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逃げた先の世界02

「凪くんが助手になったった所で、もう少しおしゃべりをしようか」

「どんなお話ですか?」

「さぁ問題だ。凪くん。私の家は森の中だ。でも、林の中にあったのはなぜだろうな?」

 顎に手をやり、天井を見る。そういえばどこかで見たのか、はたまた聞いたのは思い出せないけど、面白いな。と感じたのを思い出す。

「そうえば、宇宙の裏側にはもう一つ世界がある。だなんて聞いた覚えがあります」

「ほう、科学もあなどれないね。この世界には絶対、表と裏がある。それは、私だけではなく、凪くんもそうだ」

 どうも、的を得ない言葉。僅かな言葉から答えを探して欲しいと言われているようにも感じる。

「鏡のような世界がもう一つある。って答えでいいんですか?」

 アレセイアさんは満足げに、頷いてカップを置く。

「優秀な助手君には100点をあげよう。ああ、世界はもう一つ存在する。ある以上、否定はしない」

 私はね。と自分は肯定する意思を見せ言葉を続ける。

「魔法社会は科学を否定して、機械を文化の礎とした社会は、魔法を否定する。そう、表と裏のような関係さ。さて、質問はあるかい?」

 うーんと首を捻ってみせる。

「そうですね。もともと世界は二つあったのか? っていうのが今は気になります」

「私も、あくまで言伝え程度しかしらないが、最初に理を引いたのはのは魔法使いだ。と聞いているね」

 魔女の世界だと思っていた。魔女でも男性を指す場合もあるが、一般的には魔法使いは魔女の逆で男で魔法を使える者指す。

「その顔はご尤もだね」

 俺は、余程不思議そうな顔をしていたのだろう。

「魔女以外に魔法は扱えないものだと思っていましたから」

「なるほど、なるほど。そもそも魔力とは、世界に干渉するための力なんだよ。女性だろうと男性だろうとその力は持ち合わせている」

「それじゃ俺にも扱おうと思えば使えるんですか?」

「勿論。だけど、教える事は無い。そう思っていて欲しい」

 そういうのはとうの昔に卒業したけど、あると言われれば使ってみたい。

「すまない。何も意地悪でそういっているんじゃないんだ。さっきも言ったが魔力とは、世界に干渉する力だ。人は大小の差はあれど皆持ち合わせている。ただ、魔力という物を感じる事ができずにその操作をする事ができないだけ。と言えてしまえば楽なのだろうけどね。摂理の枠を破って扱う魔術が無秩序に扱われれば、凪君の世界でいうミサイルをもった人間が沢山いるのと変わらない。そういえば少しは分かってもらえるだろうか?」

「この日本じゃ特別治安もいいですからね」 

「うん。だから扱うものを此方が選んでいる。使わせていないというべきなのかもしれないな。魔法を皆が皆使えるようになれば、火をおこすのに火種はいらない」

 不思議な文字が浮き上がると、それが燃え、小さな火が浮いている。

「これが魔法。信じてもらえないと手品でしかないのだけどね。鍛錬を積めば人を簡単に殺せるほどの火だって出す事も出来る。最終的な結論を話そう。最高位の魔女、もしくは、魔法使いがいれば核兵器と同等、いや、それよりも広範囲で酷い魔法を使う事も出来る。それを恐れているんだよ、私達は。化学では自然の摂理に逆らう事ができない。でも、我々魔女は摂理に干渉する魔力を操る。現状では魔を扱う者の方が圧倒的に強い。これが凪君に魔法を教えてあげれない理由だ。安易に教えてはいけない、本来なら過ぎた力なんだよ」

 憧れの念は何処か捨てられないけど、安易に扱うべきじゃない、そして危険だというのは理解出来る。

「いえ、子供頃思っていた空想がそこにあってただ、扱ってみたいだなんて思っただけです」

 だからこそ、何か誤魔化すわけでもなく、素直な感想が出たんだろう。

「凪くんのようにただ、そうあれば、この世界はもっと違ったものになっただろうね。欲と力。手にしたら、使いたくなって仕方がないのが人ってやつさ。ただ純粋に、タメになる魔法なら問題はないのだけどね」

 これも、尤もな話だ。教えてもらえれば誰でも扱えるようになるのが魔法なのだろう。

 それがアレセイアさんの言うとおり、善意で使われるのではなく、悪意で扱われれば、犯罪は実感出来る程に増えるのは、目に見えている。

 となるとだ……

「神々の戦いみたいのは案外、魔法使い同士の戦いだたったりするんですか?」

 何気ない一言。ぶっちゃければ、ただたんに思いついたにしかすぎない言葉。

「鋭いね、凪君は。世界を我が物とせんと魔法使いや魔女が戦争していた時期があってね。この世に残っているキミ達世界の魔術なんかは、その、残り香なんだよ。まぁ、いくら手順があっていようと、肝心の魔力操作が出来ないのであれば、子供のごっこ遊びと変わらない。フサルクなんて言葉が残っているのは実際にあるし、あったから。でも扱えない。そのように出来ているんだ」

 分かったような、分からないような……

 今の話を聞いて言えることは一つ。魔法を間違った使い方をしてはいけない。くらいなものだ。

「難しい顔をしているね。色々と思うところはあるだろうけど、今日はもう寝よう。明日から凪君にも働いてもらわないといけない。私は少し行く所があるから先に寝ててほしい」

「はい」 

「うん。それじゃおやすみ」

 起きた時に使っていたベッドを使わしてもらい、横になる。

 魔女に出会った。友達ですら笑って信じないだろう……

 次にあったら少しでも話しておくべきかな。

 少し思考をしただけで眠気が襲ってくる。久しぶりの安堵感に包まれ、俺は意識をそこで閉じる。


 

 翌日の朝だ。事もあろうに、俺は雇用主であるアレセイアさんに起こされる所から始まった。

「ホント、すいません……」

「いや、構わないよ。疲れていただろうし、徐々に慣れればいいさ」

 緊張の糸を緩められた結果、としてみるべきなんだろうな。それで寝坊じゃ世話ないけど。

「顔を洗ってくるといい。そうしたら、朝ご飯にしよう」

 手早く顔を洗いテーブルに着くと朝ご飯の用意までされている。

「早速だが、今日から仕事だ。助手君。食べながらでも聞いてほしい」  

「はい、今日は何を?」

「手紙を渡しに行こうと思う」

 このご時世に手紙なんてあまりにも古すぎる。離れた相手に文字を送りたいのなら、共有のチャットルームアプリ一つあれば事足りるのだから。

「変だ。と言いたげな顔だね」

「ええ、まぁ」

「渡し終えれば、分かる。それが答えだ。それまで待ってくれるかい?」

「分かりました。聞いてもいいか判らないのですが、誰が、誰宛に出したのか聞いても?」

 尤もな質問だな。と手紙を俺に渡す。

「宛先が書いていない……」

「そういう物なのだからね」

「うわっ。何か出た」

 びっくりして飛び引く。恐る恐る手紙をもう一度見ると、そこには文字が浮いていて、文字は日本語でなければ、英語でもない。

「ふむ。なるほどなるほど。すまない。これは魔女に伝わる言葉でね。考古学者でも余程の時間を費やさなければ解読は不可能」

「手紙にはなんと?」 

「話してもいいが、実際に見たたほうがいいだろう。今日の凪君のお仕事は私の仕事を見る事だ」

 さぁ、帽子を持ってきてくれ。とアレセイアさんは声をかけると玄関へ向かう。

 家を出て、10分で街へとでてしまう。そう、ありえなんだ。林は直ぐに抜けるにしてもだ、徒歩なら最低でも、30分は掛かるであろう距離を半分以下にして、街へとたどり着く。

「この森は世界に繋がっている。いうなれば、繋がっている穴のようなものがあるんだ。出てきた場所も、助手君の入った林ではなかっただろう?」

 それだけじゃない。ハロウィンでもないのに、この格好を見ても不思議に思ったりしている様に見えないないし、誰も魔女、アレセイアさんを見向きもしない。

 逆に辺りを見回している俺の方が変人に見えるほどだ。

「あの」

 言葉を最後まで言い切らずにアレセイアさんは言葉にする。

「不思議かい? 私が何故、この街に相応しくない格好をしているのに、人に見向きもされないかが」

 コクリと頷く。

「認識阻害。周りから見ればそれが変に見えないんだ。良くある都合のいい魔法さ。物語にもよくあるだろう?」

 さも当たり前のように言う。漫画やアニメはそういう物語だ。でも、ここはリアル世界なわけで。

「分からないですけど、分かりました」

「うん。今はそれでいい。凪君の今日のお仕事は魔女とはなんなりやと言う事を感じてもらうのが一番のお仕事なんだ。さぁ、ここが今日の届け先だ」 

 街の外れにあるお屋敷。日本でこれだけの敷地と家を建てたら数億はくだらないはずで、出てくる感想もまた単調になるほど。

「また凄い所が届け先ですね」

「うん、そうだね。きっと裕福な家なのだろう。さぁ、お仕事をしようか」

「内容をきいても?」

「これから起こることに対して。手紙を渡す相手は女の子なのだけれど、彼女は、深く傷つく。その事前ケアが初のお仕事だ。質問はあるかい?」

 まるで、これから起きる事を予知しているような言い方で、ふと、こう返していた。

「魔女は、未来すら、見据える事ができるんですか?」

「少し話がそれているが答えよう。占星術があるといったのを覚えているかい?」

 頷き、返答に満足すると、こう返事を返す。

「その延長線にあるものだね。当たる確立は大きい。だが、変える事も出来る未来だ」

「その、起きてしまうだろう未来に備えて、準備を行うということですね」 

「うん。そうだ。起こる事については知らないほうがいい。知ったら対等に接するのが難しくなるからね。ありのままの凪君でいなさい」

「わかりました」

「それじゃ、手紙の渡し人に会おうか」

 そう答えると、魔法を使うでもなく、普通にチャイムを鳴らし始めるアレセイアさん。

「え!? 普通に訊ねるんですか!?」

 少しオバーリアクション気味だったのは認めるけど、魔女が、魔法を使えるのに、チャイムって……

「何を驚いているんだい? 私だって他人の家を訪ねる時くらい普通に訪ねる」

「え? いや、そうですよね」

 想像と180度違ったんだ。このくらいの驚きは認めて欲しい。

 そんな事を考えているとインターホンから声が聞こえる。

「どちら様ですか?」

「私はキミに手紙を渡しに来た。開けてもらえるかな?」

「はい。今すぐに」

 短いあのやりとりで、すぐさま玄関の戸が開く。

「催眠術の一種だ。さぁ、行こう」

 結局、魔法使うのかよ。まぁね。魔女です。お届けものを届けに来ました。だなんて言ってもただの不審者な訳で。でも、納得いかない。

 部屋に通されると、客間へ通される。みたところ、両親も不在のようだ。

 お茶を持ってきた彼女はソファーへ座ると、何かを思い出したかのように、俺達を見ている。それも、覚えが無いようで、首を捻り、おずおすとこう言った。

「あの、どちら様でしたっけ?」

「私は魔女だ。キミに会いに来た」

 余程、度胸が据わっているのだろうか? さっきの発言からも、俺らが誰か分からないにもかかわらず、冷静に、貴方おかしな人? とでも言いたげな顔をしている。

「信じろって言われても、無理、よね?」

 やっぱり困惑の表情を浮かべる届け主。

「それも尤もだ。だから、少し力を見せてあげよう」

「手品でも、見せてくれるの?」

「びっくりするような魔法だ」

 アレセイアさんの姿をみればまぁ、変な人だろう。そんな人が更に魔法だとか言い始めてしまっては、届け主の溜息も納得できる。

 だからこそ……

 さっきから、俺はひやひやしながら行方へ見守っている。だってね、目の前の子が悲鳴一つでもあげれば俺らはいきなり警察の厄介になるわけで。

「キミのお左腕には、大きな傷があるだろう? 一度は動かなくなってしまった程の大きな傷だ」

「え? なんで、名前も知らない貴女がそんな事を」

 そう、女の子が答えると満足そうに頷く。

「それを、医学ではなく、この私、魔女が綺麗に直して見せよう」

 ほら、腕を貸してごらんと、声をかけると、女の子は裾を捲って腕を見せる。

 20cmはあるだろう、痛々しい傷痕が綺麗な腕に主張をしている。

「女の子なのに、これだけの傷があっては、さぞ悩んだだろうね」

 慰めの言葉は時に、人の心を抉る。腕の傷を見ているアレセイアさんは気づいていないけど、大きなお世話だと、目が語っている。

「腕を、触らせてもらうよ」

 ゆっくりと、傷周辺を手に持つと女の子は「ひっ」と、怯えた声を上げて、手を引いてしまう。

「すまない。強く握ったつもりは無かったのだけどね」

 傷のある腕を逆の手で撫でている。俺にも、強引に、という様には見えなかった。

「ごめんなさい。ちょっと、びっくりしただけで」

 バツがわるそうに、目を逸らすと、力ない声で謝っている。びっくりしたというだけで、あんなに過剰な反応を普通はしない。

「なるほど、感覚がほとんど無い状態なんだね?」

 コクリと頷く女の子。

「すまない。配慮が足りなかったみたいだ。大丈夫。全て直して見せよう」

 幾つかの不思議な文字が浮かび上がると、その文字は光りに変わり、腕に張り付く。

 その光りが収まると、あれほどの切り傷の痕が何も無かったかのように、綺麗になっている。

「うそ……治っている」

 呆然としている彼女同様、俺も目の前の光景に驚いている。

 俺らの考えでは到底たどり着けない奇跡と言ってもいい事が起こったんだ。

「驚いているようだね。これが、魔女の力だ。信じてもらえたかい?」

「はい、魔女様。ありがとうございます」

 元気で、素直な感謝の言葉。これでもかというほどに頭を下げている。

 そこらへんのインチキ宗教とは違う。言葉だけの戯言ではなく、はっきりとした形の奇跡。

 彼女の反応を見て、満足げに頷くとアレセイアさんは指に不思議な文字を浮かべて、こう説明する。

「治癒魔法はね、世界の干渉もするけど、更に奥。魂に触れているんだ。肉体を再生して

いるといえば間違っていないが、魂の形を再生しているのと同義なんだよ。それが我々の使う治癒。納得してもらえたかい? 彩音さん」

 アレセイアさんは送り主の名前も知っていたようで、彼女の名前を呼ぶ。

 ココまで来ればもう、これくらいじゃ驚きはなしない。

「はい、魔女様」

 態度の一変は当然だ。

 満足そうに頷くと、今朝の手紙を取り出す。 

「これは彩音宛てに送られた魔女の手紙だ。必要な時が来たら開けて欲しい。下心ある贈り物だ」

 受け渡された手紙を大事そうに胸に抱える彩音。

「また、会うことはできますか?」

 その言葉は縋るような声で、不安げな声。 

「ああ、会えるとも。その手紙は言わばチケットだ。それを持って外れの林に着なさい。そうすれば、私の住んでいる所に行けるよ」

「絶対に、遊びに行きます」

「その時は私も、お菓子の用意でもしよう。皆で、お茶会でもしようか」

「はい」

 魔女、アレセイアさんの誘いにとびっきりの笑顔を見せる彩音。年相応どころか、もっと幼く見えてしまいそうなほどの笑顔の返事を返す。

読んでいただいて、ありがとうございます。

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