第9話:「最高のゲームの幕開けだ」
「それじゃ、もう寝るかな」
俺は風呂も入らずに、夜食も食べないまま眠りにつこうとしていた……だが、その時。
カミが俺に衝撃な言葉を言ってきた。
「お前があと願い事二つ言ったら俺は消える」
え……?消える?
「何で」
「”何で”って……。俺はお前の願い事を叶えるために今ここに居るんだ。残り二つ叶えてしまえば、俺の役目は終わるんだ。そして俺は……」
そう言い残すとカミは眠りについてしまった。
確かに。カミの言うとおりだ……。カミは俺の願い事を叶えるために今ココにいる。カミは俺にとって神様なんだからな……。でも”そして俺は……”の続きは何だ?
俺はそればかり気になっていた。
だが、カミを今無理やり起こす訳にもいかない。
俺は気になりつつも眠りに入った……。
「おい、隗斗起きろ」
カミの言葉で俺は目が覚める。
俺はさっそくカミに昨日の事を聞いてみた。ずっと昨日の事が気になっていて俺は額に汗をかいていた。
「カミ……昨日の事。続き話してもらおうか」
カミは少し不安そうな顔をした。今までカミの不安そうな顔は見たことがなく、俺に緊張が走った。
「お前の真実も知ることになるぜ?」
あぁ、良いさ。どんな事でも俺は覚悟できている。
「話してくれ」
カミは窓の外を見ながら俺に話し始めた。
「お前の願い事をあと二つ俺が叶えたら……俺は封印が解けてあの世にいく。俺は、俺の手……通称”猿の手妖怪指5本”の呪いを受けている」
猿の手妖怪……?呪いを受けている?
一体どういう事なんだ。
カミは深呼吸をし心を落ち着かせ再び話し始めた。
「猿の手妖怪指5本の伝説……それは、この世に妖怪が誕生した時。妖怪は妖怪に産まれてきた罰として、人間のために願い事を5つ叶えてあげなくちゃいけない。それで、神様から妖怪に下された罰は終わる……つまり、神様から許して貰える」
俺はベッドの上から下り、カミに勢いよく怒鳴った。
「そんなのおかしいじゃないか……カミは妖怪に産まれてきたくて、妖怪に産まれたんじゃない。そんなの、間違ってる」
「でもこれが伝説なんだ。妖怪の”決まり”なんだよ……。」
”決まり”そう言われたら何の言葉も出てこない、自分が憎く感じた……。カミは俺の不安そうにしている表情を無視してそのまま話し続ける。
「隗斗……、二つの願い事が終わったらお前も死ぬ」
俺の心臓の音はいきなり早くなる。
分かっていたさ、そんな事。だからその手はもう打ってあるんだ。でも、直接お前の口で言われたら俺の思考がニブる……。
「お前も、俺も死なない方法を見付けてあるから大丈夫さ。俺は二つの願い事が終わっても死なない。そしてカミ……お前もだ」
俺がそういうとカミはやっと少し笑みを見せた。
残り二つの願い事が終わって死ぬ運命なんて……。そんなの望んでいないんだよ。
生きてやるさ。
どんな手をつかっても……。
「そろそろ学校に行くとするか」
俺は制服に着替え何も食べずに家を出た。
「隗斗ー!! 担任の先生から連絡が今さっきあって、学校休みみたいよ」
母さんは俺に叫びながら言う。
学校休み……?まぁ、昨日の事があったから学校休みになるのも無理ないな。でも、これじゃ俺のせっかくの計画が……。
「あぁ、今戻るさ」
俺は下を向いてゆっくりと自宅に向かう。
「隗斗、残念だったな」
カミは猿の手から出てきて俺にニヤ笑いをする。
そんなカミに俺もニヤリと笑みを見せた。
「まぁ、良いか。今日は休憩さ」
「今日も家に居るのか?」
カミは退屈そうに俺に悲しい声で問いかける。
そうだな……。たまには出かけるのもいいか。遠い所に行って、他の低脳を殺すというのもまた賛成できる話だ。
「離れに行くか」
俺は母さんにお小遣いを貰って、新幹線に乗り、東京の渋谷に行く。
「キャハハッ、私なんて親父をさ……」
不良の声が、うるさく聞こえる。
「…………」
「どうした、隗斗」
「全員殺したくなる」
俺はそう言い側にあったベンチに座り渋谷の周辺を見渡した。
低脳な奴等を消していく……。時間はものすごくかかる目標だ。一気に殺しても良いが、そうすれば、たちまちニュースで放送され、世間の話題になるだろう。ますます面白くなるかもしれないが……。
……覚悟はいる。
俺は顔にタオルを当て、考え込む。
「俺から遠くに離れることはできるか?」
俺はカミに睨みつけた風な表情を見せながら言う。
「……あぁ、遠くでも殺すことはできる。低脳な奴等を殺す=3つの願い事を終えたコトで、取引してるんだからな 猿の手と妖怪を馬鹿にするな……」
ハハハッ、悪いな、カミ……。そうだったな、低脳の奴等を殺すことで”猿の手”と取引している事を忘れるところだったよ。
面白くするには……何か痕がほしい。できれば”バラ”を一輪置くとか……。証拠になるもの。単に殺していくのも面白くない。
「どうしたよ?」
「カミ……何か痕が欲しいんだ。殺した証拠になるコトが」
カミは俺に不安そうな顔をする。
「だが、痕が残るようなコトをしたら、お前が追いつめられるかもしれないんだぞ」
「わかってる。それが面白いんじゃないか……心配するな」
俺がそう言って軽い笑いを見せると、カミも俺に微笑んでくる。
「俺が額に入るくらいの大きさで、毎回血で”死”って書いてやるよ」
”死”か……。分かりやすいな、それは良いアイデアだ。
「じゃぁ。カミ……頼むよ」
面白くなってきた。
これから、世界は俺中心で動くんだ。
ここからが本番なんだ。
最高のゲームの幕開けだ。