逃げた先の世界15
夜も更けて、周りは明かり無しじゃ何も見えない森の中にいる。
昼に起きた涼音の事をアレセイアさんに話してした。
「未来は確定じゃない。あいまいで、不透明だ。だからこそ、奇跡は起こる」
「魔女も想像し得ない奇跡ですか」
「まるで私がなんでも知っているかのうような言い方だけれど、それは間違いってものだよ、凪くん」
ここが目的の場所。それぞが足を止めると、アレセイアさんは彩音を見て、話始める。
「暫くは向うの世界になれるので手一杯だろうけど、顔を見せてくれれば、いつでも歓迎しよう」
12月の半ば、この森では雪が積もっている。雪国ほど酷くはないせよ雪の積もる場所だで、その一角には魔法の世界に通じる穴がある。
見た目は森が続いてるようにしか見えないその場所に彩音が手を触れると、波紋が広がって、景色が揺れている。
1月になれば彩音は魔法学校へ通うらしい。同じ境遇にあった者だけを集め学ばせる学院だそうだ。そうなればひと段落、そうしたら顔の一つでも見に来るだろう。
「魔女様」
雪を踏みしめる音が数回。俺達に体を向ける。
「魔女、アレセイア様。彩音は、いなくなりました」
彩音の言葉通り、あの世界では彩音のいた形跡すらない。戸籍上も、記憶の片鱗ですら残っていない。
「私に、私に新しい名前をください。それを、これからの名前にしたいです」
あのとき、杖を握ったときのように、意思の篭った目で、アレセイアさんを見ている。そして、ねだっている。新しく歩けるように。
「ふむ、困ったな。魔女が人に名を送るという事は、弟子を取るということなんだ。彩音、キミに選択肢はほぼ無いのも同義だけど、魔法の町には住める。そこには同じ境遇の者もいるだろう。勿論、此処から、学院に通ってもいいが、それはかなり浮く存在になるだろう。ましてや、私の弟子とか……」
いや待て待て、とか、頭を抱えながら思考に耽っているが、何故か、アレセイアさんは否定的だけど、ダメだとは言っていない。
「構いません、お師匠様。お願いです。私を弟子にしてください」
頭を下げる彩音。その誠意が伝わるように。もう、逃れられないと思ったのか額に手をあて、空を仰ぐ。
「そこまでされては、断れない、な」
苦笑いをするアレセイアさんが一歩近寄る。
「ならば、彩音。私のブローチを取れば、誓約完了だ。いいね」
杖を取る時とは違って迷い無く、金色で、七芒星が描かれているブローチを受け取る。
「キミの名は風音。色彩のある可愛い娘がまるで風に乗ってやってきた君はそんな人だ。風音。よろしく頼むよ」
「よろしく、お願いします」
この森に大きい声が心地よく響く。新しい住人が今日、森の魔女の家に住むんだ。
これが逃げ先の世界。そして、俺の見た世界。
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