32話(冥王サイド):ラムザ再誕
【輪廻遺跡ルエルナ・エ・ラ】――最深部、輪廻の祭壇。
青い炎が人魂のように周囲に漂う祭壇に声が響く。
「カロン様――あちらが、例の鎧です」
「剣はどうしました?」
「……失敗しまし――ひっ! お助けくだ」
長い銀髪に赤い瞳をした青年――カロンが、持っていた剣で一人の男の首を刎ねた。
「無能しかいないですね。せめて死体となって役に立ちなさい」
カロンが手を振ると、首のない死体が蠢き、ひとりでに動き始めた。たいして強い男ではないが、矢避けぐらいにはなるだろう。
カロンは祭壇の上に置いてある、銀色の鎧を見つめた。
「ああ……ラムザ……ようやく君にまた会える……」
恍惚の表情を浮かべたカロンが剣を掲げた。よく見れば剣の柄には黒い宝珠が埋めこまれていた。
「〝眠りの揺り籠に揺られし炎よ、静かの海に眠りし骨よ……目覚めよ、輪廻は再び為された〟――【輪廻再生】」
カロンの詠唱と共に、祭壇の天井から覗く静かの海から、水滴が落ちてくる。それが鎧にかかると、やがてそれは青い炎へと変わっていった。
炎が人の形へとなっていく。
「生まれ変わった気分は……どうですか、ラムザさん」
カロンが愉悦の表情を浮かべながら、祭壇に立つ一人の男を見つめた。
長い赤毛の下に、蒼い瞳。整った顔立ちだが、どこか少年っぽさを残している。銀鎧を纏ったその姿は、まさに英雄と呼ぶに相応しい。
「……俺は……死んだんじゃないのか」
「復活させました」
「殺せ……」
「貴方を二度も殺させないでくださいよ。苦労したんですから。しかし、毒と呪いで殺したおかげで見た目は綺麗で良かったです」
「……お前だけは……絶対に……許さん」
ラムザの憎しみの籠もった声を聞いてカロンはため息をついた。
「結局、誰も復活したことを喜んでくれませんでしたね。残念です――【魂の隷属】」
「アガアアアア!!」
カロンが剣を向けると、そこからどす黒いモヤが放たれて、ラムザを覆う。
悶え苦しむラムザはやがて、声一つ上げなくなった。
「ラムザ――跪け」
「……はい」
祭壇に立っていたラムザからは表情が抜け落ち、まるで人形のようだ。彼はカロンの側に跪いた。
「あはは……アハハハハハ!! これで、ついに【冥王】が復活した!!」
ラムザが祭壇から続く階段を降りていく。そして、そこに並ぶ三人の影に並ぶ。
カロンがその一人一人に声を掛ける。
「蒼雷のラルク」
一人は巨大な斧を担いだ青い耳と尻尾が特徴の獣人だ。しかしその胸には風穴が開いている。
「双天のユキナガ」
一人は無精髭を蓄えた壮年の剣士だった。着流しを着ており、腰には刀が二本差してある。右腕がなく、首も千切れ掛かっている。
「風渡りレーゼ」
一人は軽鎧を纏った女だった。両手にはダガーがあるが、生前は美しかっただろう顔は潰れ、骨が覗いている。
「そして……銀滅のラムザ」
カロンが全員が見える位置に立ち、声を挙げた。
「結局四人しか復活出来なかったが、まあ十分だろうさ。さあ、再び【冥王】の威風を地上の愚かな人間共に見せ付けてやろう!! ゆけ、我が愛しい友人達よ……君達が愛した街を……家族を……人間を……全て滅ぼせ!」
カロンの言葉と共に、ラムザ達が祭壇のある部屋から去っていく。その先には大広間があった。
そこには死体となってなお眠りに付けず、呻く無数の冒険者で埋まっていた。
その数は優に千は超えるだろう。
「さあ、始めよう。死の行進を」
カロンの命令と共に――死者達が蠢き始めた。
ついに動き始めました
いよいよ山場が始まります。最後まで書き切る予定なのでお楽しみに~




