4:ゾンビ?
廊下は、授業中のため人の姿はない。
バナナの皮などが落ちてないか注意しながら、自分は廊下を走る。
そして、階段近くにあるトイレの前に差し掛かった時だった。
「うあぁぁぁぁ……」
突然、トイレから男子生徒が二人、よろよろと出てきた。
顔色は悪く、口からはヨダレを垂らしている。
自分には、すぐにその二人がアレックスに操られたゾンビであることがわかった。
アレックスは、異世界に存在する得体の知れないウイルスを撒いて生徒をゾンビ化し、自分を襲わせようとしているのだ。
「うごぁぁぁぁ……!」
「おおおおお!」
ゾンビ生徒が二体、自分めがけて近づいてくる。
「くっ……!」
自分は、一体目のゾンビをスライディングでかわすと、二体目のゾンビの顔を通学カバンで殴りつけ撃退し、なんとか包囲網を突破。
そのまま階段まで走り、二段飛ばしで階段を駆け下りると、その先にある下駄箱まで一気に到達した。
さて、靴を履き換えようと下駄箱に手を伸ばした、その時。
ぐらりっ。
突然、地面が揺れ、その拍子に下駄箱がゆっくりこちらへ倒れてきた。
「どわわわわわ!」
自分は、とっさに学校玄関めがけて走り出し、次の瞬間ドドドドドドーン!!
下駄箱は、ドミノだおしに倒れ、自分は玄関から埃や粉塵とともに転がり出た。
アレックスのやつ、本気だ!
横倒しの下駄箱を見て、自分は一刻も早く学校を出なければと決心。
学校指定の上履きサンダルのまま走りだし、校門を目指して近道をしようとグラウンドに足を踏み入れた。すると、
ドドドドドドド!
ん? なんの音?
ちらりと横見ると目に飛び込んできたのは、オーマイガッ!
目を血走らせながら自分の方へ向かってくる馬の群れだった。
「大変だ! 馬術部の馬が脱走した!!」
馬のはるか後方で、学校の用務員が叫んだ。
そんな悲痛な叫びをかき消すように地面をヒズメで鳴らしながら、馬たちはこちらへドドドドドドと向かってくる。
「これもアレックスの仕業か!?」
自分は生まれてからこれほど本気で走ったことがあるだろうか、というくらいの全力疾走で校門を目指す。
「おーい、こっちだ!!」
校門の前で体育教師の岡崎が叫んだ!
向かってくる馬を学校の外に出さないよう鉄柵を閉めようとしてる。
それを見た自分は、カートゥーンキャラクターのように足をくるくる回す勢いで加速。
鉄柵が閉まるギリギリで校門を駆け抜けた。
それと同時に、ガシャン!!
岡崎は鉄柵をしめ、接近してくる暴れ馬めがけて、袋に入った人参を投げつけた。
そんなもので馬たちを止められるのかと思ったが、あっという間に馬はスピードを緩めておとなしくなり、地面に落ちた人参をパクパクし始める。
それを見た自分は、校門の前に座り込んだ。
「助かった……」
そう呟いた瞬間、
「危ない!」
鉄柵の鍵に手をかけながら、岡崎が叫んだ。
ゴオオオオオオオ!
けたたましいエンジン音。
見ると大型のトラックが車道をはみ出し、自分のすぐ目の前に迫っていた。
「くっ……!」
自分はとっさに横に転がってトラックを回避。
自分を轢き殺す勢いだったトラックは、そのままスピードを緩めることなく電柱に衝突、活動停止。
無残にヘコんだフロント部分から黒煙をあげるトラックは、何処となく自分のラノベで主人公が異世界に転移する原因を作ったトラックに似ていた。
それを見ながら、自分は言った。
「そんなに俺を異世界に連れて行きたいか?」
これが漫画やアニメなら、ここでタイトルロゴ入りのOPが流れるだろう。
なぜなら、この日から自分と自分を異世界に引きずり込もうとする者たちとの壮絶な戦いが始まったからである。