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第41話 太陽神の祝祭

領主の息子にはいろいろな役目が…。若くてもそれをやり遂げる。それって、表面では平気そうに見えても、内面はけっこうドキドキ…。

11月15日には太陽神テラスの祝祭がある。

 タンブリーの中央地区にある中央教会の祝祭で、中央地区の大通りから城郭前の広場で、騎士団の行進、街の娘たちの踊り、仮装した男たちの行列、音楽隊の演奏など、楽しめる行事があるのだ。


 村人たちもタンブリーの街にやってきて、村に割り当てられた場所に陣取り、見学する。エルノー村の場所は領主一族が見学する場所の向かい側であった。村にも格があり、2000人の人口を持つエルノー村は麦の収穫量も多く、格上の村なのだ。


 祝祭の特別席の権利を獲得した村娘たち6人はすばらしいおしゃれをして、村長、副村長の並びに席を陣取った。目の前の通りを挟んで、左斜め向かいには領主一族の席がある。特別席には村から運び込んだ椅子が並ぶが、その他の者はみな立ち見だ。


 ミナも初めての祝祭見学を楽しみにしていた。ミナの家からはレイとカイル、スージャが来ていた。

「スージャ、手を放すな。迷子になるぞ」

 カイルがスージャの世話をする。ヨーカからしっかり面倒を見るように言われているので、カイルも真剣だ。


 今日は近隣の12の村から人が集まるので、普段は見ないようなすごい人出なのである。

太鼓が鳴り響き、行進が始まる。まずは先ぶれ役の道化師たちだ。スージャが見えるように、カイルが高く抱きかかえる。村では見ない者たちを見て、スージャは目を輝かせた。


 レイが屋台で饅頭のようなお菓子を買って来て、みんなに配ってくれた。

(いいなあ。祭りって…)


 ミナも幸せな気分だ。ディズニーランドでパレードを見るために道路に並んで待っている気分だ。

 それから音楽隊が出てきて、そのあとに踊り子や仮装行列が続く。


 少し遅れて、領主一族が席に着き始めた。無礼講なので、その場で礼を取る必要がなく、その間もパレードは続く。領主、領主夫人、そして、アンドリオンと、そのほか12歳と、10歳くらいの男の子二人、8歳くらいの女の子もいる。そこにエカーリアはいないようだ。


「カイル、見て。あのプラチナブロンドの男性。あれがアンドリオン様よ」

「ふうん…」

 カイルもアンドリオンは見たことがないのだ。祝祭は何度か来ているが、領主一族に興味がない。


「子供、全部で5人もいたんだ。知らなかった。年が離れてるなぁ」

「第二夫人がいるんだろ?」

「え、そうなの?」

「うん、普通いるだろ」

「へぇ…。そうか」


 たくさんの花で飾られた太陽神テラスのシンボルを掲げた馬車が通り、そのシンボルの前には4人の導師が立っている。高位の導師たちなのだろう。そして、その馬車の後ろには下位の導師たちが並んで歩く。高位の導師たちのローブの色は紫で、下位の導師たちのローブの色は青と茶、えんじだ。色で地位がわかるようになっている。これがメインの行列だ。これが通り過ぎると、領主の言葉をいただくことになっている。


 ミナは6人の村娘たちの様子をうかがおうとしたが、残念ながら、前に座っているので後ろの人垣からは見えない。

(きっと、アンドリオンを見て喜んでいるのだろうな。長めのプラチナの髪が女心をそそるロマンチックな人だから。…見かけだけは…)


 他には適齢期の領主一族はいない。しかし、領主一族の左右の席にも貴族の御曹司たちはいるので、そちらも目当てかもしれなかった。


 一通り行進が終わり、いよいよ、領主の出番である。太鼓がドドドドン、ドドドドンとなり、領主が立ち上がる。すると、民衆はパッと静かになった。領主席は一段高くなっており、そこに立っているので、領主の顔を誰もが見ることができた。ミナが以前見たときとほとんど変わらない。


「皆、今年も良い収穫ができ、よく働いてくれた。感謝しよう」

そう言うと、民衆から「おお~!!」という歓声が上がる。


 それから領主は今年の冬から秋の間にあった良い出来事を並べ、統治がうまく行っていることをアピールする。


「そして、今年は『ポロスの祝福』と名付けられた、村の力試しの行事を開催した。これにより、このタンブリー周辺の12の村で一番の優秀な団結力を持つ村が選定された。ここで、それを表彰する。オーソン村の代表者たちよ!! 前に出るが良い!!」


 すると、最前列に陣取っていた20人の男たちと村長が前に出る。

 アンドリオンが領主のそばに立ち、表彰の内容を述べる。


「この者たちは、与えられた課題に立ち向かい、知力、胆力、統率力、団結力を発揮し、12の村のなかで最高の成績を収めた。よってこれを称え、この「ポロスの祝福」の名誉の板絵を授ける」


 そして、人の顔の4つ分くらいの大きさの板絵を両手で高く掲げて、左右にゆっくりと動かした。金色のそれは太陽を反射し、キラキラと輝いた。観客席から「おお~!!」という歓声があがる。

「なお、副賞は上級酒ひと樽だ。これは村に送り届けよう。では、板絵を授与する」

 それを領主に渡し、領主から村長に渡される。


「見事であった。これからも励めよ」

「はは~! ありがたき幸せにございます~!」

村長は大きく頭を下げ、20人も一斉に礼をした。


 観客席からは大歓声と拍手の嵐だ。まるで英雄を称えるような民衆の歓声に、オーソン村の参加者たちは誇らしげに手を振る。


(う~ん。りっぱだったわ…)

 ミナはアンドリオンの堂々たる口上に感心した。


「ほれ、終わったぞ。下ろすぞ」

 カイルはスージャを腕から下ろした。

「ありがと。カイル」

 それから、カイルとミナがスージャと手をつないで帰る。レイはまだうろうろしたいようで、そこで別れた。


「ねえ、ミナ。ミナは領主様に会ったことあるんでしょ?」

「うん。あるわ」

「どんな方?」

「う~ん。優しい方かな? あんまりお話ししていないけどね。私のような村娘にも、きちんと話を聞いてくださるの。そして、褒めてくださった」

「ふうん。そうなんだ」


「じゃ、アンドリオン様は?」

「う~ん。賢い方かな? 行動が早くて、知らないことはしっかりと人から学ぼうとする賢いかたね。それに責任感が強い」

「へぇ…。そうなんだ!」


「人から学ぶって大切なことなの。それがいつまでもできるってことが、一番偉いんじゃないかな」

「そうなんだ…」


 そこへ、ミナに声をかけてきた男がいた。

「ミナ殿。アンドリオン様がお呼びでございます」

「あ、侍従さん…」

ミナはカイルと顔を見合わせた。


「帰りは送ってもらえるんだろ? 俺たちは先に帰っているよ」

「うん、わかった…」

 せっかくの家族団らんをよくもじゃましたな、という気持ちもあったが、おそらくアンドリオンは自分がうまくやったかをミナに聞きたいのだろうと思ったので、行くことを了承した。


 侍従が連れて行ったのは、アンドリオンの待つ馬車の中だ。

「ミナ、いかがであったか? 見ていたのであろう。私はちゃんとできていたか?」

(やっぱり、そのことか)


「はい。大変お見事でございました。観衆も皆、興奮しておりましたわ」

「そうか…」

 アンドリオンは心の底から安堵した様子だった。それから、フッと自嘲するように笑った。


「君にはおかしく見えるだろうな。領主の息子がこんなことで緊張したり、結果を気にするとは思うまい」

 そう言って、彼ははにかんだ。


 ミナはその様子にちょっと驚いた。アンドリオンも所詮、22歳の若者なのだ。それがこれだけの重圧を感じ、それをやり遂げる。そして、周りには当たり前だと見られて褒められないし、褒められても喜びを表現するような顔はできないのだ。


 ミナはニッコリして、ゆっくりと言った。

「いいえ。領主の息子に生まれても、緊張は緊張ですし、苦難は苦難です。初めて体験することは誰しも怖いのでございます。

 ですが、アンドリオン様は、最初から最後まで、すばらしい努力をなさいました。 

 領主様からの無理難題にも見えるご命令に、真摯に向き合い、無理と思わず解決策を模索なさいました。そして、何度も自分で考え、行動し、それでも足りなければ、わたくしのようなものにも意見をお聞きになりました。

そして、素直にそれを受け止め、その通りに、いえ、それ以上に見事に遂行されました。このように努力なさることはなかなかできることではございません。わたくしは感服いたしました」


 そう言って、頭を下げた。

 アンドリオンは笑って、「君には私の弱点が見えているのだな」と言った。


「アンドリオン様、わたくしは心の扱い方も学びました。それは、自分で自分を褒めることなのです。人から褒められるのを期待するのではなく、自分で自分を褒めます。それにはコツがございます。心の中には子供のままの自分もいれば、大人の自分もいます。

 一番褒められたいのは、その中の子供の自分なのです。ですから、一人になったときに、自分の中の子供の自分に向けて、自分を褒める言葉を言うのです。なんども繰り返し言います。すると、心の底からうれしくなります」 


「そうか…。なるほど…」

 アンドリオンはうれしそうに、唇をなんどかかみしめて、言葉を味わっていた。


今回は、褒める、表彰する、などが重要ってこと。

心がまだ未熟なときには、人に褒めてもらうことが目標になります。

でも、上に立つ人は、自分で自分を褒めることができないとだめ。


そんなことを受け取ってもらったないいな。


次回はやっと、この領地の問題点が出てきます。


話はこのあたりから、ミナの事業から領地の話に移ります。


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