表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/31

ep24:交錯

ソルヴェが通信を飛ばし、呼びかける。


「所属と目的、訪問先ホストを言え。応答なき接近は敵対行為とみなす」


潮風が通信音をさらい、海に溶かしていく。しかし応答はない。4つの機影は、菱形の編隊を保ったまま崩れることもなく接近してくる。


ゼンはスコープを覗く。既に射程内ではある。どんな性能かわからないが、狙撃が有効ならば射程でゼンははるかに有利だ。


しかし……撃っていいのか。

そして撃てるのか。


「ロスル、浮遊盤はどこを狙えばいい?」


震える声に音声が答える。


「飛行能力を奪うならばストレージの一部を破壊することだ」


ひと呼吸おいて言葉が続く。


「……その後どうなるかは、事故だ」


ゼンは改めて銃把を握り込む。

あえて息を吐き、深く吸ってからソルヴェに問う。


「もう敵でしょ。このまま先手をとらせるの?」

「……様子を見る。二手に分かれよう。それぞれ研究所から離れておく。相手の狙いがわかるからな」

「了解」


高度を上げ、加速するソルヴェ機。

宣言通り、少し逸れた方向へ飛んでゆく。


「始めるなら、研究所から離れた地点だ。あっちが撃ってきたら対応していい」

「……了解」


ゼンもソルヴェと離れる方向に高度を上げる。

間もなく編隊は2機ずつに分かれ、ソルヴェとゼンに向かって進路を変えた。


第一の狙いは、護衛ぼくらか。

研究所への強襲はないと見ていいか……?


ソルヴェはある程度飛び、編隊に向き直ると接近に切り替えた。

互いを阻むものは、もはやない。みるみるうちに互いの距離が縮まる。


ソルヴェは相手の射程を予想したのだろう、降下しながらすれ違った。

その時、敵機から敵意を持った光が放たれる。


「実弾だ」


ロスルの判定。その意味を思考する余裕はなかった。

光弾はソルヴェ機の脇を抜け、後方の海面に白い水柱を立てる。空気を引き裂く高い音が遅れて届いた。


旋回するソルヴェの機体から小さく光が放たれる。後ろにつけた一機からも同様の射撃。

互いの弾道が空中で交差し、弾けた。ソルヴェが後方に攻撃を向けた一瞬後、その射線と重なった機体がぐらりと傾く。


「……当てた」


浮遊盤同士の戦闘ドッグファイトは初めて見るものの、イメージの範囲内で、なんとか目はついていく。

高速のサーペント、アレス、ソルヴェ機。ここのところ目にした動きが思い起こされる。これが経験というものか。


被弾した敵機はぐらついたものの持ち直したようで、再び上昇しはじめる。


意識を切り替え、ゼンは自身に向かってくる機体をスコープに収めようとする。が、狙いが定まらない。

心音が大きい。耳の奥でごうという音が鳴る。スコープの景色が小刻みに揺れている。


「撃つな。撹乱を」


冷静な声が届く。バイタルで筒抜けというわけだ。

ロスルが戦闘中に音声を発するのは異例で、だからこそ、自身が平常心ではないということを自覚せざるを得ない。


「……あちらは狙撃を知らない。手の内を明かすのは、当てる時でいい」

「なんだ、フォローか?今日は優しいね」

「落ち着いて見ることだ。こちらの方が速い」


ソルヴェも速度で優っており、下がり気味に対応している。こちらの二機を引きつけることができれば、役には立つ。


ゼンはわざと低めに飛び、海上すれすれで敵機と交差すると、90度転回してソルヴェの方向に背を向けて飛ぶ。

敵機は交差する射線をとろうとしているようだ。


追いすがる一機が発砲し、海面にしぶきが立った。

あれくらいなら少しかすっても耐えられそうだ、とも思う。


「確かに、遅いね」


今は撃たないと決めたことで、少し頭が回ってくる。

景色が見える。空と海。研究所。

雑然とした甲板。あちこちで反射する光。


それらが視界に入り、線を引いて消えていく。


「撃つのは、あっちだ」


ソルヴェの発案には反するが、今できることをやろう。

数秒、敵を引き付ける。高度差をつけ、捕まらないようにする。


さらに反転し、ソルヴェ方向へまっすぐ飛ぶ。

ゼンを追ってきていた二機は追いつけない。


眼前に、互いに弧を描く三機が見える。ソルヴェを追う一機と、それを追うソルヴェ機。そして、彼を狙うもう一機。


距離300。

三者がもつれ合う光景が、一瞬スローに見える。


ソルヴェが追う一機に狙いを定め、その進路に弾を置くように、撃った。


相棒ロスルからの静止は、今度は発されなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ