過去の後遺症
休みボケほど恐ろしいものはないなぁ
吉野は下川と李の会話や他の職員の電話対応の音や世間話に耳を傾けないで夢の後遺症の頭痛と1人格闘しながら夢の内容を忘れない内にノートに書き込んだ。
「ええ加減にしてよ。こっちやって忙しいのにつらいわ」
一人文句を言いながらもう一つの後遺症であるある事件の内容が鮮明に蘇ってくる事とも格闘していた。
「なんで蘇ってくるかな」
それは吉野が大学四年、最後の春休みであった。スキーの武者修業を行うため長野へ行き
いよいよ奈良に帰るときであった。
新幹線に乗って帰るためターミナルから発車する直通バスに乗って土産物の温泉饅頭や野沢菜漬けを整理したりして発車を待った。発車するまでお宿の女将さんがずっと吉野のいる席に向かって暖かな視線をおくっていた。
「女将さん。そこまでせんでもええのに」
しかし、女将さんがふと吉野に視線を合わせずバスの中の他の乗客に目線を送った。
吉野も気がつき女将さんが目線を送った乗客に自分も目線を送った。
紺のブルゾン、深くかぶった帽子、薄い灰色のズボン。どことなくいそうなおじさんであったが何かが違った。
(この人、なんで震えてるの。それに片手だけがずっと上着に隠したままやし。)
発車するまで女将さんと目線を送りあいながら無事に長野駅まで着くか少し不安になっていた。
(なんか持病でも持ってるのかなあの人)
他の乗客も同様におじさんを不気味に思った
出発前に車掌がおじさんに何回も気を遣っていたが何度も何度も
(大丈夫です。大丈夫です。だいじょうぶです。だいじょうぶです。ダイジョウブデス。)
と繰り返していただけであった。
バスが出発時して20分経った頃、丁度赤信号になったときだ。
男は運転席に向かい車掌が振り向いたときに刃物を突き立てた。正確に言えば、他の乗客にも見える様にわざと見せつけた。
「おい!長野駅まで行かず東京へ行け。これは嘘じゃない。本気だ。下手な動きをしてみろ。一人ずつ殺してやるからな!」
最初は誰もが半信半疑であったが次第に自分たちが置かれた状況に気がつきパニックをおこしそうになっていた。
吉野も不安になり生きた心地がしなかった。
バスの車掌が犯人の気がそれた事を上手く利用しバスの本社に非常時のメッセージを送っていた。
男は何度もバスの中を行き来し油断させない様にしていった。
(なんでこんな事に。)
しかし、犯人の男は乗客に険しい視線を送り続けいつ誰がやられるかわからない状況に成っていた。
バスが高速に乗り一つ目のインターチェンジを過ぎた頃前の車がバスを誘導する様に併走してきた。警察の車と考えたら乗客達には安堵の色が見えた。
しかし男は「前の車をぬかせ」と脅迫してきた。
最初は断っていた車掌も首ともに刃物を突き立てられ渋々車を追い越していった。
嗚呼と声が漏れたとき男は乗客を見渡し「警察を呼んだ奴がいる」そう呟き、全員の携帯を取り上げ履歴を確認する
したが残っておらずさらに気が立っていく。
1番後ろの席に行くと男は黙って誰かと話をし東京に着くまでの間ずっと男は運転席近く補助席に座り何度も他の乗客に目を向けた。
東京に着いたのは夕方そこでは多くの警官隊が待ち構え犯人と交渉していた。
そこで、乗客の大半を下す約束をした。
ドアが開き一人ずつ一人ずつ下車していき、残り車掌、犯人を合わせ5人に成ってようやく吉野が降りる順番が来たが犯人の男が目の前に現れ下ろさせなかった。
「お嬢さん、ここから降ろさせはしない。悪いが戻ってもらう」
「お前らも残れ!」
まだバスの中に残っていた二人の乗客にもそう言うと、車掌を呼び戻し警察の制止を振り切り再びバスは出発したのだ。
犯人は吉野ともう一人の乗客に自分たちの住む場所を言わせると次は「大阪だ、大阪に行け」と、命令させバスは大阪に向けて走り出した。その間、目隠しをさせられ
親指を結束バンドを縛り何度をバスを行き来した。そして、誰かと話をし犯人は運転席近くに戻った。気を抜いた途端、吉野の右頬を誰かが触ったのだ。
(だれ!)
耳元で「可愛い子だね。横の女とは違う。君が良い。君が欲しいな。可愛い子可愛い子。ねぇこんな良い思い出を残すために腕に印を残しても良いかな?良いよね?」
そう言うと左腕の内側に何か冷たいものが当たった。その瞬間に腕に激痛が走り声にならない叫びを出した。
「できたできた、思い出の印嬉しいなぁ。名前を教えて君のことが知りたい。」
右頬を何度も撫でながら男は名前を教える様に強要した
「吉野…優子…」
「吉野優子。覚えておくね優子ちゃん。教えてくれたお礼にキスをしてあげるよ。」
その後何秒間か長い長いキスをさせられた。
大阪に着く間犯人と男は立ち替りにやってきてバスを見渡し、男が来たときは吉野にキスを何度を何度を行い、吉野は気が狂いそうになっていた。
明け方に大阪に着き、警官隊が突入して犯人はその後自殺し、車掌と人質の無事が解決したがもう一人の犯人は結局捕まらなかった。
その事を一通り思い出すの体が震え出しはぁはぁと呼吸困難に陥る。
そんな様子を見て、浅野が声をかけてくれた
「大丈夫?少し休むかい?」
「大丈夫です。少ししたら治るので」
「余り、無理しないで」
そう言うと、何分間がそばで見守ってくれている。
(優しい人やな)
そう考えていた同時刻、とある高層マンションの一室で一人の男がベッドから目を覚ましにこやほほえんだ
「ようやく会えるね優子ちゃん。早く早く、会いたいね。大好きだよ優子ちゃん」
吉野の過去に今回触れました。
自分で事件の内容を考えていて
つじつまがあってない節があるので
これいけるかなと思ったんですけどなんとかいけました。
とうとう奴が登場します。
「マタセテゴメンネ。ムカエニイクネ」