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七つの夜  作者: 小里 千耶
第一夜 ランツォーネ
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二 風の止まぬ街

 白色の高い壁を抜けると、そこは青空の広がる城下町だった。熟れた果物や華やかな衣服を売る屋台が所狭しと並ぶ大通りからはひっきりなしに客引きや値段交渉の声が聞こえてきて、とても賑やかだ。幾重にも重なる茶や黄土の家々の奥、正面に構えるのは白銀の城である。右手奥には同じく白く輝く神殿が鎮座してた。そして何と言っても特徴的なのは、街の各所に聳える数えきれない風車である。茶のレンガでできた高い塔の先端で、白い帆を張った四枚羽根が景気よく回っている。これまでにヒイロが見てきた風車と違うのは、その羽根の所々に色とりどりの光が瞬いていることだった。

「なあ、モモ、あれなんだ? 普通の風車となんか違う。光ってないか?」

「ああ、あれ。懐かしいなあ、あれは魔石風車だぞ」

 この風景を見ると、ランツォーネに来たって気持ちになるな。

 そう言ってモモは眩しそうに右手をかざしながら、一番近いそれを仰ぎ見た。日はまだ高い。

「魔石風車?」

「ああ、帆に小さな石がたくさんついているの見えるだろ。あれ、ぜんぶレムなんだぜ。魔石(レム)を羽根部分に使っているから、魔石風車。ランツォーネの名物なんだ」

「へえ、綺麗だな」

 視線の先で、風車がくるくると回る。それに合わせ、小さな瞬きがきらきらと輝く様は、確かに名物と言っても差し支えない美しさだった。あれがすべて、あの高価なレムなのか、と感嘆の息を漏らす。

「そういえば、風の止まぬ街ってルナが言っていたよな。それとも関係があるのか?」

「そっか、おまえは知らなかったよな」

 ヒイロの少し先を飛んでいたモモが、通行人たちの数十センチ上をふよふよと漂いながら近づいて、ヒイロの頭の上に着地した。そのままごろりと腹這いになる。旅をする中で、彼女のヒイロに対する遠慮というものは急速に形をなくしていた。不自然なほどに軽い頭の上の重しにすでに慣れきってしまっているヒイロは、特に気にすることなく話の続きを促した。

「風の止まぬ街――もとい風の止まぬ国というのはランツォーネの異名だ。ランツォーネという国は、ずっと風が吹いているんだ。一年中、一日も止まずに。でも、ここでいう風っていうのは普通の風のことじゃない」

「……どういうことだ?」

 意味がわからず首を捻る。

「ランツォーネの止まない風。それはつまるところ、魔力の風、魔風(まふう)のことだ。止まることのない大きな魔力の渦が、ランツォーネを覆っている。その流れを人々は風と呼ぶんだ」

 魔力の圧力みたいなの、おまえも感じたことあるだろ?

 モモの問いに頷く。

 確かに、これまでの旅路でそのようなものを感じたことがある。それは、森の中で見かけた魔力溜まりであったり、荒地で出会った強大な魔物であったり。そういった強い魔力を秘めるものには、こちらが気圧されるような独特のオーラがあった。それが風として受け入れられ、延々と流れているのが、ここランツォーネであるらしい。

 ヒイロはふと、歩みを緩めて目を閉じてみた。穏やかに流れる魔力の、涼やかな感触が微かに肌に残る気がした。

「なるほどなあ」

「ふふん、わかったか?」

 なぜか得意げに胸を張ったモモは続ける。

「ランツォーネは魔風(かぜ)とともに回っているって、そういう例え話もあるんだぞ。この街の魔石風車もレムが魔風に反応して回ってるからな。人々はその動力を使って生きている。だから、この風車たちは、ランツォーネの象徴であると同時に、生活の基盤でもあるってわけだ」

 ここでモモの講義はひと段落したのか、彼女はふうと軽く息をついた。百年に一度目覚めて御子とこの世界を旅しているらしい少女は、幼い見かけによらず博識であった。

「でも、魔風ってランツォーネだけのものってわけじゃないんだよな? ここにだけ魔石風車があるのってどうしてなんだ?」

「他の国にも風車がないわけじゃないぞ。魔風は魔力の流れ、どこにでもあるものだ。濃いところから薄いところにゆっくり流れて、均一になるように常に動いている。だけど、ランツォーネはちょっと特殊なんだ。人が感じ取れるくらいの強さで、一度も絶えることなく、国全体という広い範囲で魔風が吹いているのは、この国だけ。だから魔石風車も外ではほとんど見かけない」

「ランツォーネだけで強い魔風がずっと吹いているってことだよな。それはどうして?」

 ヒイロの質問に、モモは困ったようにうーんと小さく唸った。

「……わからない。ずっと昔、それこそ何百年も前は、ランツォーネも他と変わらなかったと思うんだけどな。おれの記憶が正しければ、こんなにランツォーネの魔風が有名になったのは、ここ四、五百年前の話だ。それに……」

「それに?」

 思い返すようにゆっくりと話していたモモはそこで言い淀んだ。

「昔に比べて、街の中の風が強くなっている、と思う」

 ちらり、とモモが横に目をやる。その視線の先で、簡素なシャツを着た小さな子どもたちが「風だー!」と騒ぎながら駆けていった。

「普通、日常的に流れている魔風は、レムを持っている人がやっと感じ取れるくらいの些細なものだ。ランツォーネだって、強い風が吹いているとは言っても、基本的にはそういう風が大半だった。だけど今は違う。壁の中に入って気づいたぞ。レムを持っていない人が特別意識しないでも感じられる、強い魔風が吹いている。それほど大きな魔力が、常にこの国の中で動いてるってことだ。でも、そんなのおかしいぞ」

 声を顰めて耳元で囁かれた。先ほどまでヒイロの頭上にいたモモは、いつの間にかふわふわ飛んで彼の顔の真横で漂っていた。

「そんなに大規模に魔力が動くなんて、平時ではありえないことだ。何か原動力になり得る、巨大なエネルギー源を使っているとしか考えられない」

「つまり……?」

「ランツォーネは、コアをそのために利用している可能性がある」

 そう言って、モモは頬を膨らませた。一見可愛らしい光景に見えるが、騙されてはいけない。これは十二分にキレている。

「……コアじゃない、他の何かを使っているって可能性は?」

「それはない。これほど激しい魔風だ、大きな原動力が必要ってさっき言っただろ。レムをいくら使って無理だ。星そのものと繋がっているコア以外に成し得るものなんてない」

 モモは顔を顰め、唇を突き出して再び唸った。

「でも、それでもおかしい。コアを真っ当に扱えるのは神と、認められた御子だけなのに。どうして人間がコアを使えてるんだ?」

「この百年の間に、コアを操る術を手に入れたってことか」

「……そういうことになる。どうやっているのかはわからないけど、でも、正当な方法じゃないと思う。早いとこ、コアを見に行かないと。下手したら取り返しのつかないことになるぞ」

 深刻そうなモモの言葉にヒイロは頷いた。

「昔は街の北の森にコアがあったんだよな。同じ場所にあるって考えていいのか?」

「……いや、どうだろう。この街にあるのは間違いないけど、もしかしたら移動されてるかもしれない。ここまで近づけば大体の場所も感知できると思ったんだけど、なんか上手くいかない」

 御子のナビゲーターを名乗るモモは、コアの存在を感知する能力を持っていた。どんなに離れていてもコアのある方角を把握できるというその機能のおかげで、ヒイロは初めての外の世界にも関わらずほとんど迷うことなくランツォーネに辿り着けたのである。しかし、コアに近づけば近づくほど精密さを増すと前にモモは言っていたけれど、それができないというのはどういうことか。

「とりあえず、前までコアがあったっていう森に行ってみよう。もしなかったら……その時は調べるしかなさそうだな」

「ああ。ちゃんと森にあるといいんだけど」

 多分森にはないだろうな、とヒイロは思った。ヒイロにとって巡礼の旅は初めてだけれど、モモの話を聞く限り既に異常が起こりすぎている。コアに何かがあったと考える方が自然だろう。

「宿を探しつつ情報収集をして、明日にでも森に行こう。まだ一つめの国だ。時間はたっぷりある」

 こくりとおとなしく頷いたモモの頭を撫でていると、遠くから声が聞こえてきた。 

「ヒイロ! モモちゃん! こんなところにいたんだ。待たせちゃったでしょ、ご飯にしよう!」

 通りへと続く細い道を、ルナが駆けてくる。重装備だった先ほどとは違い身軽な服装になっている彼女は、颯爽と広場を横切りヒイロたちのもとへとやってきた。金色のポニーテールが日の光を浴びて輝いている。

「ごめん。中央の通りでって話だったのに、気づかないうちに離れてしまったみたいだ」

「大丈夫だよ。指定しておいてなんだけど、あそこは人も多いし、こっちの方が見つけやすかったから。あっちにおすすめのお店があるんだ。たくさん食べていいよ。奮発しちゃうから!」

 そう告げたルナに、モモがたちまち目を輝かせる。

「おすすめのお店!」

 さっきまでの不機嫌はどこへやら、全く現金なやつだ。ヒイロは小さくため息をついた。

「でも、本当にいいのか? ご馳走してもらうなんて、やっぱり悪いよ」

「いいんだよ。私がしたいんだ。あなたたちとは長い付き合いになる気がするし。何となくだけど」

 はやく行こうぜー!

 一足先に、大通りへと飛んでいったモモがこちらを見て手を振っている。ヒイロとルナはその愛らしい姿を見て、顔を見合わせた。はは、ふふ、と笑い合って、二人は少女のもとへと駆けていった。


 ルナに案内されたのは、老夫婦が営んでいるという小洒落たレストランだった。カウンターで注文した後、広い道にはみ出るように配置されたテーブルにつく。モモと一緒に一足早く運ばれてきたサラダをつついていると、支払いをしていたルナがテーブルへやってきた。

「モモちゃんって、思ったよりもよく食べるのね……」

 先ほどよりも幾分か覇気のない声である。「おう!」と元気よく返事した少女に苦笑しながら、ヒイロはルナに囁いた。

「悪い。久しぶりのちゃんとしたご飯だからかな、あいつ言っても聞かなくて」

 モモは、小さな身体の割によく食べる。あの身体のどこに詰め込まれているのかと不思議に思うくらいに、たらふく食べるのが常だった。いつもカツカツの財布を抱えるヒイロと、もっと食べさせろと要求するモモ、何度喧嘩になったことか。ヒイロは遠い目になった。

「あとで俺たちの分は払うよ。こんなに払ってもらうのは流石に悪い」

「いいんだよ。私が誘ったんだもん。ここまで食べるのは、ちょっと予想外だったけど」

 引く気のないルナの言葉に、ありがとう、ご馳走になる、と素直に頭を下げた。実を言うと、財布が数日前からかなり心許なかったもので。

 しばらく、食事に夢中なモモを眺めながらルナとたわいのない話をしていると、ウェイターが調理場から歩いてきた。目の前に次々とたくさんの皿が置かれる。大ぶりの鶏肉が目を引くソテーに、野菜がたっぷり入ったトマトスープ。その奥では、肉団子と野菜のスープパスタがほかほかと湯気を立てている。運ばれてきたほとんどをひとりで頼んだモモは、料理を見て顔を綻ばせた。

 その様子を見て再び苦笑したヒイロは、自分が注文した鶏肉のフルーツ煮込みを引き寄せながらルナに尋ねる。

「なあ、どこか宿って知らないか? できるだけ安いとありがたいんだけど」

 ちょうど具沢山のサンドウィッチにかぶりついていたルナは、ヒイロを見つめもくもぐと口を動かした。ごくりと飲み込んでから口を開く。

「宿かあ。今、風始祭の時期でどこも埋まってそうだなあ。でも、穴場なら一つ知ってるよ。案内してあげる」

「本当か、ありがとう、恩に着るよ」

「なあ、さっき門番の人も言ってたけど、風始祭って何なんだ? お祭り、だよな?」

 モモが口を挟む。

「うん、そうだよ。風の始まりを祝うお祭りのこと。ランツォーネは『風の止まぬ街』って呼ばれてるんだけど、実は昔、一度だけ風が完全に止まっちゃったことがあるんだって。魔風はこの国の基盤だから、生活は立ち行かなくなるし、病気も流行って大変だったって聞くよ。でも、今からちょうど五十年前に特別な力を持った王様が、風を復活させた。ランツォーネは再び風の止まぬ街になったんだ」

「だから、風始祭――風の始まりってわけか」

「うん。この時期はお祭り目的でやってくる人が多いから、街もかなり賑わってるんだ。あなたたちもそうだと思ったんだけど、違うみたいだね?」

 初めて聞いたと顔を見合わせたヒイロとモモを見て、ルナは不思議そうにそう呟いた。

「実は、俺たちはとあるものを探しにランツォーネに来たんだ。風始祭直前っていうのはたまたまだ」

「でも楽しみだぞ。おれ、お祭りなんて久しく行ってない。もしかして街に飾られている旗もそのためか?」

「ああ、そういえば」

 そういえば確かに、店頭や住居のバルコニーに揃いの旗が吊るされていた覚えがある。金と緑の縁取りをされた純白の布には、大きく国章があしらわれている。

「なるほど、だから大通りがあんなに混んでいたのか」

「そうだね、いつもより人は多くなってるかも。一から宿探しは今の時期結構骨折れちゃうかも」

 私に出会えて運良かったねえ、なんて。

 そう笑うルナにつられて、ヒイロたちも笑顔になる。

「そうだ、ついでになんだけどお金を稼げるところも知らないか? 今ちょっと懐が寂しくて……」

「うーん、お金を稼ぐところ、か……」

 心当たりないなあ。サンドウィッチを皿に置き、右手を顎に当ててルナは考え込んだ。

「なんでもいいんだ。力仕事でも雑用でもなんでもやるし、こう見えて腕には自信あるから、魔物退治もできる」

 半ばダメもとだった。ルヴェールを出てからというもの、銀貨の袋は重さを減らすばかりである。時折立ち寄る村で小遣い稼ぎは何度かしたけれど、このままではあと半月もしないうちに尽きてしまう。危機感を抱いたヒイロは、食事のたびに空腹に耐えかねたモモと言い争いをしているのだった。

「そうだ、街の掲示板で呼びかけてみるのはどう? なんでもやります、一時間いくらって書いた張り紙を作るの。最近魔物が増えてるし、需要あると思うなあ。確かもう既にそうやって稼いでる人がいるって聞いたことあるよ。それにもうすぐ風始祭だから、どこも人手は足りてないだろうし」

 本当だったら魔物退治は私たち騎士の仕事なんだけどね。

 形のいい眉を八の字にして、困ったふうにルナは言った。

「今の騎士団、王様や貴族たちの命令が一番だから、自由に動けなくて。情けない話だけど」

「そうなのか? ランツォーネの王様は優しい方だと聞いたことがあるけど」

 以前モモから聞いていたものとは、少し話が違うようだ。食事に勤しんでいたモモも手を止めて顔をこちらに向けた。

「だいぶ前の話だと思うよ、それ。今のこの国は、ほとんど貴族たちが動かしてるの。王様は貴族たちの言いなり。上の方々は自分たちのことしか考えていないんだ。ちゃんと国民みんなを守れる立派な騎士なんて、もうこの国にはいないよ」

 私も含めて、ね。なりたかった騎士像からは遠くかけ離れちゃった。困っている人を助ける、そんな騎士になりたかったんだけどな。

 悲しげに、諦めたように少女は笑った。

「……それなら、騎士を辞めておまえも張り紙を出せばいいんじゃないか?」

 モモが不思議そうに尋ねる。その視線の先でルナは首を横に振った。

「そうだよね。きっとそうすべきなんだと思う。でも、私は騎士になりたかったんだ。苦労して、やっとなれて、みんな応援してくれてる。そう簡単に諦められないよ」

 それに、私は騎士じゃないと。

 言い聞かせるようなその言葉はいやに落ち着いていた。それでいて急速にしぼんでいったから、最後の方はほぼ呟きに近かった。

「……それは、どういう――?」

 なんとか聞き取れたそれに、思わずヒイロは問いかけた。モモも首を傾げ食い入るようにルナを見つめている。

 ルナは答えなかった。落ちた目線が皿の縁をゆっくりとなぞった。食事を進めていたはずの三人の手は完全に止まっていて、パスタの皿から立ち上る湯気だけが、ゆらゆらと揺れていた。

 少しの沈黙のあと、ぱっと笑顔になったルナが無理矢理に明るくした声を出した。

「ごめん、変な空気にしちゃったよね。気にしないで! というかできたら忘れて! そんなことより早く食べようよ。ぼうっとしてると私が全部食べちゃうよ」

 そう言って、自分も半分以上残ったサンドウィッチを持ち上げる。その様子に急き立てられるように、ヒイロたちも再び手を動かし始めるのだった。


 食事を終えたあと、ルナが案内してくれたのは彼女の知り合いが経営しているという小さな宿だった。

 律儀にも、張り紙用の紙やペン、インクまで用意してくれたルナは、既に家へと帰っている。リーズナブルな宿泊費に違わず簡素なベッドと机が詰められた小さな部屋が、ランツォーネ滞在中のヒイロとモモの根城だった。

 椅子に座って張り紙を作成しているヒイロに、机の端に腰掛けたモモが問いかける。

「なあ、なんでさっき、ルナは騎士を続けるって言ったんだ? あいつは人助けがしたいんだろ? 今の騎士団ではそれができないって話だったじゃないか」

 心の底から理解できないという顔だった。ペンを動かしていたヒイロは、うーんと考える。

「騎士になりたかったって言っていただろ。憧れていたんじゃないか。それこそ簡単には辞められないほどに」

「へえ」そう言ってモモは釈然としない顔をしながら浅く頷いた。いまいち納得はしていないようで、まだ不思議そうに考え込んでいる。彼女が人間の感情の機微に疎いのは、一ヶ月近い旅路の中で何度か感じていることだった。

 ――まあ、今回ばかりはヒイロ自身もあまり納得はしていないけれど。それに、私は騎士じゃないと。昼食の時に聞いた言葉を思い出す。ギリギリ聞こえた声は落ち着きを纏っていたけれど、どこか沈んでいた。騎士でなくても人を助けることはできるだろうと、そう思ってしまったのは事実だったので、ヒイロは濁すように話題を変えた。

「なあ、明日だけど、コアがあったっていう森に行くだろ? コア、あると思うか?」

「いや、ないだろうな」

 モモは即答した。

「状況を見るに、ランツォーネの奴らはコアに手を出している可能性が高い。自分たちの管理しやすい場所に移動させていると考えた方がいいと思うぞ」

「……だよな」

 冷静なモモの言葉に首肯する。

「コアがなくとも、何か手掛かりがあればいいんだけど。コアの場所を突き止めたところできっと簡単に明け渡してくれるわけないだろうし、ある程度の情報収集は必要そうだな。時間はかかってしまうだろうけど、稼ぎながら確実に行こう」

 小遣い稼ぎ、モモも手伝ってくれるよな、と言えば「えー」と不服の声が飛んでくる。

「もうお金がほとんどないからなあ。働かざるもの食うべからず。手伝ってくれないならモモはご飯抜きだな」

「やる! やるぞ! おれ、働くのだぁいすき!」

 大きな声でそう宣言してヒイロが持っていたペンに飛びついたモモに、ヒイロは笑い声を上げた。

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