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GunZ&SworD  作者: 聖庵
176/185

シーン 176

準備を整え、再び塔のある中心部まで移動した。

今回は僕らのチームが先行し、残りのメンバーはそれに続く形だ。

慎重に歩みを進め、先ほどの茂みに戻ってきた。

塔の中に潜入するには、外で作業をするジャイアントをやり過ごさなければならない。

出来れば戦わずに体力を温存したいところだが、後々の事を考えれば今のうちに倒しておく他はない。

ここからは激しく戦闘が予想される。

陽動と殲滅するチームに分けて行動を開始した。


「…確認するぞ。各個撃破のスタンスを忘れるな。強襲は初めが肝心だ、行くぞ!」


陽動の先陣を切ったのはドワーフとウェアウルフのチームだ。

ジャイアントを素早く取り囲み注意を引きつける。

続けてハンターの弓手チームが先制攻撃を仕掛けた。

しかし、弓での攻撃は身体の大きな相手には効果が薄い。

そこで、槍を持ったメンバーが四方から同時に突きを放ち、四肢の動きを封じる。

弱ったところを熟練のハンターが襲いかかり、ネピリム以外のジャイアントを一体ずつ仕留めていく。

ジャイアントたちも突然の奇襲に対応が遅れ、気付いた頃には半数以上が倒れていた。


「ほう…見事なものだな」


アルマハウドは仲間たちの活躍ぶりを見て感心している。

しかし、僕らはこのまま黙って見ているわけにはいかない。


「感心してる場合じゃないぞ。アイツを倒して塔に潜入する!」


ネピリムに睨みを利かせて銃を手に取った。

それに合わせて全員が戦闘態勢に入ると、ビルが飛び出して陽動を開始する。

僕は拳銃から自動小銃に持ち替え、脛に無数の弾を浴びせかけると、ネピリムの巨体がグラリと揺らいだ。

その隙を見逃さなかったアルマハウドは、一息で距離を詰めると自慢の大剣を真横に振るって腹を斬り裂いた。

いくら人間より数倍身体の大きなネピリムとは言え、この攻撃には悲鳴をあげてうずくまり、完全に無防備な姿を晒した。


「ニーナ、クオル!止めを刺せ!!」


僕が合図をすると二人は左右から同時に斬りかかり、剣を思い切り振り下ろして首を刎ねた。


「…やれやれ、私の出番はなしか」

「私もです…」


出遅れたサフラとコルグスは、お互いの顔を見ると苦笑いを浮かべた。

他のチームも残りのジャイアントを倒し終わっていた。


「みんな、お疲れ様。これより塔の中に潜入する。何があるかわからないから、十分注意してくれ!」

「待て…嗅ぎなれない匂いがする。近いぞ!」


ビルは得体の知れない匂いを感じ取り警戒の声をあげた。

すると、塔の中から見覚えのあるローブを纏った男たちが現われた。

総勢十五人のキメラだ。


「レイジ殿とお見受けする。何用か!?」


リーダー格と思われる男が僕を睨みつけてきた。

威圧感はあるが恐怖するほどではない。

僕は殺気を込めて男を睨み返した。


「ホリンズはどこだ!この中にいる事はわかっている。邪魔立てすれば容赦はなしない」

「なるほど…主の計画を止めようと言う気ですか。いいでしょう、我々がお相手しましょうか!」


そう言うとローブの男たちは全身の筋肉が盛り上がり、コウモリの羽根を持つ獅子の姿に変わった。

しかし、今までマンティコアとは違い、纏っている空気が尋常ではない。

刺すような殺気を放ち、喉を唸らせて僕たちを威嚇している。

マンティコアの姿になってしまえば人の言葉は使えなくようで、知能も低くなるようだ。


「おぞましい姿だ…これがキメラか」

「気をつけろ。今までマンティコアじゃなさそうだ!」


マンティコアの特徴は猫のような俊敏性だ。

身体の七割近くがライオンのような姿をしているため、見た目通りではある。

これまでの経験から、今までのマンティコアであれば、オークに毛が生えた程度の強さだった。

しかし、今回は様子が違っていた。

マンティコアは身体を弓のようにしならせると、全身のバネを使って一気にトップスピードまで加速する。

その速さはウェアウルフのビルと同等か少し襲い程度。

もちろん、並みのハンターなら対応できない速さだ。


「マズイ、みんな散れ!」


僕はギリギリのところでマンティコアの鋭利な爪から難を逃れた。

しかし、反応が遅れたハンターの一人がマンティコアの餌食になり、鋭い爪に切り裂かれて胴と頭が二つに分かれた。


「何という速さだ…これが本当にあのマンティコアか!?」

「喋っている暇はない!次が来るぞ!!」


ニーナが驚くのも無理はない。

今までとは明らかに実力が違い、まるで悪夢を見ているようだ。

マンティコアはターゲットをサフラに絞ると、再び全身のバネを使ってトップスピードまで加速した。

しかし、サフラは避ける事はせず、持っていた鞭を使って攻撃を受け流した。

飛び込んでくる勢いをそのまま利用しているため、彼女自身が使った力はほんのわずかだ。

そして、マンティコアの身体が真横を通り過ぎた直後、右手に持っていた短剣を脇腹の急所に突き立てると、マンティコアは勢いを失ってそのまま地面にヘッドスライディングを決めた。


「ごめんね…でも、これもお仕事だから。キミが悪いんだよ?」


サフラは悲しそうな目で瀕死のマンティコアを眺めた。

もはや虫の息で、次の一撃が決まれば確実に息を引き取るだろう。

仲間がやられた事で残りのマンティコアにも恐怖が伝播している。


「し、信じられん…通り過ぎる一瞬で急所を捉えたと言うのか!?」

「そうですか?これくらい練習すればできるようになりますよ」


目を丸くするコルグスとは対照的に、サフラは微かに笑みを浮かべてサラリと答えた。

彼女は簡単そうにやっているが、並みの人間が真似できるような芸当ではない。

僕自身、同じ事を強要されたとしても即答でノーと答えてしまう。


「サフラちゃんの実力はあんなものじゃないよ。彼女の戦い方はジャイアントには不向きだが、マンティコアには非常に有効だ。今の技は背後から突き刺すバックスタブを応用したものさ。まだ技の名前はないが、サイドスタブと言ったところかな」

「はい。ニーナさんに教えてもらいました」

「教えてもらったって…」

「ふふッ、ここはサフラちゃんに任せておいても平気さ」


ニーナは安心してサフラを見ている。

そんな言葉を聞いても、僕は心配で仕方がなかった。

下手をすれば爪に切り裂かれてしまうかもしれない。

それでも、サフラはリラックスした様子で倒れているマンティコアに近寄ると、背後から心臓を突き刺して完全に息の根を止めた。

ここまで冷徹に敵を倒す姿を見るのは初めてだ。

いつもは控えめにしている彼女だが、今回ばかりは纏っている雰囲気には鬼気迫るものがある。

普段表には出さない負の感情を爆発させるように、別のマンティコアに鞭を放ち、短剣で正確に心臓を突き刺していく。


「何と言う事だ…彼女こそ“戦乙女”の生まれ変わりだ!」

「あぁ、間違いない。我らが神、ワルキューレ様だ!」


サフラの戦いを見ていたハンターたちが声をあげた。


「戦乙女か。なるほど、言われて見ればその通りだな」


アルマハウドもハンターたちに同調して大きく頷いた。

ハンターの間には、戦乙女と呼ばれる戦場の女神にまつわる昔話が伝わっている。

それは、今の場所に帝都が築かれた時代にまでさかのぼるらしい。

事情に詳しいアルマハウドによれば、突如現われた異国からの使者を名乗る女性が、初代の皇帝となる人物を救ったと言うものらしい。

その女性は簡素な造りの短剣を持ち、人々を苦しめていた亜人の群れをたった一人で打ち滅ぼしたと伝わっている。

そのため、サフラの姿を見たハンターたちは、神々しい者を見つめるような視線を送った。


「我々もワルキューレ様に続け!一気に畳み掛けるんだ!!」


サフラの活躍でハンターたちの士気は一気に盛り上がった。

対するマンティコアはハンターたちの勢いに押され防戦一方になっている。

僕は離れた場所から自動小銃でマンティコアを撃ち抜いて行く。

頭さえ撃ち抜けば簡単に殺すことが出来るため、射線上に仲間が入らないよう注意しながら引き金を引くだけだ。

後に残ったのは無数に散らばるマンティコアの死体だけだった。


「ふぅ…終わったか。それにしても、サフラが戦乙女か面白い事を言うんだな」

「ホント、私も驚いちゃった。でも、みんなの役に立ったんだよね?」

「あぁ、俺も驚いたぞ。いつからあんな動きが出来るようになったんだ?」

「うーん、いつからだろう?意識した事がなかったからわからないけど、これもニーナさんと練習した成果だよ」

「お前、一人でも頑張ってたもんな」


サフラが裏庭で黙々と練習する姿は何度も目にしている。

見えない相手に対して、シャドーボクシングの要領でひたすら突きを繰り返す様子は、宮殿の中庭で稽古をする皇帝の姿と同じだった。

ビルによれば塔の中から敵の気配はしないようだ。

潜入するなら今をおいて他にはない。

僕らは警戒を続けたまま塔の中に潜入した。

中に入ってみると、見覚えのある光景が広がっていた。

それは、フォレストメイズの施設とよく似た内部構造になっている。


「ここは…アルマの遺跡か?」

「ミュージアムともよく似ているな。しかし、こんな巨大なものは初めてだ」

「だけど、フォレストメイズで見た映像には、こんな建物はなかったじゃないか。一体どういう事だ?」

「本人に聞いて見る方が早そうだな…」


コルグスは口惜しそうに呟いた。

塔の中心部には上層部へと続く螺旋階段が設置されている。

階段を駆け上がり次の階にたどり着くと、そこには外から運び込まれた石材が積み上げられていた。

そして、さらに上の階に移動すると、ここでもまた石材が積み上げられている。


「…何なんだここは?」

「資材置き場…というわけではなさそうだ。見たところ一時的に保管されている印象だな」

「とりあえず、注意しながらいけるところまで行って見よう」


僕らは階段が続く限り上を目指した。

しかし、階段を登れども終わりは見えてこない。

全員に焦りの色が浮かんだ頃、次の階へ通じる階段は突然なくなった。

ラストダンジョンに潜入しました。




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