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GunZ&SworD  作者: 聖庵
51/185

シーン 51

改稿済み:2012/08/13

サフラの方が鞭の適性が高いとは言え、大会で使わない手はない。

むしろ、コツを掴んでいる彼女から教えてもらえば上達の近道になるだろう。

それに、実際の試合で不利だとわかれば、躊躇わず銃を使えばいい。

相手がよほど分厚いプレートアーマー着込んでいなければ、銃が無力化される心配もないだろう。


指折り数えたところ、大会の当日まで残りは一週間ほど。

ただし、会場となる町へは馬車での移動になるため、準備と移動の時間を差し引いて考えなければならない。

つまり、残った時間が鞭を訓練する時間だ。


クオルは、どうしても僕と戦いたいと思っているため、勝ち進めばいずれ戦う事になる。

バレルゴブリン戦でクオルの実力を目の当たりにしているが、彼の実力は侮れない。

特に、ゴブリンを一瞬で灰にした炎は脅威だ。

炎に巻かれれば無事では済まないだろう。


思い立ったが吉日とはよく言ったものだ。

時間があまりないため、今日から訓練を開始した。

鞭を手足のように使うには、集中力と想像力が必要だ。

ちなみに、命令は言葉で伝える必要はない。

烈火石で炎を灯すイメージと言えばわかりやすいだろうか。

念じれば応えてくれるため、相手にこちらの意図を悟られる事もない。


「さっきより、ぎこちなさが無くなってきたね」


練習を始めて半日は経った。

どうやら、途中で食事を済ませ、リフレッシュしたのが良かったらしい。

まだ、サフラのようにはいかないが、ようやく思い通りに動くようになってきた。

あとは反復練習を繰り返し、覚えた感覚を身体になじませていくだけだ。


「コレ、集中力が大事だよな」

「それと、肩の力を抜くイメージかな。そうすれば思った通りに動いてくれるはずだよ」

「改めて思うけど、こんな事を平気な顔して使いこなす何て…凄いな」


涼しい顔で扱うサフラに比べれば、僕はまだまだ修行不足だ。

ある程度コントロール出きるとは言え、実戦では役に立たないレベルだった。

戦闘中は、咄嗟の判断力がモノを言うため、何が起こっても動じない精神力が必要になる。

それに比べ、彼女の場合は初めから飛び抜けたセンスを持っていた。

隣の芝は青いではないが、彼女の才能をうらやましく思う。


「焦らないでね。きっと上手になるから」

「それとさ、コッチの訓練も平行して行おうと思うんだ」


腰からマインゴーシュを抜いた。

これまであまり出番のなかった短剣だが、鞭と同様に実戦で使えば心強い武器になる。

基本的には防御用に作られた短剣だが、刃が付いているので攻撃をしてはいけないと言う事はない。

むしろ、防御をすると見せかけて攻撃に転じれば、相手の虚を突けるだろう。


「レイジは剣の扱いってどの程度できるの?」

「ほとんど素人だな。昔、授業で剣道を習ったくらいだ」

「ケンドウ?」

「あぁ、俺の国で盛んだった剣術さ。長剣じゃなくて湾曲した刀って刃物を使うんだ」


習ったと言っても、中学の頃に体育の授業で基本的な動きを学んだ程度だ。

そのため、実戦向きの技術はほとんど学んでいない。

それに、今からもう何年も前の事なので、ほとんど覚えていないと言うのが正直なところだ。


「じゃあ、短剣の使い方、教えてあげようか?」

「あぁ、よろしく頼む」


ここで一つ問題が浮上した。

マインゴーシュは左手用に設計されているため、右手で使うとグリップが逆になり扱い難い。

具体的には、鍔の部分が手首に当たってしまうので、どうしても左手で使わなければならない設計だ。

つまり、剣術を学ぶにしても、左手で練習しなければならない。

右利きの僕には、まず左手に慣れるところから始める必要がある。


「うーん、右手にも短剣を持ってみたらどうかな?」

「二刀流って事か?」

「うん。両手だと攻撃と防御、両方できるから」

「確かに、二刀流は憧れるな。宮本武蔵みたいでカッコイイし」

「ミヤ…モト?」

「あぁ、昔、日本にいた剣の達人だよ」


頭の中で二刀流の姿を思い描いてみる。

両手に短剣を持ち、左手で攻撃を捌きながら、右手で攻撃に転ずる姿が浮かぶ。

問題は短剣という武器の特性だ。

武器のリーチが短いため、相手に接近しなければならない。

素早さに自身のあるサフラやニーナならば話は別だが、僕は彼女らほど上手に立ち回れないだろう。

何より、遠距離攻撃を主体とした銃を扱うため、自分から間合いを詰めるのは得策ではない。

マインゴーシュの使い方としては、あくまで間合いを詰められた時に活躍するのが望ましい姿だ。


「うーん、二刀流は憧れるけど、俺の戦い方には不向きだな。基本的には銃を使うんだから、自ら間合いを詰めるのは利点がなくなるだろ?」

「あ、そっか。うーん…じゃあ、左手に鞭を持って右手に銃を持つスタイル?」

「そうなるな。でも、出来れば銃に頼らない戦い方がベストだ。またケルベロスみたいなヤツらに襲われても損だろ?それと、大会が終わればコイツはお前が使えばいい。俺よりも適正が高いみたいだから、戦いの幅も広がるだろ」

「いいの?」

「あぁ、好きに使ってくれ」


大会までの残り時間はあまり多く残されていない。

それまでに銃に頼らない戦い方を確立したいと思っている。

実際には、鞭を主体にした戦い方だ。

鞭は打撃武器なので殺傷能力は刃物に劣るものの、変則的な攻撃が出来るのは強みだろう。

何より、命を奪わず相手を制圧する事も可能で、僕にとっては刃物を使うよりいくらか気が楽だ。

結局、短剣を使った戦い方については今後の課題と言う事になった。


大会に向けて準備を進めつつ、鞭の訓練も欠かす事はなかった。

気付けば、時間は思っていたよりも早く流れ、明後日はいよいよ大会の当日を迎える。


「いよいよだね」

「あぁ、やるべき事はやってきたつもりだ。あとは全力を出すだけだな」

「レイジならきっと大丈夫だよ。遅くまで一人で練習してたもんね」


徹夜とまでは言わないが、深夜遅くまで練習をしていたのは事実だ。

サフラに迷惑が掛からないよう、シャドーボクシングの要領で、仮想の相手を想定したイメージトレーニングも欠かさなかった。

鞭の扱いも、サフラには及ばないが人並み以上に扱える程度に上達した。

エキドナの見せた攻撃を弾く技術も、冷静さを保っていれば可能だろう。

この世界には、僕のほかに銃を使う者がいないため、かなりのアドバンテージになる。


訓練の中で気が付いたのは、攻撃を弾く技術の応用だ。

エキドナが見せた銃弾を弾く技術は、かなり高度なもので、集中力さえ続けば弓矢を何発でも防ぐ事ができる。

剣戟についても、受けきれる程度の圧力であれば跳ね返す事が可能だ。

問題は、僕が想定する以上の攻撃を受けた場合だろう。

バレルゴブリンを例に挙げればわかりやすいが、物理的に防ぐ事が不可能な攻撃は避けるしかない。

それに、鞭そのものを破壊するような攻撃にも注意が必要だ。

ミスリル銀の強度はテイタンとほぼ同等と言われている。

硬度は鋼鉄より上だが、過信は禁物だ。


ハンターギルドへは練習の合間を見て登録を済ませておいたため、あとは準備を済ませて移動を開始するだけ。

順調に行けば身分証を取得できる。

期待と不安に胸を膨らませながら宿をチェックアウトした。

荷馬車には、数日間生活できるよう食料などの物資を積み込み、荷馬が食べる干草も積んでおく。

干草は布を掛ければそのままベッドになるため、野宿をする時にも快適に過ごせるだろう。


大会が迫っていると言う事もあり、会場となる交易都市へ向かう街道には、多くの荷馬車や人が行き交っている。

一年に一度のイベントなので、参加しない者にとってはお祭りと言う認識が強い。

しかし、参加する側の僕にしてみれば、命が掛かっているため身の引き締まる思いだ。

サフラは帝都より先のイーストランドへ行った事がないらしく、初めて見る風景を御者台の上から楽しんでいた。

時より鼻歌も聞こえるので、気分も上々のようだ。


人通りが多い街道とは言え、亜人の襲撃が一切ないと言うわけではない。

そのため、あまり旅行気分でいると不意の襲撃に対処が遅れてしまう。

街道を外れたところには亜人のコロニーもあり、常に周囲に注意を払う必要がある。


「あの人たちも大会を見に行くのかな?」

「どうだろうな。見たところただの荷馬車だから、行商じゃないかな?」

「そっか。レイジは普段と変わらず落ち着いてるよね。なんだか自信があるように見えるよ」

「別に今から焦っても仕方ないから普通にしてるだけさ。それに、もう覚悟はできてるからな。死なないのはもちろんだけど、身分証を得るのが今回の目標だ」


説明した通り、今さら焦っても仕方が無いと言う気持ちがある。

それに、少しでも不安を取り除けるよう、出来る限りの訓練をしてきたのだから、あとはその成果を披露するだけだ。

何かの大会だとか発表会の前って緊張しませんか?手のひらに「人」の文字を書いて飲み込んだり、深呼吸をして気持ちを落ち着けたり。人それぞれ過ごし方はりますが、主人公については結構サバサバしてストイックな一面もあるようです。




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