表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/46

第45話 アンドリオンの危機 その1

だんだんと本題に入ってきました。この領地は、今危機なのです。

「アンドリオン、フレスタの工事で問題が出ている」


 アンドリオンの側近であるラッシェンが会議室で報告する。ミナに少し下卑たことを言った少し粗野な印象の男だ。アンドリオンの学生時代からの仲間なので、呼び捨てだ。会議室には数人の男たちが書類を並べて各地の情報を確認していた。


「工事のほうは順調だったのだが、ここにきてシューマイル子爵にどうも問題が生じている。王都の反対派がそそのかしている情報があってな…。それに乗ったのか、労役の者たちが一斉に引いてしまった」


 フレスタはグリダッカルが攻めてくるときに必ず通る街道に位置する街である。その東側に長い城壁を築くことによって、グリダッカル軍の侵攻経路を阻もうとして、3年前から工事を進めていた。これはブリア領の中でもかなり金のかかる大事業なのだ。


街道を塞ぐといっても、山々に囲まれて一番狭くなるところでさえ、20キロの幅がある。これを城壁で塞ごうというのである。


「王都側のそそのかし? それは王太子側ということか?」

「ああ、そうだ。ブリアを割譲しようとする側につきそうなのだ」

「なぜそんなそそのかしに乗る?」


 アンドリオンは思わず声を荒げた。フレスタを守ろうとして壁をつくっているのに、当のフレスタ城主であるシューマイル子爵が割譲案に賛成だとは…。信じられない。


「あそこは最前線だ。このままだといつまでも戦争の脅威から解放されない。だったらいっそのこと…ということなのだろうな」

 アンドリオンは怒りに震えた。


 壁は6割は完成している。これまでに掛けた労力や金がすべて無駄になってしまう。

「愚かな…。なんということだ。今までの努力を水の泡にすると言うのか…」

父が王太子を憎む気持ちがよくわかる。アンドリオンはこぶしを強く握って悔しさをかみしめた。


「ラッシェン、いますぐにフレスタに行くぞ」

「お、おお…。わかった。準備するからちょっと待て」

 ラッシェンは部屋を飛び出す。


 部屋で待機していた侍従も飛び出し、旅の準備をしにいった。フレスタまで馬車で飛ばしても2日かかるのだ。


 しばらくすると、会議室にラフカーンがやってくる。

「アンドリオン様、タンブリーを出られるのですか?」

「ああ、これは捨て置けぬからな」


「フレスタには暗殺者がいますぞ。まだタンブリーには来ていないようですが、フレスタには必ずいます」

「とはいえ、行かぬわけにはいかぬ。内側から裏切者が出るなど、許せぬ。これを許しては、次々に裏切者が出ることになるだろう」


「…は。承知いたしました。では、護衛のものを配備いたします」

 そう言って、ラフカーンは出て行った。


 訓練所で模擬戦をしていたカイルは、メローに呼び出された。

「カイル、出動だ。団長の指名でお前を連れていく」

「わかりました」


 カイルは旅に必要な装備を持ち、メローと共に馬車に乗る。そこにはすでにフライア、カリス、ナッシュが乗っていた。馬車の中でリーダーのメローが説明する。


「アンドリオン様がフレスタに行かれる。暗殺者はそこを狙うだろう。護衛には騎士団が30人ほどつくが、安心はできん。我々は一足先にフレスタに向かい、安全を確保する」

「はい!」


「油断するな。これはかなり難しいぞ。団長の話では、フレスタのシューマイル子爵がすでに裏切っている可能性があるということだ」

「え? ということは、フレスタの城内で襲われる可能性もあるのでは? 我々は城には入れませんが…」


「うむ。問題はそこだ」

 皆、押し黙った。

「フライアに頼むしかないな」

 フライアは腕を組みながら、頷いた。


 メローはカイルを見ながら説明した。

「フライアは認識阻害の魔法、ナスコムを使う。つまり、敵に見えない。それはフライアのみならず、我々4人がフライアのそばに固まっていれば、我々も認識されない。だから、城に入ることは可能だろう」


「でも、長い時間は無理ね。この人数だとだいたい30分程度かな…」

 これはかなり難しい。

 アンドリオンと子爵の会談が30分で終わるはずはないので、途中で必ず姿がばれる。

 そのときの安全確保は個人で対応しなければならない。衛兵の多い城内で身を隠すのは不可能に近い。


 さらに、会談中に潜んでいたことがばれれば、子爵に敵対するものと思われ、アンドリオンの説得も意味がなくなる。


「で、暗殺者というのはどんな奴らなんです?」

「わからない。もしかすると、剣士とは限らない。魔法使いもいるかもしれん」


 メローの言葉をナッシュが補足した。

「魔道武器を持っている可能性もある」

 カイルは顔を曇らせた。


(魔法使い…)

 カイルは魔法を使う魔物とは戦ったことがあるが、人間の魔法使いと戦ったことはない。

 そんな不安を胸に、馬車はフレスタに向かった。



 アンドリオンは騎士団に守られ、無事にシューマイル子爵の居城についた。城内に入れるのは10人の騎士たちだけである。

 ラフカーンもアンドリオンに同行して、先頭を歩いてアンドリオンを守る。カッカッと騎士たちの靴が音を立て、城内に響く。


 そして、アンドリオンはシューマイル子爵の待つ会議室に入っていく。しかし、そこで子爵の護衛に、アンドリオンの騎士たちが止められる。


「恐れ入りますが、会議室の中に入るのは2人までにしていただきたい」

「ほう…。会議室は広いようですが、全員は入れませんかな?」


 ラフカーンは会議室の扉に立ち、少し騎士たちを後ろに下がるように手振りをして、扉を開けたまま、子爵に尋ねた。

「ええ、機密情報をお話しすることもありますから、アンドリオン様の信頼する者2人のみにお願いいたします」

 そう言って、子爵はにやりと笑った。


「そうですか…。ラフカーン、ラッシェン。その方ら、参れ」

 そう言って、アンドリオンは二人に入るように言い、席についた。大きなテーブルに、わずか二人が座り、残りは立って二人を見守っている。


 シューマイル子爵は40代の壮健な男である。その側近としてそばに立っているのは二人の騎士だ。文官がいない様子に、アンドリオンは話し合いの意志がないことを悟った。


「単刀直入にお尋ねしましょう。子爵はこの工事をどうお考えでしょうか?」

「もうお聞き及びと思いますが、私もそろそろこの現状に疲れましてね。工事を引き上げようと思っているのです」


「それはつまり、グリダッカルを防ぐ気がないと?」

「まあ、そこまでは申しませんが…。これ以上、血は流したくございません。ご存じと思いますが…」

 そこで子爵は表情を変えた。すごみを帯びた目つきがきらりと光る。


「私の息子たち二人は先の戦争ですでに亡くなりました。残されたのは妻と3人の娘たち。これでどう戦えばよいでしょうか?」

「……」

アンドリオンはすぐに返答できなかった。


「この国は戦いを続けてもう300年になります。いつ平和が来るのでしょうか?」

 アンドリオンはまだ答えられない。


「戦い続ける限り、民も貴族も、息子たちを失い続けます。グリダッカルが海を諦めることは……期待できないのですよ」

「そ、それは……アルースト殿下のご意見なのですか?」

「いいえ…。私が……そう考えたのです」


 すっとシューマイルは立ち上がって、部屋の奥に下がる。

 その理由がわからないまま、アンドリオンがそれを見送っていると、いきなり騎士二人に斬りつけられた。


だが、ラフカーンはすかさず剣を抜き、その一撃を跳ね返した。

「アンドリオン様! お逃げください!」


 アンドリオンは慌てて会議室を出ようとするが、そこで何者かに後ろから倒された。


アンドリオンは無事か? カイルは何をしている?


そして、ミナはこの領地を救えるのか? 


よかったら、ぜひブックマーク、お願いします! あるいは、高評価、いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ