第8話 訓練と災害の予兆
永野優
本作の主人公。
音無紅寧
永野優の彼女で幼馴染。大人びた性格の持ち主。
黒沢海斗
優の幼馴染で親友。いつも優とふざけあっている。
藤宮雫
海斗の一つ下の彼女。紅寧を尊敬している。
霜月雪乃
転校してきた謎多き少女。
杉山海凛
超能力者保護機構の頭。
「ここが超能力者保護機構の訓練所だ」
杉山が指差した所は、人里離れた所にある一軒家だった。しかも周りを見渡すと人影一つすらなかった。
「ここって普通に一軒家じゃん?」
「普通にみたら一軒家だな」
「この一軒家のどこに訓練所があるって言うの?」
「それはついて来ればわかるよ」
杉山がスーツケースを手に、先導して家に入った。
「まさかここの他に訓練所とかあったりする?
「日本各地にあるよ。街中から、ここみたいに山奥のまでね」
「普通の生活に紛れすぎてない?」
「そうだね、基本的には組織の建物は変哲もない店とかにあるから普段だとまずまず見つからないね。それよりついたよ」
2人は家の奥の壁で止まった。
「もうこのくだりはいいや。この壁に何か仕掛けでもあるんでしょ」
「あるよ、どんな仕掛けか見れば分かるよ」
杉山が壁に手を当てた途端、目の前の壁が音を立てながらスライドし地下に続く階段が現れた。
「さぁ行こうか」
優は驚いた様子を見せて2人は階段を降りた。そこには地下1階から6階まであるエレベーターがあった。杉山は下に向かうボタンを押し扉が開き入った。そして地下6階のボタンを押し向かった。
「ここは訓練以外で何の目的があるの?」
「ここは保護した能力者達が共に暮らす場かな」
「暮らすって能力者達も帰る場所があるんじゃない?」
「全員が全員帰る場所があるとは思わない方がいいよ。能力者によって家族を失ったりしてやむを得なく暮らす人がいたりするからね。だからあんまりみんなの過去を詮索したりしない方がいいよ。まぁけど訓練ついでに宿泊する人もいるけど」
「わかりました」
「さてついたよ」
エレベーターの扉が開くと強化ガラスの向こうで能力者達が訓練している所が見えた。
「結構色んな能力を使う人がいるんだね」
「そうだね、けど組織の総員の40%しかいないんだけどね。それより早速訓練してもらうから更衣室でこの服に着替えてもらう」
杉山は持っていたスーツケースを開け、優に中身を見せた。中には、訓練に特化したシンプルな服が詰まっていた。
「このまま左を向いて奥に更衣室があるからそこが男子更衣室ね。あと、すぐ側に男子トイレがあるから行きたい時に行ってね」
優は更衣室に入り、着替えを済ませて出て来た。
「結構似合ってるじゃん」
少し笑いを堪えながら言った。
「何を笑いながら言う事じゃない。けど少しピチピチな様な気がするけど」
「そんなもんだよ。それじゃあ訓練所に行こうか」
「わかった、それより訓練って何するの?」
話しながら優と杉山は訓練所に向かった。
「能力者は基本的に何かがトリガーになって能力が使えるか、体内にある能力の因子的な物をかんじ取って使う場合が多い。だからそれらを感じ取って能力を使う訓練を今からやる」
優達は訓練所の扉の前にに立ったと同時に扉が開いた。そして優と杉山が入った。
「あ、海凛さんじゃないですか?その隣にいる子は新しい能力者?」
訓練していた1人が声をかけた途端、訓練していた人達が訓練を辞めて杉山達の方に視線が注目した。
「本当だ、海凛さんだ」
「久しぶりに海凛さんを見た」
「みんな久しぶり」
「隣にいる子、新人?」
「そうだよ、今日はこの子の訓練をしに来た」
「永野優です。これからよろしくお願いします」
「優かよろしくな」
「よろしく〜」
「はい、よろしくお願いします」
「その子が噂の新人か俺は豪力康雄だ、よろしく」
いかにも力に自信がある様な赤髪の巨体の男性が話しかけて来た。
「うん、よろしくお願いします」
「そうだ、佐藤は今日ここに来てる?」
「いや、今日は来てないな」
「わかった。ちょうどいいや豪力、永野の訓練相手を頼んでいい?」
「承知した」
「じゃあ後は頼んだ」
杉山は訓練所を後にした。
「永野くんの能力に関してすでに海凛さんから聞いている。だから訓練メニューをすでに立てて来た。まず最初に腕立てと腹筋とスクワットをそれぞれ300回から始めろ」
「300も?」
優は思っている訓練とその回数に驚いた。
「ごちゃごちゃ言わずにやれ」
「はい!」
優は言われた順序で腕立てから始めた。
「うわ〜、豪力さんのきつい訓練メニューが始まった」
「あいつ、終わったな」
他で訓練していた人達が腕立てをしている優を見て哀れみの顔をした。
「さっきなんで杉山さんは佐藤さんの事を呼んでいたの?佐藤さんって運転手じゃなかったっけ?」
優からの質問を聞いて豪力は笑った。
「佐藤が運転手だって?違うよあの人は杉山さんの次に偉い人だよ」
豪力は笑いながら言った。その時扉が開いた。
「あれ〜豪力じゃん。君がここにいるって言う事はこの子、噂の新人の子?」
細マッチョの男性が話しかけて来た。
「そうだ。相変わらず噂を聞きつけるの早いな」
「そう言った事聞きつかないとこの仕事出来ないすよ」
「それもそうだな」
「それにしても豪力の訓練メニューとかやらされるとか大変だね。君、名前は?」
「永野優です」
「そうか、優って言うのか。俺は雷雪瞬だ。君に聞きたい事があるけど訓練中だからまた後でゆっくりと話そうな」
「はい」
雷雪は優に挨拶した後、次の瞬間、その場から姿を消した。
「豪力さん、あの人は何者ですか?」
「あいつはこの組織でもトップの方で強い人だよ」
「そうなんですか?それよりこれってやる必要あります?」
「必要だ。能力者にとって自分の体力は必要な存在になる。例えば漫画とかで魔法を使う為に魔力が必要だろ?それと似た様な感じだ。能力者が能力を使って行くと疲れていき、使い過ぎるとその場で倒れる。だから訓練メニューにした」
「そうなんですね」
「それより腕立て何回だ?」
「今30回です」
しんどそうに言った。
「今日中に終わらないと家には返せないからな」
「本当ですか?」
「本当だ、何か問題でも?」
豪力は優に物凄い圧をかけている。
「いえ、何も問題はありません」
「じゃあ、最後までやりきれるよな?」
「はい!」
優は張り切って腕立てと腹筋、スクワットを3時間で全てやり切った。
「全てやり終わりました」
優はすべてをやり終えると、その場に仰向けになり、苦悶の表情で言った。
「よく頑張った。やればできるじゃないか」
仰向けになっている優の肩を、豪力は笑いながらポンと叩き、言った。
「豪力さん、痛い痛い」
「疲労感がなくなったらストレッチして着替えたら3階に来い」
「わかりました」
豪力は訓練所を後にして先に地下3階に行った。その後、訓練を終えた優に訓練していた人達が集まった。
「永野くん、大丈夫?」
「お前、根性あるな」
「はい、ありがとうございます」
褒められて少し喜びながらも優は起き上がりストレッチを始めた。それと同時時刻に杉山の部屋に佐藤が入って来た。
「佐藤、やっと来たか」
「急に呼び出して何の用?」
「ここからは内密にして欲しい。予言者ノルンからまた、あの災害に酷似した事態が起きると予言が出た」
杉山は辛そうな顔で佐藤に言った。
「あの時みたいにか!?」
佐藤は焦った様子で杉山に言った。
『それは15年前のこと。突如、街に未確認生物を出現した。それは街を一瞬にして焼き尽くした。自衛隊がそれを排除しようと試みたが、全く歯が立たなかった。だが、そこにいた何者かがそれを討伐した。しかし、その人物の存在どころか、この一連の出来事すら歴史から抹消された。その後、能力を発現させる者が現れたが、それらは政府によって隠蔽されてきた。だが、なぜそこに未確認生物が出現したかわかっていない。政府はその未確認生物の名前をカエデスと呼んだ』
「そうみたい」
「いつそれは起きるんだ!」
「それはいつになるかわからない。だからあらかじめ備えておけ」
「わかった。そういえば永野くんの調子はどう?」
「今、ちょうど豪力の初訓練が終わったぐらいだね。あとは、いつ自身の能力を扱えるぐらいだね」
「それだけ聞ければいい、じゃあ何かあったら報告するね」
佐藤は杉山に背を向けて手を振りながら部屋を出て行った。
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