救えぬ領地とアンドリオンの苦悩 (第45,46話)
アンドリオン、自分の領地内で、裏切りに遭う…。しかし、…
今日から、1話の区切りで投稿するのをやめました。
そのとき、扉が開き、大量の騎士たちが会議室に剣を突きつけながら乗り込む。敵の騎士たちだ。アンドリオンが出てきたところを斬りつけるつもりで待っていたのだ。
それをラフカーンが猛獣のように斬り倒し、扉の前を抜けていく。外にいたアンドリオンの騎士たち8人はすでに麻痺させられ、倒れていた。
「なんということを!」
ラフカーンは怒り心頭だ。仁王のごとく、敵を斬り捨てた。
アンドリオンは自分が床に倒れたままであるのに、敵が自分に剣を向けていないことを不思議に思ったが、すかさず足をひっぱられ、テーブルに下に引き込まれる。
「こちらへ」
かすかな女の声がアンドリオンの耳に響く。そして、その横に4人の男がスッと姿を現した。
(これは認識阻害魔法か)
自分がそれを掛けられて、テーブルの下にかくまわれたのだと理解した。
フライアは深呼吸をする。魔法をとぎれとぎれでかけることで、時間を延長しているのだ。
「いいですか、これからまたナスコム…認識阻害魔法を掛けます。私から離れてはいけません。そして、あの扉を抜けて、外に出ます。あとはこの男たちがお守りするでしょう」
「わ、わかった」
「では、行きます!」
ラフカーンとラッシェンが大暴れするなか、6人は姿を消して、会議室から飛び出す。その通路の確保のために、ラフカーンはドア付近で戦っているのだ。ドアがバタンと閉められ、その音でラフカーンはフライアがアンドリオンを逃がしたと知る。
「ラッシェン、逃げるぞ!」
そう言って、ラフカーンは最後の一振りの剣を振るい、ラッシェンと共に逃げ出した。ほぼ全員、戦闘不能にしたはずだ。
8人の部下を置いていくことは悔しいが、おそらくシューマイルは殺しはしないと願いながら。
途中でナスコムが消える。そこへ、正面から騎士ではない、別の男が一人現れた。どこからか、衛兵たちが集まる足音も聞こえる。
フライアはまたナスコムを掛け、アンドリオンとカイルを消したが、他の男たちはその範囲外だった。
「うぉっ!!」
ナッシュが叫ぶ。
新たに表れた男が魔法を撃ったのだ。それはナッシュの肩に当たり、彼は後ろに飛ぶようにのけぞった。
フライアとアンドリオン、カイルは柱の陰に隠れて、それを見る。
「あ、あれは…」
「ピット。石弾よ」
カイルの問いにフライアが答えた。カイルは、それがミナの持つピッターと同じ武器だと理解した。
魔道具ではない、魔法使いそのものの指から出ている。それも一度に5発出るのだ。
皆、柱に隠れたため、ナッシュ以外は当たらなかったが、ラフカーン、ラッシェン、カリス、メローはそのまま柱の陰に隠れた。
しかし、彼らは遠すぎてナスコムが効かない。人数が多いほどナスコムを掛けられる範囲は狭くなる。
(どうする…?)
汗びっしょりになりながら、カイルは問うた。このままではラフカーンが死ぬ。そして、自分はどうだ?
彼の未来視はまだ出てこない。つまり、カイルはこのままだと逃げられるのだ。それはナスコムが効いているからだろう。
「フライア、俺のナスコムを解け」
「えっ…?」
「いいから、早くしろ」
「わかった…」
フライアはカイルのナスコムを解く。ラフカーンがカイルに気づいた。つまり、ナスコムが確かに消えたということだ。
それを確認して、カイルは柱の陰から出る。すると、カイルの脳裏に絵がパラパラと現れ、1枚の絵で止まった。魔法使いはラフカーンを攻撃していたが、カイルに気づく。
その瞬間、カイルはアンドリオンのマントをさっと剥がした。
「借ります!」
そして、そのまま魔法使いにつっこむ。当然、魔法使いはピットを打つ。しかし、その男が魔法を撃とうと指を向けた直後に、カイルはマントを広げて盾にした。
魔法は、それを向けられた相手に発動する。それまでは実存ではない。だから、発動する前に他のものが混ざると霧散する。ピットはカイルには当たらず、マントに当たり霧散する。
そのままカイルは突っ込み、マントを男にかぶせ、剣で横から薙ぎ斬った。手ごたえを感じて、彼は叫ぶ。
「走れ!」
「ダメ、ここに集まって!」
フライアが姿を見せた。
全員がフライアに集まり、そして、姿を消す。ナッシュは肩から血を流しながらフライアの元に合流した。
「バカね! 血を抑えて!」
フライアが走りながらナッシュに怒鳴り、ラフカーンが上着を脱いでナッシュに掛けた。
外には敵はいない。アンドリオンの騎士20人がまだいるからだ。
「馬車を出せ! 馬に乗れ! 立ち去るぞ!」
ラフカーンが叫ぶ。
何事が起きているかわからぬまま、フレスタの衛兵は茫然として馬車と馬上の騎士たちを見送った。城から衛兵が追って出てきたときには、すでに撤収していた。
そして、全速力でフレスタを駆け抜ける。
「ふう…」
アンドリオンとカイルは向かい合わせに座っている馬車の中で目が合い、二人でほっとした瞬間、わずかな笑顔が浮かんだ。
アンドリオンはびっしょりかいた汗なのか、涙なのか、わからないまま目をぬぐった。
第46話 ミナの提案する不思議な理論
命からがら戻ってきたタンブリー城内の執務室で、アンドリオンはこぶしを握り締め、何度も机に打ち付ける。
「なぜだ? なぜ?……」
うまく言葉がでない。誰に何を言いたいのか。シューマイルの言葉も理解できるのだ。この領地に生まれたせいで、ずっと戦いの心配をしなければならない。
それは時代が進むにつれ、さらに頻繁になるだろう。必要な物資は増えていき、貿易は活発化する。それに伴い、航海術も船の建造技術も上がるのだ。時代は後ろには進まない。だから、グリダッカルが海をあきらめることはないのだと。
シューマイルはそれに気づき、アンドリオンもそれに気づいた。
防御は真の解決法にならないのだと。
(真の解決法が見つからないのだ…)
では、割譲なのか? それは受け入れられない。
グリダッカルとアラゴンキアは、文化も宗教も異なる。グリダッカルの一部になるということは、それらを根底から否定されることだ。そんなことが許されるだろうか?
(なぜ解決法がないのだろう?)
解決法…という言葉がアンドリオンの頭の中でこだました。
「解決法があるとしたら?」
ふと顔を上げて、周りを見回す。ここは別棟の執務室だ。人払いをしているので、誰もいない。
アンドリオンは声を上げて、侍従を呼んだ。
「お呼びでございますか? アンドリオン様」
「ああ、今日はエカーリアのところにミナが来る日だろう?」
「さようでございます」
「エカーリアの時間が終わったら、私のところに来るように伝えてくれ」
「かしこまりました」
侍従はまた出て行った。
解決法はみつかりそうもない。だが、ミナと話したかった。何か見落としているものはないか。何か希望はないのか。そのヒントでもいい。ミナと話すことで、何かが得られないかと思った。
* * *
裏切られても、相手の言い分にも理がある、と知るアンドリオン。
その解決法はないのか?
なぜかミナに聞きたかった。ミナが答えを持っているとはわからないのに…。
そこで出て来る理論とは?
やっと、MBA的になってきた?!
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