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ゲーム理論と、領地を救う策の関係ってなに?! (第47話)

ゲーム理論から、ブリア領を守る秘策誕生…!

第47話 ブリア領を守る秘策とは


 ミナは一人で興奮していた。なんだか解決策がありそうな気がするのだ。まだまだ具体的ではないのだが。少なくとも、MBAではおなじみのゲーム理論が思い出されたのは我ながらおかしかった。


 これは最初なかなか理解できない理論だが、要は、一見オトクでないと思えることが、実は最上だということだ。しかし、全員が必ずそれを選ぶという条件設定が難しい。だから、なかなか実現しないのだ。


(つまり…。領地に誰も手が出せないようにすればいいわけだから…)

ミナの頭が高速で回り始めた。

(そんな国、あったっけ…?)


 「ええと…」と現代社会を思い出した。

(そうだ! 現代社会には、そういう国がいろいろある。たとえば…スイス! それから…)


 ミナはそれらがなぜ手の出せない都市になりえたのかを考える。

(つまり、自由都市になればいいんだ! でも、どうやってなればいいんだっけ?)

 ミナは険しい顔をして、真剣に考え始める。


 少し考えては、次にニヤニヤとし始める。

(うん…。これはいけるかも…?)


「ミナ、一人でニヤニヤしていないで、さっさと説明せよ」

 アンドリオンは早く知りたかった。もしかして、この状況に解決策があるというなら、それはまるで魔法ではないか。


「解決策はございます。ですが、そこに至るまでにどれだけの知恵と働きと時間が必要かは、わたくしには想像ができません。一度も実行したことがないのですから」

「いいから話せ。いったいどうすれば、ブリアは救われるのか?」


「それは、自由都市になることなのです」

「自由都市…? それはなんだ」


「ブリアはアラゴンキアから独立します。いえ、アラゴンキアの一部でも良いのですが、アラゴンキアとは別の機能を持ちます。そして、口出しをさせません。つまり、誰の所有にもならないと宣言するのです」


「バカなことを。そんなこと、自分が言えば許される、というわけにはいかないだろう?」

 アンドリオンは腕を組んで、バカにしたように「フン」と首を振った。「期待した自分がバカだった」と言いたげだった。


「そこでございますよ。そこを、作り上げるのがこの案の肝なのです」

「というと?」


「つまり、手を出したらソン、誰も手を出さなければトクという条件を作り上げること。もちろん、何もしなければこれは成立しません。それを作り上げる。誰にでもできることではございません。ですが、作り上げたら勝ちなのです」

「ふーむ。想像がつかぬ…」


「たとえばですが、砂漠のような水のない土地に、魔法のツボがあるとします。誰のものでもなければ、いくらでも水を与えてくれるのです。


 でも、誰かがそれを自分のものにすれば、その人にはわずかに水は出ますが、土地を潤すことはできません。ツボをめぐって二組の勢力が争えば、その水は二度と出ないのです。どれが一番得ですか?」


「それは誰のものでもなければよいのだろう。そうすれば、誰もがそこからの水を汲み上げることができる。そのツボが誰のものかということはどうでもよい」


「そういうことです。つまり、誰のものでもないから、利益を得ることができるというものをブリアが持てばよいのです」

「誰のものでもないから、利益を得ることができる…。それは持とうと思えば持てるのか?」


「たとえばですが、わたくしのいた世界では、スイスという国がございました。これは、とても小さな国です。ここは大きな国に挟まれて、何もしなければどこかに併合されてしまったでしょう。

 しかし、スイスは頭が良かったのです。銀行という、お金を預かる商会を作りました。大商人たちの資産を預かるのです。すると、どうなったと思いますか?」


「ふむ…。その国に誰も手を出さない…となるわけか?」

「その通りです。大商人、大富豪は、力のある人たちです。

 この人たちは、自分の国が戦争になると、お金が減ってしまいます。ですから、自分の国の影響を受けないように、外国に資産を先に逃がしておきたいのです。それをスイスが一手に集めました。


 すると、この国を誰かが掌握すれば、全世界の富豪が困ります。

 ですから、スイスを掌握しようとすることは、その他の国全部を敵にすることになります。だから、手を出せないのです。


 誰の国でもないからこそ、誰の指示も受けない。だからこそ、ここではどの国の商人も平等に守られるのです」


「なるほど。つまり、ブリアが戦うのではなく、ブリアに手を出せば世界を敵に回すことになるぞという脅しが効けばよいのだな?」


「そういうことでございます。

 他にも例がございます。香港という小さな町です。この街は港なのです。ここで取引をするものは、税金がかからないという約束をしたのです。これを『自由港』と呼びました。


 すると、世界中の商会がここで取引したいと望みます。そして、ありとあらゆるものがここに集まったのです。もし、ここがなくなったら、取引するのに不便ですし、税金がかかります。ですから、みんながここを守ろうと思うのです」


「なるほど。理解したぞ。つまり、一つの国に所属して、一つの国に利益を与えるのではなく、多数の国に利益を与え、ここがなくなれば損をすると思わせる。すると、一つの国が奪おうとしても、他の国がこぞって反対するから、その領地は守られるということだな?」


「はい、その通りでございます!」

ミナはビシッと人差し指を立てた。


「う~む………ミナ、これはすごいぞ! できそうな気がしてきた。ブリアにはコブルー港がある。そこは国際港なのだ。ここがその自由港になればいいということだな?」

アンドリオンは興奮して、目が輝いてきた。


「防御でも攻撃でもない。これは革命的ではないか…」

「ですが、わたくしには、細かく考えることはできません。これは国家間の貿易を扱うような大商人の協力が必要でしょう」


「そうだな。私にも具体的な利益を考えることは難しい。だが、このブリアに集まる大商人たちを集めれば、何かが生まれるやもしれぬ」

「はい。アンドリオン様、力で守る国はいつか滅びますが、利益で守られる国は誰も壊せません」


「そのとおりだな。我が領地はこれまでどれだけの資金を費やし、領地を守ろうとしたことか。だが、結局、守れぬのだ。

 そして、ここまでしてきたはずの我々が内側から裏切られ、暗殺されようとしている。この理不尽が許せなかった…」


 アンドリオンはこぶしを握って悔しさを思い起こした。だが、顔を上げてミナを見た。

「ミナ、君は賢い! よくやった」


「は、恐れ入ります。ではこれにて帰らせていただきます」

「ちょっ…、ちょっと待て…」


 アンドリオンはジト目でミナを見た。自分の高揚した気分をともに味わいたいと思ったのに、「そのそっけなさはなんだ?」と文句を言いたい。

「は、何か…?」

 アンドリオンはがっかりしたように、深いため息をついた。


「君は何もエルノーに住む必要はないであろう? 君が「家族」と言うあの男も城内の宿舎にいるのなら、君もここに住めばよいではないか」

「は、タンブリーにですか?」

「そうだ」


「はあ…。お誘いを受けたお屋敷が一つありますが…」

「なに、誘いを受けた屋敷? どこだ?」

「あの…バンリオル商会のお屋敷ですが…」


「バンリオルだと?! なぜバンリオルが君を欲しがる?」

「いや、欲しがっているとかではないと思いますが…」

 ミナはアンドリオンの追及に冷や汗をかきながら後ずさりする。


 アンドリオンは父の言葉を思い出していた。「ミナを確保せよ」と。バンリオルは王都の商人で、いわゆる「王都派」。それはつまり、ブリアの敵だ。そんなところにミナを取られたら、父のお叱りを受ける。


 アンドリオンはソファから身を乗り出し、ミナの両手を取った。

「ミナ。君はここに住め。母上が部屋を与えたであろう?」

「は、あれは控室で、フィルベラ様のお部屋のそばですので、そんなところには畏れ多くて住めません」

 心底あきれたようにミナは言った。


「では、私が部屋を用意する。城内だが、気兼ねなく住める部屋だ。それでどうだ?」

「はい…、で、でも…」


 ミナは後ずさりしたかった。

(なんだ、このプレッシャーは…?! なんでこんなにこだわるのよ?)


 アンドリオンの真剣な顔の意味がわからなかった。


ブリアは侵略されずに済みそうだけど、ミナはアンドリオンに侵略されそう…?

いや、アンドリオンが勝手に、バンリオルがミナを侵略しそうだと勘違い?


ミナはそろそろ、村娘卒業か?!


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