初陣
いよいよ戦いの始まりです。
ミルク教官の掛け声と共に最前列にいた兵士が戦闘研修でやっていた突進で黴菌スライムに突っ込んでいく
それをきっかけに全員が一斉に突進していった
勢い良く突進して行ったは良いものの、スライムの体当たりにあい、逆に吹っ飛ばされる兵士
その吹っ飛ばされた兵士が後ろの兵士を巻き込み、ドミノ倒しのように倒れていく。
ただ、数で言えば俺たちの方が断然多い。何体かは兵士に押さえられ、身動きを封じられたスライムもいた
俺は念のために、前衛ではるが後方に位置どり戦況を見ながら、横目にミルク教官の動きを観察した
ミルク教官は、後衛から両手を斜め上に向け浄化の光を放出している。放出された光が弧を描き、前衛で足止めされている黴菌たちに降り注がれる
その光は雫程度ではあるが、それを浴びた黴菌は、受けた体の部分から煙が上がり、明らかに弱っていく
しかし、胃の海から次々と這い出てくる黴菌たちの数は多く、ミルク教官の火力だけでは足りていない
その時、トントンと俺の肩が叩かれた。
振り返るとそこには、黒髪のセミロング、赤いバンダナをした清楚な感じの女の子。
「強化をかけますね」
っと軽く笑顔で話しかけられた。
周りを見ると俺以外の白血球兵士も、同じような女の子に話しかけられている
その女の子は、俺の背中に両手を当て
「では行きます…」
そうすると俺の背中はじんわりと温かくなり、全身に力が漲ってくる感じがした。たぶん研修で言っていた、赤血球の力である強化と呼ばれる白血球の人を強くさせる能力だろう
強化を受け、なんとなく強くなった気がした俺は、再び戦況を観察した。
すでに前に立っていた兵士はいなくなり、俺は前列となっていた。
そんな俺の前、とうとうスライムが迫って来た
俺は覚悟を決め、研修で試した手を浄化の光で覆うことを実行し、スライムと対立する
スライムは、俺の目の前まで来ると、飛び込んで体当たりを仕掛けてきた
俺はその体当たりを光を纏った左手で受け流がし、地面に落ちたスライムを左足で踏みつけ身動きを封じつつ、両手から浄化の光を浴びせた
至近距離から大量の浄化の光を受けたスライムは、身体から大量の煙を巻き上げ、一気に消滅した
スライムが消滅し俺は顔を上げると、また新たなスライムが俺に迫るが、今度も同じように体当たりをいなし、スライムを消滅させた。
3体目もスライム
そのスライムも同じように体当たりで向かって来たので、俺は同じように左手を前に出し受け流そうとした瞬間
スライムの体がガバッとひらき、俺の手を噛みつこうとした
しかし、俺は手を引くことをせず、そのまま左手から風をイメージし浄化の光を放出。
それを受けたスライムは、物凄い勢いで後方に吹き飛んで行き、胃の海へと落ちていった。
俺はミルク教官の言っていた「浄化は害虫に効果がある」と言った意味を理解した
「効果絶大だわぁ」
その後もスライムが大半であったが、風の浄化で吹き飛ばし戦い続けた。
スライム以外にも狼の獣も襲ってきたが、スピードが若干早いぐらいで手に負えないスピードではなかったため、同じように吹き飛んでもらった。
何体倒したかわからないが、侵攻して来る害虫も減っていき、最後に向かってくるスライムを光で覆った右手ではたき落とし、浄化の光を放出し消滅させた
「お疲れ様〜、終了です。集まって下さい」
背後からミルク教官の号令がかかる
戦いに夢中になり、俺も随分前に出ていたんだなぁっと、目の間には誰もいなかった
しかし、ミルク教官に振り帰ったとき、ミルク教官と一部の赤血球の人を残し、白血球の兵士は俺以外誰も見当たらなかった
500人はいた白血球のチームは、俺とミルク教官以外、この戦いは生き残ることが出来なかったようだった
戦闘の前は、あんなにも兵士がごった返していたのに、今はガランとした中を俺はミルク教官に向かって歩き始めた
ミルク教官の前に来た俺に
「あなただけ残りましたね。正直、今回のこの胃の海の戦いではわたしも生き残れないと覚悟していましたが、どうもあなたのおかげで生き残れたみたいですね」
「どういうことですか?」
俺は思わず、聞いてしまった
「えぇ〜っとですね、胃の海は…」
<胃の海の戦い>
・主の食事として、基本的に朝昼晩の3回行われる
・食べた物にもよるが、外部から体内に入ってくる物には必ず黴菌が混入している
・そのため、毎回白血球隊と赤血球隊が配備される
・大小に関わらず黴菌の数は多いため、厳しい戦いになる
・厳しい戦いでは、新米兵士のチームは、まず生き残れない
もっとも、新米チームでは兵士長も含め生き残ることが出来ないそうだが、今回はメイジであるミルクが兵士長ということもあり、厳しい戦闘に配備されることになってしまったようだ
「なんにしても、あなたは立派に生き残れました。しかもあなたのベルトを見る限り、十数体の害虫を倒したのでしょう」
ミルク教官は俺のベルトを指差しながらそんなことを言う
俺もそれにつられ自分のベルトを確認すると…赤色だったバックルが橙色に変化していた
「スライムはだいたい1EPです。橙になるためには10EP以上です。ちなみに橙は強さで言えば、兵士長クラスですので、あなたは新米にも関わらず、すでに兵士長の実力を備えていたのでしょう。まあそのおかげでわたしも生き残れたわけですから、感謝しています」
という事だそうだが、俺は戦闘の厳しさを知りつつ、兵士の弱さをあらためて実感した
「生き残ったからには、あなたにはこれから次の戦いに備え、いろいろと教えていきますので、わからないことがあれば聞いてください」
そう言われた俺だが、正直わからないことがあり過ぎて、何を質問すれば良いのかわからず、ひとまず頷いておいた
「じゃあ、早速ストマックシティに行って、あなたの武器を買いましょう。10EPもあるので兵士長クラスの武器が作れると思います」
「どんな武器が良いですか?」
このまま喋らずにはいられなかった俺は当たり障りのない会話をしてみた
「そうですね〜?自分にあったものというのが一番良いのですが、わたしの我が儘をきいてもらえるのであれば、前衛で活躍してもらえる剣が嬉しいですが…あなたの戦い方を少し見ていたのですが、浄化を上手く使った戦闘をしていたので、投擲武器なんかが向いているのかもしれませんが、前衛がしっかりしていないと全滅してしまいますから、わたしのチームにいる間は是非前衛で頑張って欲しいです」
「わかりました。前衛でやっていきますよ」
俺はミルク教官の言う通りに前衛職を進むことにした。前衛職は危険は多いと思うが、あの戦いを経験し、少しでも自分の仲間たちを助けたいと思った
少なくとも兵士は生まれたての赤ん坊みたいのもので弱い。それを前線に立たせ無意味に突っ込ませるなんて効率が悪すぎる。兵士をできる限り生存させ戦いの経験を増やし強いチームを育てた方が絶対に良い
また、ミルク教官も自分で言っていたが、前衛が疎かになれば、チームを全滅に導いてしまう
そんな理由もあり、俺は前衛でやることを承諾した
「生き残ってさえいれば、変更も自由ですので、とりあえず次の戦いは前衛でお願いします」
「わかりました。じゃあ、案内お願いします」
「はい、じゃあ行きましょう」
と、ストマックシティという体の中の初めての街に向かうのであった
無事戦いを書き上げることができました
ふぅ〜、なんか言葉選びが大変