逃避行
昴を罵倒した、リオンの両親二人は、リオンの怒りを買い命を落とした。しかも葬儀はまともに執り行われず、彼らを殺したリオンとその思い人に焼却処分された。浮かばれない話である。
その殺した本人は焼却を終えて荷造りをさっさと済ませると、昴と一緒に屋敷を出て行った。長年世話になったロックウェル兄弟には懇ろに礼を述べていた。学校に通っていた時代の友人であるナノには、ロックウェルに伝言を預けた。
なんともあっけない、籠だった。籠の中の鳥だったはずのリオンは、籠を自ら壊して巣立った。
昴の言っていた通り、昴の歩いてきた道は結構な茨道で、道中追っ手に引っ掻き回されることなんて当然だった。むしろ何もない日のほうが少なく、そんな貴重な日は何かの罠かと疑わせるほどだった。
そんな面倒な道でも、リオンはそれを気にしなかった。昴とずっと一緒にいられるならば、歩いている道が茨の道であろうと炎の道であろうと彼は頓着しないのだ。
「すげ」
昴は足元を見下して感嘆した。周囲には追っ手の死体がごろごろしている。三分の二は銃殺。リオンによって殺された。本来追われている昴が追っ手らをやらねばならないのだが、昴と自分を引き離す者は誰であろうと許さない主義のリオンが神速でほとんどを打ちのめした。狙いも外れていない。狙撃の才能でもあるんじゃなかろうか。
「昴、けがはない?」
返り血をところどころ浴びているリオンはまったくの無傷で、この場に不似合な無邪気そうな笑顔で昴を見上げてきた。
「おー、おかげさんでな。ていうかなんか複雑だ……」
「なんで?」
「これじゃヒモみてーじゃねえか。自分の厄介をお前にまかせちまってよ」
「気にしないで。昴と一緒にいるためなら、どんな苦労だってどんとこいだもん」
「ありがてえわ。でも次からはせめて半分残しといてくれよ? 男としてなんか面目がたたん」
「ん。昴がそういうなら」
そうして二人は死体の山から下りる。
手が、しっかりとつながっていた。
短い! 今のところ、連載はこれ一本なので集中できるかなあ。
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