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26話:ベアトリクス


「ジジイてめえ、この地図全然役に立たないじゃねえか!」


 その赤毛の少女――ベアトリクスは俺を無視してレガートに食ってかかる。


「……ベアトリクス嬢、それ、上下左右が反対ですな。上に方角を書いたマークがあるでしょう」

「……ほんとだ。……ま、まあ! そういう事もあるな!」


 なんかまたポンコツそうな匂いがするんだが。ベアトリクスが俺の隣にどかりと座る。その喋り方といい、所作といい、かなりがさつというか男勝りな感じがする。


 アスカはああ見えて、所作も綺麗で女子っぽいところがある。いや、比べるのは両者に対して失礼だな。


「ベアトリクス、隣の彼が例のギルドマスターですよ。そしてラムザの剣を受け継いだ者です」

「へ?」


 そこで、ようやく俺の存在に気付いたとばかりにベアトリクスは俺の顔を覗き込む。そして俺の身体をペタペタと触り始めた。いや、くすぐったいよ!


「ふむ……面はまあまあだが、身体は鍛え方が足りないんじゃないか? ほんとに強いのかこいつ」


 ふむ。礼儀礼節もないときたか。俺がレガートを睨むと、レガートは笑うのみだ。


「ベアトリクス嬢、彼は――()()()()()()()()()()

「……はあ? こんな兄ちゃんに負けるほどあたしは弱くはないぜ!? 耄碌(もうろく)したのかよジジイ」


 埒が明かなさそうなので、俺は口を開いた。


「レガート、説明を」

「彼女はラムザの隠し子でしてな。どうやらラムザは何かを予感していたのか、【銀滅】をベアトリクスの母親に託し、万が一何かがあった時、この剣を娘に渡すようにと遺書を残していたようで」

「んで、あたしが貰ったわけだが、魔術も剣技もさっぱりでな! いらんから売ろうかと考えたんだけど、クソ親父の遺書の続きを思い出してさ。決して手放すなと書いてあったから――罠依頼の報酬にして塩漬けにしてやったわけよ! まさかあんな依頼を受ける物好きがいるとはな」


 ベアトリクスがそんな事を言いながら、レガートが出したビールを一気に飲み干した。


「瓶入りビールうめえ! しかも冷えてやがる! いやあ、しかしそんな依頼を出していたなんてすっかり忘れていたぜ」


 なるほど……。とりあえず【冥王】と関わってなさそうで安心した。いや、本人自体はある意味もろに関わっているが……。


「そして、ここからが本題ですが……マスター、彼女をこのギルドに入れませんか?」

「「はあ!?」」


 俺とベアトリクスの声が同時に響く。どうやら彼女も初耳のようだ。


「失礼ながら、ベアトリクス嬢について調べさせていただきました。貴女、どれだけのギルドを追放されれば気が済むんですか?」

「……いやだってさ、偉そうにしてる奴らが弱っちいんだもん」

「ギルドマスターをボコボコにして追放……パーティでの連携を一切せずに追放……などなど、挙げるとキリがありません」

「もう良いんだよ。あたしは独りでやっていくから。親父の昔の仲間だかなんだか知らんが、あんまりあたしに干渉するなよジジイ。じゃあな」


 ベアトリクスが不快そうにそう言って、立ち上がると、もう用はないとばかりに背を向けて扉へと向かう。なるほど、レガートはかつての仲間の忘れ形見の世話を焼いているわけか。


 たがこの爺さんは、ただの私情でそんな事をするとは思えない。


「――()()()()()()()()()()()、ベアトリクス」


 レガートの言葉で、ベアトリクスの動きが止まった。


「それを阻止する為に、私とそしてこのギルドは動いています。それでも、去りますか?」

「あのクソ親父が……戻ってくる……? ジジイ、説明しろ」


 ベアトリクスが怒気を纏いつつ振り返った。その顔は鬼の形相になっている。


 ええっと、どういうこと?


「――ならば座りなさい」


 ……さて、話がややこしくなってきたぞ。



☆☆☆



 一通り話を聞いたベアトリクスが腕を組んで、大きく頷いた。


「――分かった。そういう話ならあたしも混ぜろ」

「レガート、そう簡単にホイホイ実力もわからん奴を入れるわけには……」


 しかし俺の言葉を聞かずにベアトリクスが高らかに宣言する。


「ただし、条件がある。あたしをギルドマスターにするのが条件だ。あたしは自分より弱い奴の下に付く気はない」

「いや、だからうちは上とか下とかないんだよ……それにそもそも入れるとも言ってねえ」


 俺がレガートを睨むが、微笑みを返されるばかりだ。


「要するに、マスターは彼女の実力を。そしてベアトリクス嬢はマスターの力を。それぞれ分かれば話が早い」


 と言ってレガートが俺の手元にあった依頼書へと目線を向けた。

 

 そういうことか。


「分かったよ。レガートがそう言うなら、連れて行っても構わない」

「流石は、マスター」

「あんだよ、勝手に話を進めるなよ!」


 ベアトリクスが苛立ったような口調で俺を睨む。俺がレガートを見ても、レガートは微笑むだけで何も言わない。


 俺から言えってことか。やれやれ。


 それはつまりこういうことだ。


「……ダンジョン中層でこなす依頼があって、ベアトリクスにはこれを手伝ってもらう。そうすればお互いの実力が分かるだろ?」


ベアトリクスちゃんはナチュラル失礼な子ですが、悪い子ではありません。そして実力も確かです

次話からダンジョンに潜ります。

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ハイファン新作です! 冒険者のパーティに潜入してランクを決める潜入調査官のお話です!たっぷりざまあがあるので、お楽しみください!

冒険者嫌いのS級潜入調査官 ~冴えないおっさんなんて要らねえんだよ、と追放されたので査定は終了だ。ん? 元Sランク冒険者でギルド側の人間だって知らなかった? 今さら遅え、Eランクからやり直しな~



興味ある方は是非読んでみてください
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[気になる点] 上下左右反対には持ち方ではならんぞ 裏返さない限り 上下逆さま 位が妥当では?
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