軍師徳川家康
翌日、太郎と家康は松月堂の本店へ向かった。神田にある古びた店舗は、暖簾に「創業150年」と書かれ、歴史の重みを感じさせる。店内では、松本社長が渋い顔で帳簿を睨んでいた。客足は減り、若い客はインスタ映えするスイーツ店に流れる一方。太郎は緊張で汗だくだったが、家康は泰然と松本に話しかけた。
「松本殿。某は徳川…いや、家康と申す。貴殿の和菓子の魂、しかと拝見した。見事なものじゃ」
「は?何だ、急に。営業か?電王社の人間なら帰れ!」
松本は一蹴するが、家康は動じない。カウンターに置かれた羊羹を手に取り、匂いを嗅ぎ、目を閉じた。「ふむ。この甘さ、戦国の世で言えば、兵糧の如し。民の心を癒し、力を与える。されど、貴殿の戦は、民に届いておらぬ」
「何!?戦だと?ふざけるな!」
「ふざけておらぬ。貴殿の羊羹は、戦国の旗印。されど、旗が高すぎて民に見えぬ。某が、その旗を民の目に見える高さに下ろしてみせよう」
家康の言葉に、松本は一瞬たじろぐ。太郎は「何!?羊羹が旗!?」と混乱したが、家康は続けた。「この『SNS』なる道具を使い、松月堂の魂を若者に伝えよ。地元の民が愛した150年の物語を、短く、熱く語るのじゃ」
太郎はピンときた。「それ、めっちゃいい!社長、うちで地元愛をテーマにしたキャンペーンやりましょう!SNSで、松月堂の和菓子を作る職人さんの動画をバズらせて、若い子に『伝統ってカッコいい!』って思わせるんです!」
松本は渋々ながら興味を示し、「…で、具体的にはどうするんだ?」と尋ねた。家康はニヤリと笑い、太郎に耳打ち。「戦国の調略を教えよ。まずは、敵…いや、客の心を掴む『人情』を前面に出せ」