1話
少年は街道を歩いていた。
日は高く、ジリジリと歩く人を照りつける。
大きな街道を歩いているせいか行き来する人は多い。
そのせいもあってムシムシとむさくるしいような
暑さになっている。
「夏だ・・・」
少年は手をかざしながら太陽をみた。
遠くにあるにもかかわらずその存在は大きく感じる。
「うわっと!」
どん、という音とともに身なりのみすぼらしい9歳くらいの少年と
ぶつかった。
「す、す、すいません。ごめんなさい・・・」
2度も謝ると、その子はそそくさと逃げるように離れていった。
「あっと、待って!」
少年を呼び止めてみたが無駄であった。
「あ~あ・・・財布取られた・・・」
スリである。少年は太陽を見上げるとまたやりきれない気持ち
になった。
「前途多難だよこん畜生・・・」
街道には国と国を結ぶ重要な役割をもっている。その一つが
税関の税申告と入国審査である。
その神聖なる税関所ではひとりの少年が深く深く腰を折っていた。
「お願いします!どうしても通りたいんです!」
「そんな事いわれても・・・無理なものは無理だって」
役人のおじさんは困りきった顔で少しめんどくさそうに言った。
「だから、入国税なしじゃは入れないんだって。さあ帰った帰った!」
金がないのである。先ほど取られた財布には彼の全財産が入っていた。
国へ入るには多額、といわずともそれなりの金額は必要である。
もう一度少年がお願いしようとしたそのとき、
少年の後ろから深みのあるゆったりとした声がした。
「なんだ何か問題でもあったのか?」
声のしたほうをむくと、
銀の甲冑といういかにも騎士といった容姿をした青年が立っていた。
「こいつ、さっきスリにあったみたいで入国税を支払えないのだそうです。
どうか追い払ってください。」
「だからなかにお金預けてる人がいるから、そのひとに
貰いに行かせてくださいよ!ほら、身分証明書もあるし!」
おじさんはその証明書をにらみつけ、首を横に振った。
「だめだめ。法律で決まってるの!ほら、後がつかえてるじゃないか。」
はぁ、とため息をつくと、その騎士らしい青年は会話に割って入った。
「確か2500Gだったか?」
「は?」
「だから入国税だよ」
「はぁ」
気の抜けた老人に二枚の札束と一枚コインを渡すと、少年に言った。
「後で返せよ」
少年はうれしそうににっこりわらうと、
「ありがとうおじさん!」
うれしさが満面に出た顔に、きらきらと輝く目をしている。
青年は思わず少年の笑顔に見とれてしまった。
彼はこぶしを握ると、少年の頭に叩き込んだ。
「まだ24、だ」