ゲーム起動
2093年5月12日
世界初のフルダイブを一般人が体験する日が来た。
ゲームセンターがある街では朝から人だかり。
チケット当選者に、マスコミ。
野次馬に、おこぼれ狙い。
サービス初日という事で全機同時起動することになっている。
そのことで、チケット当選者は開館2時間前の6時までに身分証明書を提示しチケット代を支払い、チケットとゲームディスクを受け取って入場し準備を始める。
ちなみにプレミアムチケット当選者はチケット代のみでゲームディスクも貰えることになっている。
そして、6時を過ぎた時点で当選者のチケット期限は切れ、余った席はおこぼれ狙いの人達に抽選で配布される。
所謂、転売防止のための制度だ。
現地時間6時ジャスト、プレミア当選者29712人が遅刻せずに現地にたどり着いた。
残りの288人分はおこぼれ狙いの計1873人から抽選されることになり、プログラムで即刻番号を出す。
譲渡対策で抽選参加者が椅子に座らされ、隣との距離は手を伸ばさないと届かない距離。
更に、抽選番号を宣言されてから十秒以内に手を挙げなかった場合、不当選となり再度別の番号を宣言するシステム。
その後一時間で抽選は終わり全員がゲームを起動する準備が進められている。
おこぼれ狙いの当選者の中にマスコミ関係者が居るらしく喜んで中継しているグループがある。
当選前に打ち合わせをしたのかどうかは分からないが何かしらの方法で中継するのだろう。
ゲーム内で起きていることはゲーム内に飛んでいるカメラキャラが常に動画として配信出来るようになっているらしいし配信者にとっては最高な機能だろう。
まあ、うまく機能するかは開発チーム『神の卵』の技量次第ってことかな。
ゲーム起動中でも安全にバグ修正ができるって言ってたから、もし起動時に映らなくても数時間もすれば映るようになるのだろう。
まあ、開発協力のおかげで200枠の優先抽選を許可してくれた上にその社内抽選に当選してこのCocoon館に居る私にはおこぼれ抽選がどんな感じなのか目で見ただけでしか判断できないけど。
にしても、今まで社内でもゲームの内容は噂で知っていてもプログラムとシステムは『神の卵』だけで作ってたからどんな感じに仕上がったのか誰も知らないんだよね……
だから、社員が機体制作の協力を理由にやや脅迫気味で内容を知る権利があるだろとか言って社長その他を言いくるめて内容を聞いたって話だけど、ホントかどうかは当事者しか知らないしこれからプレイする以上興味もない。
にしても、社員6000人で、当選枠200のうち当選したのは運が良かった。
と考えながら、当選番号と同じ番号の機体の場所に着き、機体の中に入り、中で流れる会社で何度も聞かされたコクーンの使い方を聞き流し、7時30分まで待機する。
待機中のうちに椅子や体の異常を感知するデバイスの取り付けを行い、その後でゲームを起動しユーザーの初期設定を行い8時にサーバーがオープンされる。
それがこのゲームの始まり。
完成品を知っているのは『神の卵』だけ。
そのチーム所属していた友人は、こう言っていた。
「作ってたのはクエストや戦闘、アイテム、敵などを思いつく限りすべてプログラム化していただけだから。」
という、そのせいで飽き飽きした一部の人から暴動が起きかけたらしいけど……
というわけで、コクーンを起動してゲームを読み込み、初期設定を打ち込んでいく。
体格などは機械が勝手に現実と同じように設定してくれる、名前は各自思い思いの物を。
職種もあるらしく職種欄を見て自分に合ったものを探した。
相当細かく決められていて、職種に合った体格まで記載されている。
戦士、暗殺者、ナイト、ビショップ、ウィザード。
左から順に
『戦士・身長170以上が適任、基本剣と盾を持って戦闘する』
『暗殺者・身長150前後だと相手、敵に見つかりにくく適任、ダガーを持って背後から攻撃する』
『ナイト・体格問わず、基本は剣と盾を持って戦うが、その限りではない戦士との差はステータスが守備寄りになる』
『ビショップ・身長160以下が適任、後衛で仲間をサポートするためできる限り見つからないように戦闘に参加する』
『ウィザード・身長問わず、体格細めが適任、守備を上げる事が出来ず撃たれ弱いため体重が軽い人の方が攻撃を避けやすい』
とはいえ、ベータも何も行われていないので、どういう風に動くのか誰も知らない。
ふと、右上に表示された残り時間に目が行きこれが8時に合わせられていると知った。
8時になると強制的に職種が選ばれゲーム内へと転送されるのだろうか。
それはともかく、名前と職種を選びゲーム世界への扉を開いた。