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6:妹?

「……それじゃあ、さっきの格好は、小説に出てくる敵の真似だったの?」

「そうなんだよ、真理恵。今度のボスは、ヘルクロウっていう大型のカラスで、その動きや鳴き声をシミュレーションしていたんだ」

「よかったぁ~。てっきり、お兄ちゃんがダークサイドに堕ちたかと思ったよ」


 そう言って、妹の真理恵はホッと胸を撫で下ろした。

 自室の隣にある真理恵の部屋。

 例の巨大カラスのコスプレを目撃された後、このままでは一生口を聞いてもらえなくなると急いで真理恵の部屋へ行き、扉をドンドン、ノックノック。

 五分くらいして、ようやくチラリと顔を覗かせた真理恵に、コトの事情を虚実を混ぜながら、というかほとんど嘘の説明。

 とっさに思いついた新キャラの真似なんて言い訳をしたが、無事に真理恵は納得してくれたようである。


「そうだよね。お兄ちゃんが、意味もなくあんな変な格好するわけないもんね」


 流れるような黒髪のサイドテールを揺らしながら、真理恵は腰に手を当て、うんうんとうなずく。


 真理恵は、4歳年下の小学六年生。

 小麦色の肌と天然ジト目、鼻のテーピングがチャームポイントのたまに憎らしいことはあるけど、概ね可愛い妹だ。

 最近、背がぐんぐん伸びてきて、兄としては嬉しいような悲しいような微妙な心持ち。


 脚も長くなったもんなぁ。

 なんて、感慨にふけりながら、デニムのショーパンから覗く健康的な脚を眺めていると、


「ねぇねぇ、お兄ちゃん。せっかく早く家に帰ってきたんだから、一緒にゲームしようよ。スマブラする? 今日の私は一味違うよっ!」


 真理恵が、自分の袖を引っ張って部屋へ引き入れようとする。

 しかし自分は、その誘いをやんわりお断り。


「悪りぃ、真理恵。今週中に新しい章の仕上げに入らなきゃいけないんだ」


 これは嘘ではなかった。

 このところ雑誌の取材などで忙しく、ネット小説の更新が滞っていたのだ。


「ええ~!? 久しぶりに一緒に遊べると思ったのに~!」

「ごめんごめん、また今度埋め合わせするからさ」

「う~、じゃあ。小説が完成したら、真っ先に読ませてね。何たって私は、お兄ちゃんのファン第一号なんだから!」

「おかのした」

「ひひひ、それではお兄ちゃんの可愛い可愛い妹から、執筆が捗る”おまじない”をしてあげよう。この前、ネットで見つけたんだ♪」

「は~? いいよ、そんなの」

「はいはい、恥ずかしがってないで、おでこを出してくださーい」


 そこまでグイグイ来られると、邪険にするわけにもいかず……。


「しゃーねーな」


 自分は、おでこを出そうと額に手を当て、はたと止まった。


 ……待てよ。なんか、今日の真理恵、やけに優しくないか?

 いつもだったら、「ほらほら、お兄ちゃん! 小説書いて書いて! ぼんやりしてると、あっという間に世間から忘れられちゃうよ!」みたいな感じで背中をバンバン叩いてくるのに、今日はゲームにも誘ってくるし、しかも執筆が捗るおまじないだと?


 ……まさか、アレックスに操られている?


 そうだ、学校では生徒をゾンビ化させたアレックスだから、人を操るのは朝飯前のはずだ。

 真理恵を操り、自分を殺害しようとしているに違いない。

 ということは、さっきのゲームの誘いも自分を陥れるための罠。

 おまじないというのも、自分を一気に異世界へ召喚するための禁じられし呪術の可能性大。


「あばば……!」


 衝撃の事実に気づいた自分は、思わず真理恵から距離をとった。


「? どうしたの、お兄ちゃん」

「その……やっぱ、いいよ。おまじないとか」

「ええええ!? ちょっと、今更何言ってんの!?」

「いや、ほんと……結構なので!」


 自分は、冷や汗をかきながらジリジリと後退。


「ちょ、もう何!? こうなったら、意地でもおまじないしてやる!」


 ジリジリと後退する自分に、真理恵はドスドスと床を鳴らしながら詰め寄ってくる。


「ぎゃああああ、嫌だ! 異世界に行きたくないいい!」


 とうとう自分は、駆け足で妹から逃げ出した。

「あ、こら! 待て!」という真理恵の声を無視して、全速力で階段へ向かう。

 しかし、次の瞬間!


 ズル!


 階段の前で見事に足を滑らせ、そのまま二階から一階までダダダダダダダと落下!

 頭を強打し、気を失ったが目覚めたときには例の川ではなく、自室で心配そうな顔をした真理恵によって膝枕されていたのだが、あれ? これなんてエロゲ?

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