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20話:つかの間の平穏


「馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なああああああ!! ありえん!! 俺が!! お前に!!」


 中ほどで折れた剣を見つめ、ブリオが発狂する。


「俺はもうお前らと関わる気はない」


 俺はそう言って、剣を鞘へと納めた。もはや追放された怒りなんてない。ただ、ブリオが哀れだった。


「……アニマさん! 戻って来てくださいよ! 俺も、他のメンバーもアニマさんに付いていきますよ! アニマさんをギルドマスターにして、復活させましょう! もうこいつにうんざりだ! 俺が声掛ければ、他にも沢山の奴が仲間に――」


 コモドが膝をついて発狂するブリオを見てそう訴えるが、俺は首を横に振った。気持ちは嬉しいが、それこそ今さらだ。


「悪いな。俺はもう誰も支援しないし、好き勝手、自己中心的に生きるって決めたんだ。残念ながら【金の太陽】に戻る気はない」

「そんな……じゃあ、俺達がそっちに移籍しますよ! ギルド作ったんですよね!?」


 どこで聞き付けたんだ? さて、どう断ろうかと思っていると、そのコモドの言葉に対して氷のような声が響いた。


「却下だ。雑魚はいらん」


 それは、隠蔽魔術の効果が切れて姿を現したシエラだった。


「お前は誰なんだよ!」


 コモドが怒りの声を上げるが、俺はため息をつくだけだった。


「俺の仲間だ。そして彼女がそう言う以上は、お前らを俺のギルドには入れられない。だから、自力で【金の太陽】を立て直すか、別のギルドに移ることだな」

「そんな……」


 うなだれるコモドに、少し心が痛むが仕方ない。アスカやテトがいる以上、彼らが一緒に戦う事はできない。それは……彼らの為でもあるんだ。


 俺はそんな言い訳をしながら、シエラと共に彼らに背を向けた。


 そんな俺へと、ブリオの声が届く。


「殺す……殺す!! お前を殺してお前の仲間も全員ぶっ殺してやる!! 俺が負けるなんてありえない!! 覚えておけアニマ!! 【金の太陽】総出でお前を殺しにいく!!」


 俺はその捨て台詞を無視して、シエラと共に今度こそ去ったのだった。



☆☆☆



「殺しはしなくても、腕の一本ぐらい斬り落とせば良かったのに」


 何事もなく狼亭に辿り着くと、シエラがそう俺に向かって言った。なぜか怒っているように見える。


「あいつはプライドが高いからな。それにあの剣を命の次に大事にしていたんだ。十分だろうさ」

「だけど……。まあいいや。あいつが馬鹿で無能なおかげで僕はアニマを手に入れたんだ」

「そういうこった。感謝しとけ」

「僕達を殺すとか言っていたけど」

「俺を? アスカとテトもいるこのギルドを? 冗談だろ」

「……確かに」


 俺が扉を空けると、良い匂いが店の中を漂っていた。


「あ、お帰りなさいお兄ちゃん、それにシエラも」


 カウンターでエプロンを着けたテトがニコニコと俺達へと手を振っていた。どうやら、シチューか何かを作っているようだ。


「ただいま、テト。何事もなかったか?」

「うん。あ、アスカがまたなんか剣を買ってたよ。部屋が狭くなるからやめてほしい」


 テトが一大事だとばかりに報告してくるが、俺は笑い返すと、軽くテトの頭を撫でてそのまま二階へと上がる。シエラは喉が渇いたと言って、ビールをカウンターで飲み始めた。ここ数日で分かったのだが、シエラはかなりの酒豪だ。逆にアスカは一滴も飲めない。


 二階に上がると、アスカが自室でわざわざ床に座り込んで剣を研いでいた。見ればそれは刀ではなく、西方の砂漠の民が使うという大振りの曲刀だった。


「帰ったか師匠。見てくれ、カラフスカの民が使うという曲刀だ。ううむ……美しい」

「それ、使うのか」

「無論だ。剣の道は刀のみにあらず、だ」


 俺は部屋を見渡した。同室のテトが狭くなると文句を言いたくなるのも分かるぐらいに、アスカのコレクションである多種多様の武器が立て掛けてあった。武器屋でも開く気か?


 だがテトはテトで、ベッド脇に無数の骸骨やドクロで祭壇らしきものを作っており、そこにあの例の骨の大剣が飾ってあった。その一角はアスカが嫌がらないのが不思議なほど、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している。テトのベッドには抱きスケルトンという謎の物体が横たわっていた。


「これから下で飯を食いながら今後についてシエラと話し合う予定だ」

「了解だ。私も同席しよう」

「助かるよ」


 俺達のギルドに、ルールはさしてない。同じギルドメンバーだが、別に話し合いに参加するもしないも自由だ。


 だが、何をするか、何をしようとしているかの報告だけはなるべくするようにと伝えてある。まあこれも強制ではないが、アスカもテトも律儀にしてくれるので、今のところ何の問題もない。


 俺とアスカは部屋を後にして、下へと降りた。


 丁度良いタイミングで、料理も出来上がったようだ。


「うっし、じゃあ飯にするか」

「だね。さて、色々と動きがありそうだよ。何から話そうか」


 こうして【銀の月】の平和で陽気な宴会は深夜まで続いたのだった。


ブリオさんはまだ諦めていない様子ですねえ……

次話は最後の追放者サイドとなります。ぐっばいさよなら、あーりがとう

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ハイファン新作です! 冒険者のパーティに潜入してランクを決める潜入調査官のお話です!たっぷりざまあがあるので、お楽しみください!

冒険者嫌いのS級潜入調査官 ~冴えないおっさんなんて要らねえんだよ、と追放されたので査定は終了だ。ん? 元Sランク冒険者でギルド側の人間だって知らなかった? 今さら遅え、Eランクからやり直しな~



興味ある方は是非読んでみてください
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