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「伊類の代から制服が変わったんだよ。あれでも俺の高校の後輩」
「はあ。初と出会ったときはピンクのネクタイが3年だったもんなあ」
俺達は俺達がつけているネクタイを見る。
「伊類もピンクだから見るたび1年のくせにイキるなよ、と思ってた」
「はあー。いつも郁が言ってた『要先輩に睨まれてる』はそういうワケだったのか」
「今の伊類の真似?」
「うん」
「似てた」
「やった」
たった2人だけの教室。たった2人だけの授業。たった2人だけの買い出しにたった2人だけの食事。
たった2人、俺と初だけの土古村。
皆いなくなってしまった。
「死ぬ間際、最期に発見がこの世界に来たんだよ。発見がこの世界の最後の一人。り、っていうかわからないけど」
初は言った。
確かにそうだった。
この世界は俺の理想郷だった。
大好きな人たちを詰め込んで、記憶を捜査して、俺だけの存在にした。
「俺の桃源郷でもある」
初は自分も片棒を担いでいると主張した。
「俺は永遠の存在だ。俺は一生消えることが無い。それが何より嬉しいんだよ」
「そっか」
「一人じゃないしな」
「そっか」
「約束覚えてる?」
「約束?」
「次回作の小説貸してやるって」
「ああ」
そんなことも言っていた。
「でも発見文才無いからなー」
「え!?」
「今度の話は一緒に考えようか」
俺達は屋上にいた。
あの時みたいに、ノートを囲んで。