再会
「よう」
エミリオは、ばっと窓を振り返った。いつの間にか開いていた窓に、土足で足をかけているその男。艶のある黒髪に、吊り上った目、左手には、不思議な力が宿るという武器。
焦がれていた、藤枝昴が、そこにいた。
「す、ばる」
「わり。追手がさあ、いつもよりしぶとくてここに来るまでに時間かかったんだ。本当は毎日行くつもりだったのに。……ごめんな」
昴は窓枠から部屋へ侵入する。申し訳なさそうに手を合わせて軽く頭を下げた。
エミリオは昴の状態に構わず、とたとたと走り寄る。全身全霊込めたタックルのようなやり方で、昴に抱き着いた。
「昴うぅぅ!!」
「ぐおっ! お前、意外と闘牛に向いてんな……」
エミリオの攻撃は思ったより重く、昴は倒れないように必死に下半身に力を込めた。
「昴、昴、すばるうぅぅ……!!」
「おー」
相手を呼ぶために発する名前を、言えなかった分だけここで発散した。昴をがっちりと捕まえたエミリオの両腕に、力がこもっていく。昴の胸にぐいぐいと顔をうずめた。
「会いたかったよお……」
「俺も」
「昴も?」
「おー。追われてる時もさ、これは正直死ぬなって時がいっぱいあったんだよ。でもリオンに会うまで死ぬかーって根性で切り抜けてきた。あれで人生の半分くらいの根性使い果たしちまった」
昴はエミリオの頭と背を撫でてあやす。その手つきはどこか手馴れていた。
「会えてよかった。今、なーんか幸せだ」
「僕も! もういっそここに住んじゃえば? 追手はみんな僕が殺してあげるから」
「ありがてーけど、追手はねえ、なんか最近やけに強くて多いんですよ。リオンを守りながら追手をぶった斬るのはちょーっと荷が重いな」
「じゃあ、僕も強くなる! これでも銃の使い方は習ったから。筋がいいって褒められたんだよ」
「そりゃ頼もしい限りで」
割と物騒な話題にもかかわらず、二人の表情はいつもと変わらない。エミリオの笑顔が、若干幼くなっているだけで、それ以外はいつも通りだった。
今のエミリオにとって、昴を追う者は自分と昴を引きはがす敵だという認識があった。昴と離れたくないエミリオは、それを処分したいと幼稚にも本気で思っていた。
昴は、物騒な行動で示そうとするエミリオの愛情に、何の違和感も抱いていなかった。せいぜい追手の攻撃に巻き込む心配を持っているだけだ。
どちらも気づかない。互いに向けている愛情に、ほんの少しだけではあるにせよ、歪みが生じていることに。
短っ!! でもヤンデレ覚醒する一歩手前まできましたよ。やっとここまで来ましたよいやっふう。