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最終章 第三節 行方(3)

「ねえ」

 部屋から出てさほど経たない内にリースが異変に気づき、その後ろを歩いていたジャスティが拳をぼきぼきと音を立てる。

「おもしれえ」

「誰もいない?」

 いち早くエントランスルームに出たルークが、有り得ない周囲の静けさに目を細める。

「部屋に置いてきたのは正解だったか」

「外に30人位かな」

「一人6人か」

 リースが外へ視線を向け、同じ様にその位置を読んだジャスティが単純計算で一人頭の人数を計算し余裕の笑みを見せる。正直なところ、一般人相手ならどんな武装をしていようと負ける気はしない。

「いい、まずは俺一人で片付ける。詳細な位置を」

「は?」

 そんなジャスティが思わず真顔で振り向いた先で、カインはさらりと言い放ち翼を開いた。

「体力はできるだけ温存しておいたほうがいい」

「だったら、なお更私たちの出番だよ」

 入り口から出かけたカインの肩をリースが掴み、強引に後ろに引っ張る。

「お前に教える手間も時間も惜しいし。っていうか、出番取るなよ」

 次いでジャスティがメラメラと抑えきれない炎を拳からたぎらせながら、好戦的な笑みを浮かべる。外にいる者達が彼らの動きに気づいたのか隊の展開を始めたものの、それすら彼には丸見えだった。

「おい」

「じゃ、ちょっくら行って来る」

 そういってジャスティが館内から勢いよく飛び出し、リースもその拳に力をこめる。

「五分で片付ける」


「本当に片付いた」

「やり過ぎだ……」

 大きな爆発音がしてから数秒、終わった! とリースの威勢のいい声が聞こえてきたのに合わせて外に出たルークが驚きと安心が交じり合ったような声を漏らし、カインはその惨状に頭に手を当てた。

「おう、遅いな」

「あーあ、この人原形失っちゃってるよ」

 ルークがどうだ! と胸を張るジャスティの足元に転がる何かを見てざっと検死を始めるが、死因など分かりきっている。焼死だ、それもかなりの高温で長時間痛めつけられたような。

「まあ、止めはしたんだけど」

 リースが苦笑を見せながら姿を見せ、ルークは後の事を思いため息をついた。

「これ絶対僕ら悪役だよ」

 後々ロイヤルナイツでも誰でもここに来れば真っ先に容疑者に挙がるのは誰かなど目に見えている。とはいえ、事実なのだから否定する気も無いが、こうした状況に慣れていない者が見ればその場で倒れるだろう。

「正義が好きなのか?」 

「そりゃ、まあ」

 そんなルークの胸中とは少しずれた質問に、彼は言葉を濁しながらカインの方に目をやる。過ぎた事に何を言っても仕方が無いが、カインならここまではやらなかっただろう。

「拳銃だけか?」

「え? どうだったっけ?」

「他には何も。あっちで伸びてる方々に後で聞けば――」

 銃声が響いて、リースがその表情を怪訝なものに変える。

「狂ってる」

 次々と響く銃声の意味を理解した後、リースは胸糞悪い気持ちそのままをはき捨てる。自殺、というのだろうか。自らの命を絶つ、というこの行為も彼女の理解の範囲を超えていた。

「どうだろうな」

「どうって、マリアを人質に取られたからこんな事してるんだろう?」

 この世界を知っているルークから見れば彼らの行為も何となくは理解できる。勿論、自分がすることはないだろうが。だから、そんな疑問を発するに至ったカインの考えに興味があった。

「いい。行こう」

「?」

 が、それすら答えることなく歩き始めた彼はすぐにその足を止めた。いつの間にかリースが姿を消している。先ほどまですぐ傍にいたのに、という彼の考えは不吉なエンジン音に掻き消された。

「だってほら、ルークが」

「あ、そうか」

 見るからに不機嫌そうな表情に変化したカインに、リースが満面の笑みで返しルークがそれを聞いて申し訳なさそうな表情になる。飛ぶことも、かといってリースやジャスティほどの走力も無い彼を考慮すれば、自然とこの形に落ち着くことになる。

「分かった」

「へ?」

 言葉とは裏腹に運転席の扉を開いたカインは、そのままリースを引っ張り出しながらルークの方に振り向く。

「運転は?」

「まあ、人並みには」

「聞いたな」

 その回答を聞いて逆にしてやったりの表情を見せる彼は、不服そうなリースをあっさりと運転席から引っこ抜き、自身は後部座席に滑り込んだ。

「臆病者」

 そんな最後の負け惜しみにも、カインはつんとした表情で短く答えた。

「さっさと乗れ」


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