スナイパーと幻影
レポートしないといけないのに何もできていない。
それなのにこんなのやっていいのか私?
彼らの茶番劇が終わる5分ほど前、警視庁庁舎より離れたところにある射撃場ではスナイパーが1人遠くの的に向かい黙々と射撃演習を、行っていた。
硝煙の匂い
張り詰めた空気
上半身のみを描かれている的
これらの環境下で男は精神を統一させトリガーに指を添えた。
バァァァン
と響く射撃音、人間の頭をもした絵にきちんと撃ち抜かれた跡、その的には点数が描かれており、高得点の円を狙って撃っていたはずだが男は自分納得していなかったのだ。
「まだまだ、この程度ではあいつを殺すことは出来ないな。まだ、何かが足りないな」
そう呟くと再び、スコープを覗き的の頭を狙う。
「あの時、お前を殺しておけば彼女は苦しまずに済んだのに。俺の前に現れるお前はなんだ」
男がスコープ越しに見た先はまとではなく幻影の如く現れたとある男の姿であった。
その幻影が男を見てニヤリと笑った、その瞬間に男は全身の毛が逆立つほどに、殺意に満ち溢れた。男はすぐにトリガーに指を添えて笑っていた。
「お前うざいよ。いい加減消えろよなぁ」
なぁ!
罵声を浴びせると同時に幻影の頭に向かって撃ち抜いたがその幻影はゆらゆらと消えてなくなりただ広い射撃場、頭の部分を撃ち抜いた跡、荒い息の音しか聞こえなかった。
男は再び正気を取り戻し、額を触ると大量の汗が手についていた。
「大人気ないな俺も、ははは」
呆れた笑い声が響き渡り、虚しさに打ちひしがれていると男の人隣に黒服の隊員が立っていた。
「首尾はどうだ?島津。うまくいってるか」
「いえ、それほどでもありませんよ。副長」
副長と言われる男は床に寝そべる島津に向かって話を続けた。
「どうだ?SATを離れるのは、寂しいか?それとも…」
「寂しいに決まっているじゃないですか。福岡で腕を磨いて、今ここで試し撃ちをして。なんだかね、家族の元から巣立つ感覚で」
「お前もガキじゃあるまいし、まぁ俺も寂しいよ。ところでまだ、彼女の仇を討とうとしているのか」
「そう見えますか?」
「お前の方には、魑魅魍魎が肩にへばり憑いている。SATはあまり出番がないがその隊員が実際の現場でどのくらい
の力を発揮するか、それはわからん。だが」
「だが? なんですか?」
「この、指数見てもそう。お前の撃方もそうだがお前は他の隊員とは違う点がある。なんだかわかるか」
島津は一瞬考えた跡首を捻った
「わかりません。一体なんでしょうか」
「殺意だ。他の隊員とお前は覚える殺意の質が違う。他の隊員は、悪党は許さないという揺るぎない信念のもとで生まれる殺意、だがおまえは最初から抹殺する気でいる、つまりお前など殺してもいいむしろ死んで詫びろ。そんなものさ。」
わかりにくい説明に困惑する島津は頭にたくさんのはてなマークをうかべていた。
「分かりやすく言うとお前は、殺人鬼と同じだ。ライフルを取った瞬間にお前は理性を忘れてしまいそして…後はわかるな」
島津には思い当たる節があったが否定したかった。
ついさっきまで行っていた演習時も笑みを浮かべ、いつの日か幻影の本当の姿、苦しめ続けている男にこの手でとどめを刺すことをもう1人の自分は待ち遠しく感じ、それまでの過程を子供の様にはしゃぎ楽しみを取っている様な感覚をだ。
しかし、否定できなかったのだ。それが本当の自分であったからだ。
島津は立ち上がり、副長と呼ばれる男に反抗した。
「それでも、自分は我を忘れません。」
ウンウンと頷くと副長は島津の肩を軽く叩いた。
「幻影に、負けるなよ。お前には仲間がいるそれに、守るべき人がいる。忘れるなよお前は1人じゃない。捜査一課でもがんばれよ。島津の隆久、色男ボーイ。」
「自分、色男ではないですよ。」
「お前みたいなハンサム、食われるぞ。いろんな奴に」
「え?例えば」
「男に…ゲ○とかゲ○とかゲイ○とか」
「最後隠せてないですよ。それに自分は彼女にゾッコンなんで心配ないと思います」
「橘には気おつけろ。奴はやり手だ」
「ゲ○ですか?」
「奴はとんでもない男だ。いろんな意味で」
島津は捜査一課でも活躍できるか不安になっていったのである。
しかし、そんな不安も3時間後には吹っ切れているのは言うまでもない。
島津隆久
鹿児島生まれ鹿児島育ちという設定
過去に彼女になんらかの事件に巻き込まれその犯人を追う、しかしその行動は結局殺意に生まれ変わってしまった
巡査部長
三馬鹿とは仲良くしていく予定です
浅野とは、大学の先輩後輩という設定にしていく予定です。
さて、島津の見ている幻影と吉野の夢に出てきた何者かは同一人物なのかそれとも?
下川の過去にも幻影が関わっていきます
「サァ、アソボウヨ。ユウコチャン」