秘策を手に入れたアンドリオン。一方、領主は狂喜の計画を推進し…(第47,48話)
自由都市計画を提案したミナ。その知恵に感動するアンドリオン。
どうしてもミナをそばに置きたいと、アンドリオンは画策する…。
「わ、わたくしにとって重要なのは、行き来の移動なのでございます。
女は同伴者なしでは街道を歩けません。タンブリーに住むということは一人で暮らすということで、同伴者がいないということになり、移動が不便なのです。
エルノーからここに来るのは、家族が同伴してくれますので、問題ないのです」
「わかった。では、君の部屋と、君専用の馬車を与えよう。これで解決だな?」
「あの、御者付きで?」
「もちろんだ」
「本当でございますか?!」
思わず顔がほころびた。
「ああ、約束しよう」
アンドリオンはミナが想像以上に喜んだので、満足した。
「わかりました。では、家族と相談して、またお返事させていただきます」
アンドリオンは拍子抜けする。すぐにでも「ここに住みます!」と言うかと思ったのに…。
「ああ、………さっさと決めよ」
アンドリオンはまたため息をついて、不満気に言うのだった。
* * *
「父上! 父上!」
ミナを送り出すと、アンドリオンは先ぶれもせず、領主の部屋に押しかけた。
すでに食事前の休憩で、領主は仕事を終えてゆったりとしていた。カリディオンはアンドリオンの明るい顔を見て、不思議に思った。
「どうした、アンドリオン。そなた、フレスタで危険な目に遭ったというのに、もう心は癒えたのか?」
「そのことはもうよいのです。シューマイルの気持ちも理解できました。私もひとつ、気づきがあったのでございます」
「ほう…」
「で、いったいどうしたら解決できるかとミナに相談したのでございます。すると、ミナはすばらしい案を出してくれました」
「ほう、すばらしい案とは?」
カリディオンは険しい表情をする。そんなものがあるとは思えないのだ。
「父上。私はシューマイルの考えを聞いて、防御では問題は解決しないということを悟ったのです。
ですから、別の案はないかとミナに意見を聞きました。
すると、あの者が答えたのは、ブリアが『自由都市』になることだと」
「『自由都市』? それはなんだ?」
「誰からも手が出せないような、価値を持つ都市のことです。誰かが手を出せば、他の皆が攻撃する、そう思わせるような価値を持つ街なのです。
今は詳しくは申せませんが、私は希望が見えてきました。また案を練って、ご報告します」
「そうか…」
「そして、ミナには私の顧問という地位を与えようかと思うのですが、いかがでしょうか」
「ほう。それはミナが欲しがるものなのか?」
「ミナが欲しがるのは、どうやら移動手段のようです。ですから、顧問とすることで、馬車と城内の部屋を用意します。そうすれば、ミナは喜ぶでしょう。放っておくと、バンリオルがミナに手を出しそうなのです。ですから、早めにミナを…」
「わかった、わかった。そなたの好きにするがよい」
「は、ありがとうございます!」
そう言って、また風のごとく、アンドリオンは部屋を辞した。
(ふ~む………。さて、それが間に合うかどうか…)
領主カリディオンはもう我慢ならなかった。
最愛の息子アンドリオンを亡き者にしようとしたシューマイル。そして、彼をそそのかしたと思われる王都の王太子アル―スト。カリディオンは、アル―ストに報復を考えていたのだった。
(アル―スト、私はそなたを決して許すまい…)
第48話 ボリックの誘い
アンドリオンとミナが話していたころ、領主の私室では領主にラフカーンが呼びつけられていた。
「ラフカーン。私はシューマイルとアル―ストを許すことができぬ」
領主カリディオンは人払いをした部屋で、ラフカーンに吐露した。
「お察しいたします」
ラフカーンは目を伏せる。
この日の朝に、アンドリオンとラフカーンは共にカリディオンにフレスタでの出来事を報告した。カリディオンは青ざめて聞いていたが、少し震えた手でアンドリオンを抱きしめ、そして二人を下がらせた。
そして今また、ラフカーンを呼び出したのだ。
「私の大事な息子を殺めようとするとは…。それが次期国王とは…。許しがたいことである」
「は、畏れながら、アンドリオン様の暗殺にアル―スト様が関係しているとは、シューマイルは申しておりませんでしたので、これは確実ではございません。グリダッカルの暗殺派かと…」
「同じことよ。ブリアを割譲しようとしておる者がいるから、シューマイルが我らを邪魔者の扱いし、アンドリオンを消そうとする。これが許せるであろうか」
「はい。ごもっともでございます」
ラフカーンはそれ以上何も言えなかった。
「例の件はどうなっておる?」
「はい、なかなか進んでおりません。なにしろ、彼のかたは、城を出ることがほとんどございません」
ラフカーンが言う「彼のかた」とは、王太子アル―ストのことで、「例の件」とはその暗殺計画なのだ。それは第二王子レオストのところで進んでおり、それにブリアが加担している。
「レオスト殿下は当てにならぬ。ブリア独自で動くしかなかろう。あの女を使え。あの女ならば城に潜り込めよう」
「はい。それは可能でございます。しかし、あの女は潜入には向いておりますが、戦闘力はありませんので」
「ならば、もう一人、腕の立つ者をつけよ」
「は。なんとしても、彼のかたをできるだけ早く殺める、ということですね」
「私は前からそれを望んでおる。それなのに、王城から出て来る機会を狙うと言ってなかなか進まぬうちに、我が息子が殺められそうになっておる。やるか、やられるかなのだ。
よいか、ラフカーン。あの女と手練れを送り込め。アンドリオンが死んでからでは遅いのだ」
「…は。かしこまりました」
ラフカーンは領主の部屋を辞した。騎士団長であるラフカーンにとって、領主の命令は絶対だ。
しかし、これは危険な陰謀だった。だからこそ、「王城にこもっているから、出てきたときを待つ」と時間を引き延ばしていたのだ。
王太子アル―ストを殺めれば、国全体が大騒動になる。単に復讐ができるだけにとどまらない。その混乱に乗じてグリダッカルが攻めて来る可能性もある。
それは何度も奏上したが、カリディオンはもう聞き入れなかった。
「フライア…」
彼女を使うとして、誰をともに行かせるか。「シーラの加護」の中から誰を選ぶか。
ラフカーンには一人しか思い浮かばなかった。
「カイル…」
なかなか自分の思い通りにならないミナに、アンドリオンは不満気。
ところで、騎士団の一員として働き、すっかり大人になったカイルに、新たな難題が…
カイルの人生を変える最大の危機が…。
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