何度始めれば、終わりは許されるのだろう
「嫌だね」
「またわがまま言って」
露骨に嫌そうな顔をするシンにルークは苦笑しながら彼の胸を小突いた。
「何の意味があるんだよ」
「教えてくれると思う?」
「むう」
冗談めかした口調ではあったが、シンにとっては死活問題だった。彼女自体にはうらみも何も無いが、その周りのような信者になりたくは無かった。
「何でそんなに嫌がるのかな」
「洗脳されてたまるか!」
「サングラス付けたら?」
「宇宙服でも借りたい気分だ」
「はは、そのまま飛んでっちゃえ」
実際の所、それで防御できるならこんな考えには至っていない。直接会うことなく済ませることができるなそれが一番だが、恐らくそれも彼らの狙いの一部であるのだろう。
「結局こき使われるのか」
「しょうがないよ。それでも何とかやってくしかないみたいだし」
どの道彼らは使われる立場だ。彼女たちの側に付いても現時点で勝ち目は無い。素直にいう事を聞いておくのが無難だった。
「自分をきっちり持てば大丈夫だよ」
「そうなるように願っとく」
結局大した結論を出すことも無く彼らはそこで別れた。ルークはキュラスやカインに詳細を聞く必要があるし、シンはシンでロイヤルナイツの面々に色々聞きたい事もあった。
「チャンスかもな」
自分の部屋へと戻りながらシンはこれからの展開を頭に浮かべ、不敵に微笑んだ。
「今日は来ないかと思いました」
夕日も沈みかけ薄暗くなった室内で、マリアはカインの姿を見つけて駆け寄った。誰もいれていなかったのだろうか、突然訪れたにも関わらず他の隊員の姿はどこにも無かった。
「明日、一つ終わらせる」
「一つ?」
カインの姿はいつもの制服ではなく、彼にしては珍しい黒のワイシャツにズボンというラフな服装。どこか悟りきった表情で口を開いた彼は、マリアの肩に手を置いてやさしく語りかけた。
「そして、始めるんだ」
「あなたの意思で?」
その瞳は今まで、数知れぬ者を従わせ、数知れぬ者に救いと、羨望と、希望を植え付け。
そしてその瞳はまた、かつてないほどの自信と、誇りと、意思を与え。
「そして終わらせる。全て」
「終われば、どうなるのですか?」
そして全てを終わらせるべく立ち上がる彼に、力を。
「何も変わらない。変わらないために、終わらせるんだ」
「信じていますから。あなたの望む道を」
見てきた景色はあまりに狭く、醜く、愚かで、情けない。
「ああ」
無意識に力が入り、結果彼の手は彼女の肩を強く掴んだ。
「あなたの力なら、きっと私と共に歩める」
そして彼女はその手をそっと上から触れ、微笑んだ。誰もが魅了され、結果、世界は生まれ変わった。彼女の力によって。
「道は、明日作る」
そして世界は何度でも生まれる。形など、彼らの知った事ではなかった。




