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GunZ&SworD  作者: 聖庵
132/185

シーン 132

間近で見ると、ゴーレムは生き物ではない事に気が付く。

全身を硬質な金属に覆われ、動物特有の息遣いは感じない。

顔の真ん中に一つだけついた目のような部分は、ソフトボールほどの大きさがあり、半円が表面に顔を出している。

それがギョロギョロ動き回り、僕たちを観察し始めた。

また、基本的に動く時は、足の裏に付いたローラー状の突起が回転し、地面の上を滑るように移動している。

見れば見るほど、最初に感じたロボットと言う表現が正しく思えた。


「…またキミたちか、何回僕の邪魔をすれば気が済むんだい?」


突然、ゴーレムから聞いた事のある男の声がした。

その声は頭に内蔵されたスピーカーから聞こえている。

同時に、首筋に違和感が走った。


「ホリンズ!?」

「まったく、驚いているのは僕も同じだよ。何でこんな所で出会うのかなぁ」

「お前、そいつの中に居るのか!?」

「ふふッ、残念、僕はフォレストメイズにいるよ。遠隔操作と言うヤツさ。原理はラジコンみたいなものだよ。どうだい、面白いおもちゃだろう?」


そう言って手足を動かして見せた。

フォレストメイズからノースフィールドまでは直線距離でも百キロ以上離れている。

それなのに、会話の反応や動きをみる限り、ほとんどタイムラグを感じない。

彼はラジコンと説明しているが、原理はもっと別なもののように思う。


「コイツを操っているのがホリンズと言う男か!貴様…我々の町をここまで破壊して無事に済むと思うなよ!!」

「へぇ、ドワーフの割に血の気が多いヤツも居るんだね。もしかすると、キミも転生者なのかい?」

「転生者?貴様が何を言っているのかは知らんが、これ以上先へ進ませるわけにはいかん!」

「そうか、僕らと同じ臭いがしたからもしかしたらと思ったんだが、もしや記憶を引き継がなかったのかな?」

「私はコルグス=エルエミオン。それ以上でもそれ以下でもない!」

「ドワーブ無勢が…ナメるなよ?」


ホリンズはゴーレムを操って先制攻撃を仕掛けてきた。

腕の先に取り付けられたら鋭い爪を振りかざし、地面を滑るように移動して体当たりをしてくる。

巨体が移動した跡にはローラーが作った溝が残った。

全身が金属で出来ている事もあり、重量は乗用車くらいあるだろうか。

正面からぶつかれば、一般道を走る乗用車に跳ねられるくらいの衝撃があるはずだ。


「コルグス、逃げろッ!」


咄嗟に声をあげたが、コルグスは斧を振り上げて雄叫びをあげた。

次の瞬間、力強く斧を振り下ろし、真正面から攻撃を受け止めた。

斧と腕は激しくぶつかって火花が散る。

両者の力が互角なのか、どちらも譲らず拮抗していた。


「バ、バカな…ゴーレムの一撃を止めただと!?なんてバカ力だ…」

「力比べには自信があってな。この程度、跳ね返せぬと思ったか!」


コルグスは両腕に意識を集中すると、肩から手首にかけて筋肉が異常に膨れ上がった。

腕の太さは倍近くになり、両者の間で拮抗していたバランスが崩れた。

次の瞬間にはゴーレムの身体が押し戻され、そのまま尻餅をついた。


「す…凄い…なんて力だ」

「あれがヤツの実力か…」


僕とアルマハウドが呆気にとられている間に、コルグスは再び斧を振り上げてゴーレムに襲いかかった。

しかし、ゴーレムは巨体である事を感じさせないほど、軽い身のこなしで体勢を立て直すと、斧の一撃をギリギリでかわした。


「…ふぅ、危ない危ない。今のはさすがにヒヤリとしたよ」

「フンッ…少しはやるようだな」

「少しは?それは何を見て言っているんだい?」

「強がっても無駄だ。お前に勝ち目はない」

「そうか…では、これはどうだ!?」


ゴーレムは右腕を前に突き出すと、手のひらに炎の球が現われた。

大きさはボーリングの球くらいあるだろうか。

炎の塊である事を差し引いても、直撃すれば無事では済まないだろう。

それでも、コルグスは眉一つ動かさずゴーレムを睨みつけている。


「…死ねッ」


ホリンズは叫びながら火球を放り投げた。

全身を使って投げているとは言え、矢や銃弾よりは遅く、目でも十分に追えるスピードだ。

それでも、プロ野球のピッチャーが投げる硬球と同じくらいの速さはあるだろう。

しかし、コルグスは動じる事もなく、反復横飛びをするように右側へ大きく飛び退いた。

標的を見失った火球は僕とアルマハウドの間を通り過ぎ、後方にあった建物にぶつかって壁を破壊した。

建物は岩と土を組み合わせて作っているため、幸い火事にはならずに済んだ。

それでも、直撃すれば身体がバラバラになるほどの威力がある。

攻撃をかわしたコルグスは、涼しい顔をして斧を担ぎ攻撃の体勢に入った。


「…さすがに驚いた。初見でアレをかわしたのはキミが初めてだよ」

「初見か。貴様は勘違いしているようだな。私はゴーレムの事をよく知っている。アルマたちが造った“守護兵”だろう。そして、魔具の一種でもある」

「そうか…キミは初めから知っていたのか。だから避けられたと。なるほど、納得がいったよ。手の内がバレてしまっていると言うわけか」


一見すればコルグスが優勢のように見える。

しかし、僕の首筋に感じた違和感は痛みに変わり始めていた。

あまりの痛みに首筋を押さえずにはいられない。

それを見たアルマハウドは剣を抜き、警戒態勢に入った。

僕の異変からただ事ではないと察したらしい。


「ほう…口で言う割に随分と余裕だな。だが、お前はこれ以上先へは進めん。終わりだよ」

「キミは短気なのかい?まあいいや、その余裕、粉々に打ち砕いて苦しむ顔が見たくなった」

「まったく、よく喋る男だ…」


コルグスは担いだ斧を天高く掲げた。

その姿はまるで勝利を確信しているようにも見える。

そして、頭上で斧を大きく回転させはじめた。

コルグスを中心に周りの空気が集まっていく。


「なんのつもりだい?」

「貴様にはわからぬよ。知ったところで、この技はかわせない」

「へぇ、面白いじゃないか。やってごらんよ」

「言われなくても…そのつもりだ!!」


コルグスの周りに集まった空気は渦になり竜巻を発生させた。

今日の投稿は時間が足りなかったので短めです…。




ご意見・ご感想・誤字脱字の指摘等があればよろしくお願いします。

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