第一層・スキルと休息
現れたゴブリンは、今まで見たことのない赤いゴブリンが混ざった5体パーティー。
緑のゴブリンでレベルが15、赤のゴブリンはレベルが20。
赤いゴブリンが先頭で後ろに緑が付き歩いている事から見て上下関係がしっかりしていると想像できた。
この武器の威力は自分の基本ステータスに左右されないから、レベル差が10あったところで、頭を打ち抜けば即死させることができる。
ただ、接近戦になった場合、自分の筋力値、防御値や武器の筋力ボーナスなど、ステータスに左右される戦い方になる。
ここまで戦力差があると独断で戦闘をする訳にもいかず、メンバーに話しかける。
「敵を確認、5体PT、レベル差最大13、攻撃しても大丈夫か?」
雑魚戦を行っていた時簡潔に分かり易く伝えるにはどう言えばいいか考えた結果、敵の数、レベル差を伝える事である。
更に、雑魚戦が終わった時点で、敵を即死させる方法があるという事は確認済み。
それがあるから出来る戦いもある。
「最低3体仕留めてくれれば残りは数で押し切るよ」
と、クロウからのOKを貰い、銃を構える。
距離約2000m、風無し、障害物無し、敵の移動有り。
弾のサイズは2㎝。
速度を限界まで上げて、敵の移動方向の方向に1㎝照準をずらし、範囲に入るのを待つ。
そこら辺の調整もある程度銃のスコープを覗くと指示されている。
流石に現実で狩りをするときとは状況も違い細かい事は全く分からないから、銃の指示にしたがって引き金を引く。
赤ゴブリンに側頭部の死角から来た不意の攻撃を避けられるほどの技量は流石に無かったらしく、頭部中心は少し外したものの、3分の1程を吹き飛ばし撃破。
PTのリーダーを潰したことで、動揺して固まった敵を逃さずロックし、打ち抜く。
結果的に、赤ゴブリンと、立ち尽くしていた緑を2体、無謀にも走って向かってきた1体を打ち抜き戦闘は終わった。
最後の1体は、逃亡。
このゲームにおける敵の逃亡は情報が他の敵にも広がるため、阻止するのが普通だが、森林が近かったためそこに逃げられ見事に弾が当たらなかった。
運が悪ければ、即新しい敵がここに向かってくることになる。
が、今の戦闘で赤ゴブリンを撃破し、特殊スキルと獲得スキルを手に入れた。
特殊スキルや獲得スキルは、レベルや職業の熟練度、ある条件をクリアすると取得できるらしい。
俺の場合、特殊スキルで『狙撃者』、『狙撃視野Ⅰ』を、獲得スキルで『鬼退治』を手に入れた。
スキル内容は
『狙撃者』
敵との距離500m以上かつ敵に見つかっていない状態だと敵に居場所、気配、弾が見つかりにくくなる。
『狙撃視野Ⅰ』
見える距離、範囲が増える。
『鬼退治』
鬼系の敵に与えるダメージの増加。
(獲得時クリアした条件、レッドゴブリンの討伐者)
という感じらしい。
今獲得した3つのスキルは、全て常時発動らしくサイトを覗いて見える距離と範囲が少し長く広くなった。
なぜ視野が広くなるのか理屈は全く分からないけど……
それと、獲得アイテムの中に、剣があったので、とりあえずクロウに渡し誰が使うか決めてもらう事にした。
まあ、戦闘スタイルから見て剣を使うのはクロウくらいだけど。
レッドゴブリンとの一戦後、ある程度時間が経っても何も現れなかったため、現実世界での飲食を求めてログアウトしようという事になり、アイアンメイデンから一時的に退出した……
〖save〗
PT
クロウ……lv16 OUT
ライトア…lv16 OUT
レッド……lv16 OUT
レイ………lv16 OUT
エルシス…lv19 OUT
ミア………lv18 OUT
レア………lv18 OUT
ヴィラン…lv23 OUT
〖save〗
朝の8時にゲームが始まり、既に6時間が経っていた。
それでも尚、ゲームから一度も帰ってきていないプレイヤーが大半だった。
それほど、リアルとほぼ同じ死生観があり且つファンタジー世界という事でかなり没入しているのだろう。
とはいえ、飲まず食わずだと必ず限界が来るし、体調管理もしなければならない。
風邪をひいてもこの施設内じゃ薬も何もない。
あるのは、トイレと自販機、弁当屋くらいだ。
ちゃんと食べて、リアルでの体調を保っておかないと、いざという時に強制ログアウトさせられる。
強制ログアウトに関しては、デメリットしかないと噂で聞いた。
曰く、自身の全てのデータが初期化される、という事だ。
実際なった人が居るかどうか分からないけど、噂がある以上、体調管理をしっかりしてそうならないようにするしかない。
とは言ったところで、今日が終われば、此処に通う事が無くなる可能性があるわけで、最悪このゲームをやらなくなるかもしれない。
今日限定の一日貸切りで明日からはまた今までと同じような生活が始まる。
有休を使ってここまで来た人や、今後こんな機会はないだろうと生活費を削って来た人。
明日になれば帰らなければならない人、明日もここで過ごそうと思っている人、ここから出る事が無い人。
何にせよ、来たからには帰らなければならない。
帰ってしまえば、この機体に触れる事はほぼ無いだろうし、あったとしても何時になるか分からない。
と一人黙々と昼食を摂りながら考えていた。
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いよいよ書き方とか文章とか不安になって来た。