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GunZ&SworD  作者: 聖庵
20/185

シーン 20

2012/06/24 改稿済み

ゴブリンとの死闘を終えてから半日が過ぎた。

あれから負傷した二人を病院に運び込み、ダイドには緊急手術が施された。

その結果、一命を取り留める事ができたため、僕らはホッと胸をなで下ろした。

それから落ち着いたところでハンターギルドに赴き、バレルゴブリンを倒した旨を報告した。

そこで待っていたのは、三時間に及ぶ長い事情聴取だ。

ゴブリンを倒したのは誰か、相手の特徴はどうだったか、トンネル内部の様子など、聴取の内容は多岐に渡った。


何故、このような状態になったのかと言えば、ダイドの負傷が原因だ。

彼は、討伐チームのリーダーと“ギルドの眼”の役割を担っていた。

つまり、負傷さえしていなければ、現場の状況を報告するはずだった。

ちなみに、クオルは彼の代理役でもあった。

しかし、クオル自身も魔具を使った反動で動けなくなってしまい、今は面会謝絶の状態だ。

それに、バレルゴブリンを仕留めるまで意識を保っていなかったため、報告役の責任を果たしきれていない。


僕に向けられた聴取は、サフラやニーナとは違い、“銃”に対する知的探求心から追及の時間が長く取られた。

僕は仕方なく大まかなギミックから殺傷能力、射程距離や特性などを事細かに説明する他なく、ようやく開放された頃には精神的に参っていた。

銃の性能を証明するには、ニーナの時と同様に実射テストを行ったため、大勢のギャラリーが集まる結果となった。

もちろん、それを見た関係者たちが目を丸くしたのは言うまでもない。

ちなみに、今は宿に戻り一息ついたところだ。


「…なぁ、ニーナ、ギルドってあんなに煩わしいところだったのか?」

「まぁ…そうなるな。彼らは基本的に現場主義のところがあって、自分たちの目で見たもの以外は認めようとしないんだよ。ただ、例外として、仲間だと認めた筋からの話はほとんど疑わないのさ」

「だからダイドさんが俺たちに同行した…と」

「初めはクオルだけだったんだがな、近くで話を聞いていたダイドがお目付役を買って出たわけだ。クオルにしてみれば面倒な報告は先輩に任せられるし、自分は自由に暴れまわる寸法だったらしい」

「なるほどな。確かにその方がアイツ向きだ」

「と、言うことは…ニーナさんは、このためにバレルゴブリンを倒したかったって事ですよね」


隣で話を聞いていたサフラが目を輝かせた。

ニーナからバレルゴブリン討伐の協力を依頼された際、“ギルドからの信頼を得たい”と言っていたのを覚えていたようだ。


「その通りだよ。私はどうも人に説明するのが苦手でね…。毎回似たような聴取をされ困っていたのさ。だから、彼らに実力を証明する機会をうかがっていたんだ。まあ、今回の事でようやく信頼を得られたように思うよ。キミたちが協力してくれたおかげだ」

「いや、活躍したのはお前とクオルだ。俺は別にたいした事はしてないよ」


実際に僕は後衛を務め、離れた位置から援護射撃をしていただけだ。

無数にいた雑魚の処理は、クオルとダイドがほとんど担当したため僕の出番はほとんどなかった。

それに、バレルゴブリンに至ってはニーナが留めを刺している。

サッカーで言うところの“アシスト”はしたものの、“ゴール”を決めたわけではない。


「いやいや、キミがウマく援護をしてくれたから楽に立ち回ることが出来たんだよ。クオルもそう感じているはずだ」

「そうか…。まあ、そう言ってもらえると手伝った甲斐があるよ。ありがとな」


礼を言うとニーナは照れくさそうに笑った。

彼女のような美人には笑顔が良く似合う。

これはサフラにも言える事だ。


翌日。

僕とサフラはギルドからの呼び出しを受け、指定された場所に向かった。

呼び出されたのはギルドの支部長室だ。

待っていたのは、頬に深い刀傷のある肩幅の広い中年男性だった。

歳はダイドより少し上といった感じ。

支部長の席に深く座り、威厳たっぷりといった雰囲気を醸し出している。

ただし、嫌味のある権力者と言うよりは、現場を良く知る叩き上げと言った感じだ。

だから、一目見た感想は苦労人というのが正しいだろう。

おそらく、支部長という立場から、努力して威厳ある様子を装っているようにも見える。


「やあ、待っていたよ。ほお…話しに聞くよりずっと若く見えるな」

「どうも」

「そんなに身構えなくていい。キミたちは町の英雄だ。何も取って食おうなどとは思っていないさ」


そう言うと男は高笑いをした。

見た目の印象とは違い性格はずっと快活そうだ。


「それはどうも。あぁ、俺はレイジ、こっちはサフラ。見ての通り旅人です」

「私は支部長のフレイズという。その若さで旅人とは…何か訳ありかな?」

「えぇ、野暮用で帝都を目指す途中です。戦いに参加したニーナとはこの町で偶然知り合って、あとは聴取の通りです」

「なるほど。確か報告書によれば、ニホンという国からの来訪者だとか。銃という不思議な武器の使い手ともあるな」

「えぇ。日本はここから帝都よりも遥か遠い地にあります。銃は日本ではありふれた武器です」

「ふむ…そんな国があったとは…戦争にでもなれば大変な事態だな」

「その点はご心配なく。日本はこちらの国と一切の交流がありません。それに、戦争をするにも遠方すぎてお互いに干渉する事は無いでしょう。それに俺はただ、成り行きでこちらにたどり着き、旅をしているだけですから。そちらも聴取通りです。それより、ここへ呼ばれた理由を聞いてもいいですか?」


昨日散々追求されたことなので、特に突っ込んだ話はしてこなかった。

フレイズは一つ咳払いをすると、僕らをここへ呼んだ経緯を説明し始めた。


「そうだったな。昨日、キミたちの報告を受けた後にギルドの手練れを数名、トンネル内部に送り込んだんだ。状況の把握のためにね。彼らの報告によれば、一部落盤が発生したトンネル内部には、夥しい数のゴブリンの死骸と、討伐対象であるバレルゴブリンの死骸が見付かったと聞いている。これらの状況は聴取内容と一致したため、討伐の達成を正式に認めるものとする。従って、キミたち二人にはギルドから報奨金を手渡すことになった、と言うのが今回の理由だ」

「そうでしたか。わざわざお呼びいただき、どうも」

「機嫌を悪くしないで欲しい。煩わしいとは思うがこれは規則でね。勘弁していただきたい。それで、これが報奨金だ。受け取りたまえ」


そう言って革袋を手渡された。

直接中身が確認出来ない変わりに、詳細について書かれた書類も一緒に手渡された。

そこには討伐したゴブリンの数と場所、報奨金の金額が明記されている。

驚いたのは金額の欄だ。

そこには“各自、金貨百枚”と明記されている。

つまり、僕とサフラ合わせて二百枚分だ。

それにはサフラも驚いた様子で、目を丸くしながら何度も書類を確認していた。


「これ…金額が…」

「あぁ、それは正当な対価だ。受け取っておきたまえ」

「でも、これには各自と…」

「うむ。我々も少し…いや、かなりと言うべきか。バレルゴブリンという化け物を低く見積もっていたと反省したよ。あれほどの化け物は、軍の主力部隊を送り込まなければならないほど強敵だ。それをキミたちはたったの四人で討伐したんだ。これくらいの対価は当然だ」

「まあ…確かに数は多かったですね。バレルゴブリンも聞いていたより巨大な化け物でした」

「つまり、それだけ感謝しているのだ。理解してもらえたかな?」

「…そうですか。だから疑わしい目で見られたらわけですね」


これで、執拗な聴取を受けた理由が理解できた。

そうでなければ、あれほど長い間事情を聴かれるのは不自然だ。


「うむ。ただ、銃という兵器を目の当たりにして、その考えは変わった。あの武器は素晴らしい。銃が実用化されれば戦争の概念は大きく変わるだろう」

「…俺は平和主義者なんでね、人が殺し合うところは見たくはないんですよ」

「別に人間同士で争うわけではないさ。我々の宿敵であるドワーフ、エルフの殲滅は皇帝陛下をはじめ、人民の悲願だ。もちろん、我々に仇なす亜人族も例外ではない」

「…なるほど。理屈はわかりますよ。ただ、出来れば俺たちの関知しないところでやって欲しい。それだけです」

「ふむ…まぁ、旅人のキミには理解し難い…か。それも一つの答えだろう」


僕はハンターでも殺し屋でもない。

もちろん、戦えと強要されて戦場に赴く兵士や傭兵でもない。

元々は、戦争と無縁の世界に暮らしていたのだから、平和を望むのは当たり前のことだ。

ただし、自分に不利益があるとわかれば、黙って見過ごすわけには行かない。

正当防衛という理由があれば、覚悟を決めて戦うと決めているのだから。

だから、理由のない戦いは僕に関わらない世界でやってもらいたい。

この考え方が、ギルドに所属するハンターたちとの違いだろう。


ニーナはどう思っているかわからないが、きっと彼女も生活のために戦っているに違いない。

討伐対象を倒して得た報酬は、そのまま生活の糧になる。

何不自由ない生活を送っているのであれば、あえて危険な世界に飛び込むこともないはずだ。

しかし、彼女の本質が戦闘狂であるのなら、この問答は振り出しに戻ってしまうのだが。


結局、僕が軍人らしからぬ反論をしたおかげで、“ハンターとは何か”と支部長直々に説明を受けた。

規則や美学と言った独自の考え方があるらしい。

ただ、それを知ったところで、今の僕には一つも感心がもてない。

出来れば早く宿に帰ってゆっくりしたい。

支部長はひとしきり説明すると、僕らを開放してくれた。

話が終わった頃にはすっかり辺りが茜色に染まっていた。

ようやく予定していた一つ目の山場が終わりました。

当初の予定では5000文字程度を安定的に投稿する予定でしたが、蓋を開けてみるとなかなか時間が取れない状況です。

ただ、現状のペースは維持していこうと思うので、毎日連載にご期待ください。

また、時間を見つけて誤字脱字等の改稿を予定していますが、大幅なストーリーの変更は考えていません。でも、つじつまが合わない場合は別ですが(汗



ご意見・ご感想・誤字脱字の指摘等がありましたらよろしくお願いします。

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