
その胸には、銀の三日月と狼のレリーフが入った紋章が輝いている。
「あ、あんた……なにもんだ」
「ただの受付爺、ですな。ここは我ら【銀の月】に任せなさい。ああ、間違っても反対側の入口に行ってはいけませんよ。アンデッドの仲間入りしたいのなら……別ですが」
男性はそう言うと、ムチのように伸びたステッキを手に、公園の中へと進んでいく。
公園の反対側。
「アンデッドが同士討ちしているぞ!!」
そこにいた冒険者もまた戦い、そして負傷していた。
そんな彼らの前で、まるで冒険者のようなアンデッドとスケルトンナイトが戦闘を行っていた。
「――どいて。危ないから」
背後から現れたのは、少女だった。ドクロの面を被っているが、こちらも銀の三日月と狼の紋章の入った髪飾りを綺麗な銀髪に付けている。
手には禍々しい大剣があった。
「だ、だめだ! 逃げろ!」
少女が冒険者の忠告を無視してまるで遊びに来たような感覚で、アンデッド同士が争う公園内へと進んでいく。
「何をしている!! 君じゃ敵わな――へ?」
冒険者が、アンデッドが少女を襲うのを見て叫ぶが、同時に少女が手に持つ大剣を一閃。
「……邪魔」
一振りで五体ものアンデッドが一瞬でバラバラになる。
更にまるで彼女を守るようにスケルトンナイトが陣形を組み、他のアンデッド達を倒していく。
「なんだあれ……」
「知るかよ……でも……味方で良かった」
後に、複数の冒険者によって語られる事になる――謎のギルドによる、一方的な戦闘が始まった。
次話でまたアニマさん視点戻ります~




